企業の成長に繋がる目標管理制度(MBO)|注意点や具体的な導入方法も

成果主義が一般的になっている昨今、注目を集めているのが目標管理制度です。目標管理制度では、社員が自ら目標を決め、面談や成果などを通じて人事評価を行います。ただし、制度を正しく運用するためには、いくつか注意点も存在します。

当記事では、目標管理制度を導入するメリットや流れ、注意点を詳しく解説します。人材育成や企業の成長を促したいとお考えの方は、当記事をぜひ参考にしてください。

目標管理とは?

目標管理制度とは、MBO(Management by Objectives)とも呼ばれ、経営学者として著名なドラッカーが提唱した人事管理制度のことです。目標管理制度では、社員自らが個人の目標設定・進捗管理を行い、達成度合いによって適切な評価が受けられる仕組みになっています。

「会社にどのような貢献ができるのか」を社員が主体的に考えて行動できるようになるため、活気ある組織作りが可能になるマネジメント方法と言えます。

目標管理制度が注目される理由

目標管理制度が多くの企業で採用される理由には、以下のような点が挙げられます。

・成果主義の導入
1990年代のバブル崩壊以降、主流だった年功序列制度を見直し、業績の立て直しをはかる目的で、成果主義が導入されるようになりました。目標管理制度は「成果に対して評価を行う」手法であるため、成果主義との相性の良さから広く注目を集めています。

・人材育成
主体的に考え行動できる人材が育成できるという点も、目標管理制度が注目される理由の1つです。企業の経営理念や事業戦略を軸に、社員本人が個人目標を設定・実行することは、積極性のある人材の育成にもつながります。

・持続的な組織の成長
目標管理制度は、組織の持続的な成長につながる方法としても注目されています。適切な目標管理によって透明性のある人事評価がされると、社員のモチベーションやパフォーマンスの向上が期待できます。社員の生産性が向上すれば、組織の長期的な成長を促すことが可能です。

KPIやOKRとの違いは?

目標管理のフレームワークには、目標管理制度(MBO)と混同しやすい概念に、KPIやOKRがあります。3つの違いは以下の通りです。

MBO(目標管理制度)
企業目標を軸に社員個人の目標を設定する方法です。人事考課の1つとして、昇進・昇給はもちろん、ボーナス査定に利用されることもあります。

上司の面談やサポートを受けながら社員が自ら目標設定をする点がMBOの特徴の1つです。目標の達成度合いによって評価されるため、透明性と納得感のある目標管理ができます。
KPI(重要業績評価指標)
KPIとは、企業の最終目標(KGI)を達成するための過程を、数値で測定する考え方です。最終目標達成に向けて必要な過程を洗い出し、社員が達成すべき目標を具体的な数値で定めるため、どのような行動をするべきかが分かりやすくなります。
OKR(目標と成果指標)
企業ビジョンや経営方針などをもとに、部署単位で定性的目標を定めます。設定した定性的目標を達成するために、さらに定量的目標を複数立てるのがOKRです。

定性的目標を、数値測定可能な具体的目標に落とし込むため、達成すべき目標が明確化されるという特徴があります。

目標管理の手法について、違いを正しく理解し組織の活性化につなげましょう。

目標管理制度を導入するメリット

目標管理制度は、従業員やマネジメント層だけでなく、会社自体もメリットを感じられる制度です。目標管理制度が会社経営にもたらす恩恵を理解することで、制度をより効果的に運用できるようになります。

ここでは、4つのメリットについて事例を交えながら解説します。

社員のモチベーションが上がる

目標管理制度は、社員のモチベーション向上に効果的であるとして、論文でも効果が実証されている方法です。目標にやりがいや達成感を得られるような要素を含めることで、社員自身の自己効力感、すなわち「自分ならできる」という気持ちを刺激できます。

また、社員が目標に向かって自分で計画を立て実行することは、自律性を高め、仕事に対する熱意を向上させるのに有効です。目標管理制度によって育まれる自主性や有能感が、内発的モチベーションを生み出します。

モチベーションが高まることで、社員は自分の仕事により深く関わり、成果を出せるようになるでしょう。

※出典:日本労働研究雑誌「目標管理制度の運用と従業員の内発的モチベーションの関係」

人材育成につながる

社員の成長を促す手段としても、目標管理制度は効果的です。具体的なゴールが明確になることで、社員は必要な行動を逆算し、段階に応じた業務に対して意欲的に取り組めるようになります。そのため、新たなスキルや知識を得やすくなり、社員の自己成長を促すことができます。

株式会社サイバーエージェントで行われている「プロジェクトレポート」という取り組みは、人材育成の成功事例の1つです。半期ごとにチーム目標と個人の役割分担を決めて成果を追求する方法で、あえて社員の実力よりも1段階上の目標設定をします。定められた目標に主体的に挑戦することは、社員の能力開花につながり、成長の大きな原動力となります。

※出典:株式会社サイバーエージェント「人材育成」

評価をスムーズに行える

目標管理制度の導入により、評価業務を効率よく行える点もメリットです。達成すべき目標が明確になると、社員個人個人の進捗状況やスキルが分かりやすくなります。目標をもとにした明確な基準もあるため、主観的な判断をすることなく、公平性のある評価をスムーズに行えるようになります。

SCSK株式会社は、目標管理制度を人事評価に導入することで、評価の効率化を実現している会社の1つです。期初めに行う面談で、上司とともに目標や役割、行動を確認し、目標管理シートを作成します。作成した内容をそのまま人事評価システムにインポートできる仕組みを構築することで、評価作業の工数削減に成功しています。

※出典:SCSK株式会社「人事方針・評価制度」

組織全体の目標を共有しやすくなる

目標管理制度は、組織目標を社員全体で共有しやすくなる制度です。社員が個人目標を設定するときには、組織全体の目標と連動させます。社員が個人目標を立てる前に、まずは組織目標を十分理解する必要があるため、企業が目指す到達点を全員で把握できるようになります。

組織目標は、社員が一致団結し、持続的な企業成長を目指す際に大切な指標です。目標管理制度によって組織目標が社員に共有されることは、企業が大きな成果を残すために必須と言えるでしょう。

目標管理制度を導入する流れ

目標管理制度を効果的に運用するためには、正しい導入手順を把握することが大切です。目標管理制度の導入には、以下の4つのステップがあります。

・目標を設定する
・実際の行動計画を立てる
・定期的に進捗確認を行う
・評価・フィードバックを行う

それぞれについて、具体的に解説します。

目標を設定する

目標管理制度でもっとも重要な手順が、目標設定です。以下に押さえるべき4つのポイントを紹介します。

全体目標とマッチした個人目標にする
個人目標は企業や部署が定める全体目標に沿った内容にしなければなりません。個人目標を全体目標の方向性と揃えることで、組織に一体感が生まれ、業績アップにつながるような成果が出やすくなります。
社員の主体性を大切にする
目標は社員が自ら決めることが重要です。会社や上司がすべて決めてしまうと、目標ではなくノルマに感じられ、モチベーションを下げる原因になります。
具体的数値を盛り込む
「〇月までに△件の新規顧客を獲得する」のように、期日や具体的な数値を目標にするのがポイントです。取るべき行動が明確になるだけでなく、達成度が分かりやすくなるため、納得感のある評価にもつなげられます。
少し頑張れば達成可能な目標にする
目標のレベルには注意が必要です。簡単すぎては社員の成長になりません。反対に、難しすぎる目標は、社員の意欲やパフォーマンスを低下させる恐れがあります。無理しない程度に努力を要するレベルの目標にしましょう。

上記のポイントを踏まえて精度の高い目標を決めることで、目標管理制度の効果をより実感できるようになります。

※出典:J-Net21「目標管理制度における目標設定の方法について教えてください。」

実際の行動計画を立てる

設定した目標を達成するためにはどのようなアクションが必要か、具体的な行動計画を作ります。社員が行うべき行動を明らかにしておけば、時間効率を高められ、進捗管理もしやすくなります。

行動計画は、以下の点に配慮しながら策定することが大切です。

・数値を含んだ具体的なプランになっているか
「1日50件架電する」「新アイデアを1か月に5件提案する」のように、数値を具体的にして、行動に移しやすい内容にします。

・行動を細分化し、リストアップできているか
目標達成のためにするべき行動を、さらに分解して複数のタスクにします。今すぐにやるべき行動がクリアになり、心理的負担を軽減することも可能です。

・優先順位は適切か
タスクの優先順位は、所要時間や必要なリソースによって変わるため、よく検討することが大切です。

・無理のないスケジュールを決められているか
メリハリなく行動していては期待するような成果は得られません。適切な期限を決めることで、業務効率が上がります。

行動計画は、社員のモチベーションの維持や現状の把握にも役立つため、吟味して立案しましょう。

定期的に進捗確認を行う

どの程度目標達成に近づいているか、定期的に進捗を確認します。目標管理は半年から1年と比較的長い期間の目標であるため、途中経過を確認することで、必要に応じて軌道修正ができるようになります。

進捗管理は短いスパンで行うほうが効果的です。進捗管理が月1回程度では、結果を確認するだけになる恐れがあります。可能であれば週に1回実施できると、すばやく計画修正ができ業務を効率よく進められます。ただし、業種やスケジュールにもよるため、無理のない範囲で振り返りを行いましょう。

進捗確認をする際は、達成できている部分に目を向けて、まずは成果を認めることが大切です。社員の自信を育みモチベーションを上げつつ、改善点へのアプローチ策を模索することが求められます。

評価・フィードバックを行う

社員が出した成果に対して、上司が評価やフィードバックを行います。目標管理制度における最終的な評価やフィードバックを行うタイミングは、主に人事面談です。社員は自己評価を上司に伝え、上司は設定した目標の達成状況を鑑みて客観的な評価をします。

上司からのポジティブなフィードバックは、これまでの努力を認められたように感じられ、モチベーションの向上やエンゲージメントを高める効果もあります。また目標未達成の部分があった場合は、改善点を明確にして適切にフォローすることが肝心です。

評価やフィードバックの際に、上司と部下が十分なコミュニケーションを取ることは、信頼関係が構築されるだけでなく、円滑な業務遂行にもつながります。

目標管理制度を導入するときの注意点

目標管理制度にはさまざまなメリットがあり、会社を成長させるために有効な方法です。しかし、効果を十分発揮するためには、注意点を押さえて取り組む必要があります。以下より、5つの注意点について解説します。

目標設定を低くしすぎない

目標設定する際に気をつけたい点が、目標の難易度です。目標が簡単すぎると、社員のスキルアップにつながらず、企業の業績も伸び悩む結果になります。

特に、目標管理制度が人事評価の指標としての側面が強い場合は、注意が必要です。社員が無難な目標ばかり立てて、努力や挑戦する姿が見られなくなってしまった、という失敗事例が増える原因になります。

設定する目標は、「頑張れば達成できる」レベルのものにすることがポイントです。また、人事評価の指標にする際は、達成した目標数や達成度合いのみで判断せず、目標内容や達成までのプロセスも重視しましょう。

社員一人ひとりが意欲的に目標に取り組めるように、設定する目標は上司とよく相談し設定することが大切です。

プロセスを軽視しない

プロセスを軽視すると、短期的な結果のみに固執する恐れがあるため、要注意です。目標管理制度は、成果主義の広まりとともに浸透した手法ですが、評価を得ようとするあまり、価値の低い成果しか出さない社員も出てきます。

実際に、結果を残せさえすれば良いという考えから、アンケート調査をする際に社員が不正を働いた事例もあります。「アンケート調査の実施」という成果は出たものの、アンケート調査の内容には疑問が残り、価値ある成果とは言えない結果になりました。

成果主義の弱点を補うために、プロセス評価と組み合わせるのがおすすめです。プロセス評価では、結果に至るまでの方法や行動について評価します。うまく掛けあわせることで、相乗効果が期待できます。

職種に合った目標を設定する

所属する部署や個人に合った目標設定になっているか注意することも大切です。営業職や企画職などは具体的な数値目標を掲げやすい職種です。一方で、サポートをメインに行うバックオフィス系の部署では、適切な目標設定が難しい場合も多くあります。それぞれの職種に最適な目標設定をするためには、目指すべき目的を明確にして目標を掘り下げ、できるだけ定量化した目標設定をする必要があります。

例えば、総務部の目的の1つは、「職場環境の整備」です。社員がより働きやすい環境を作るにはどのような目標を立てるべきか、細分化して考えることで目標設定の精度を高められます。「社内広報に残業削減策を掲載し、半年後までに残業時間を10時間減らす」といった、具体的数値を含んだ目標を決められるとよいでしょう。

SMARTの法則やFASTの法則といったフレームワークを活用すると、効果の高い目標を定めやすくなります。

面談を適切に行う

目標設定や評価の際の面談は、ポイントを押さえた適切な方法で行いましょう。上司からトップダウン形式で目標を管理する方法では、社員の自主性やチャレンジングな姿勢が育ちません。面談実施の際は、以下の要点を意識することが求められています。

・上司はサポートに徹する
・社員の意見や考えをよく聞く
・答えを教えるのではなく、アドバイスやヒントにとどめる
・客観的な評価をする

面談は、社員に自己成長を促す絶好の機会です。上司が一方的に判断を下すのではなく、コミュニケーションを重視した面談になるよう工夫しましょう。

目標管理制度への理解を深める

制度自体の理解が浅いままだと、効果的な運用はできません。まずは、目標管理制度について正しく理解することが大切です。目標設定の重要性や目標管理の方法、管理職の心構えなど、さまざまな切り口から目標管理制度について知って、理解を深めましょう。

社内に効率よく制度を浸透させるには、研修の実施も有効です。目標管理制度についての知識やノウハウを正しく理解できるため、より質の高い制度運営が行えるようになります。

『人材育成に活用するための 人事考課研修』について詳しくはこちら

まとめ

社員自らが目標を設定し、達成具合によって評価が行われる目標管理制度は、うまく活用すると人材育成や社員のモチベーションアップを促せます。ただし、達成具合だけに着目してしまうと意味のない成果を求める社員が現れることもあるため、プロセス評価も組み合わせるなど工夫が必要です。

社員の成長のため、目標は高すぎず低すぎないものを設定しましょう。適切な目標設定や評価面談が行えるよう、目標管理制度についての研修で理解を深めるのも一案です。

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