成功する研修スケジュールの立て方6ステップ!具体例も合わせて紹介

研修スケジュール

研修スケジュールは、効果的な人材育成や業務改善を実現するための重要な要素です。特に、年間スケジュールやタイムスケジュールを適切に立てることで、研修の効率的な準備と運営が可能です。研修の目的や予算感、カリキュラムを考えながら、効果的な研修を設計しましょう。

当記事では、研修スケジュールの種類や立て方の基本、具体的な記載内容、効果的な研修を実現するための工夫について詳しく解説します。研修に関わる方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

研修スケジュールの種類

年間スケジュール

研修スケジュールには、年間の研修スケジュールと個別の研修スケジュール(タイムスケジュール)の2種類があります。

年間の研修スケジュールは、1年を通してどのような研修を実施するのか、という計画をまとめたものです。一方、個別の研修スケジュールは、研修ごとの活動や進行予定を時系列に沿って示したもので、1日の流れが一目で把握できます。

準備を抜け漏れなく行い、目的を持って研修を実施するために、研修スケジュールは必要不可欠です。

年間スケジュールを立てると、必要な準備が明確になり、研修準備・運営業務の効率化が期待できます。例えば、年間計画を作成した段階で同じ会場と年間契約を結んでおくと、会場探しの手間が省けます。年間契約では、費用や設備などの面で優遇を受けられるケースも多いので、コスト削減につながるのも利点です。

事前に研修の年間計画を周知しておくと、計画的に時間を確保でき、研修対象者の通常業務にかかる負担を軽減できます。一方で、場当たり的に研修を実施すると、研修自体の質を確保できないリスクがあります。年間・個別スケジュールをもとに目的を明確にし、適切なカリキュラムを過不足なく提供することで、受講者のモチベーションアップが期待できる点もメリットです。

研修スケジュールの立て方6ステップ

研修スケジュールを立てる為のステップ

研修スケジュールの作り方で重要なポイントとしては、次の6ステップが挙げられます。各ステップの重要性や概要を解説するため、研修スケジュールを決定する際の参考にしてください。

研修の目的(ゴール)を明確にする

研修スケジュールを立てる際には、最初に研修を実施する目的や、研修を通して受講者が目指すべき姿を明確にする必要があります。明確な目的を指針にすると、研修担当者が予算・カリキュラム・実施方法などの項目をスムーズに検討できます。

また、研修目的を共有することで、受講者自身に、さまざまなビジネスシーンで目的意識を持つ姿勢が身につきやすい点もメリットです。

実際の研修時には、目的を共有した上で、受講者自身に個別の目標を設定してもらうのもおすすめです。「いつまでに、どのように成長したいか」などを明確にすることで、研修後の行動変容を促す効果が期待できる他、研修の効果測定にも役立ちます。

予算と場所を確保する

予算や場所は、研修実施の大枠となる重要な要素です。特に、予算は研修内容・講師選定などに大きく影響するため、研修目的に基づいて早い段階で確定させる必要があります。研修実施においては、以下のような予算が発生します。

・外部講師に依頼する際の報酬や教材費
・社外で実施する場合の会場レンタル費
・受講者を全国や遠方から集める場合の交通費・宿泊費など

コスト要素を洗い出した上で、費用相場や過去の研修予算も参照しながら予算規模を定め、予算内で最適な研修計画を立てるのが重要です。人材開発・キャリアアップに関する助成金制度が利用できる場合もあるので、早めに確認しておきましょう。

また、利便性が高く設備が整った研修会場は、すぐに予約が埋まってしまいます。研修参加者数や必要な設備などを洗い出し、早い段階で会場候補を選定・確保しておくと安心です。

カリキュラムを決める

研修の目的・予算・場所といった枠組みが決まったら、カリキュラムの検討に移ります。カリキュラムは、研修の全体像を具現化するための設計図のような存在です。

カリキュラムは研修担当者だけで決めるのではなく、現場職員の意見も踏まえて、研修目的を達成するために必要な内容を検討します。加えて、経営理念や経営層の考えとカリキュラム内容との間にズレがないかも意識しましょう。

ただし、カリキュラム内容を詰め込みすぎると、研修時間が超過してしまう恐れがあります。過去の研修を参考に、適切なカリキュラム数や内容ごとの時間配分を検討するのが大切です。

実施方法・講師を決める

研修カリキュラムの内容を効果的に実施するために、予算の範囲内で、具体的な実施方法と適切な講師を決定します。実施方法について決めなければならない内容は、以下の通りです。

・外部へ委託するのか自社の内部講師で行うのか
・個別実施か集団研修か
・オンラインか対面か

研修内容や参加者の負担などを踏まえ、適切な実施形態・方法を検討しましょう。研修成果を業務で実践してもらうために、実施方法と合わせて、研修効果の測定方法や研修終了後のフォロー方法も決めておくのがおすすめです。

また、講師を選定する際は、以下の点に注意が必要です。

・研修テーマの最新動向に詳しいか
・研修テーマに関する経験が豊富で、具体例を交えて説明してくれるか
・コミュニケーション能力が高く、説明が分かりやすいか
・研修目的や受講者のレベルに合わせて柔軟に対応してくれるか

上記を意識し、研修ごとに適切な講師を選定することで、受講者の理解度・満足度の向上につながる効果が期待できます。

担当者や講師、研修受講者のスケジュールを調整する

研修を監督する担当者や講師、研修受講者など、研修に関わるすべての人のスケジュールも早めに調整する必要があります。

特に外部講師に依頼する場合は、希望講師の日程が確保できないケースもあるので、半年以上前から余裕を持って動き出すのが理想です。研修実施の候補日程を複数提示すると、日程調整がよりスムーズに進みます。

また、研修は企業の人材を育成する上で重要な機会であるものの、すべての部署や社員が協力的な姿勢とは限りません。なるべく積極的に参加してもらうために、受講者の都合も考慮しながら、早い段階で研修実施日を調整しましょう。スケジュールの変更があった場合は、迅速に共有するなど、円滑なコミュニケーションを意識して協力を求めるのが重要です。

スケジュール表に落とし込む

上記ステップについて検討・調整を行ったら、内容をスケジュール表に落とし込み、年間計画や研修ごとの流れを可視化します。Excel・Googleスプレッドシートなどのテンプレートを活用すると、スケジュール表もタイムスケジュール表もスムーズに作成できます。

スケジュール表の作り方で意識したいポイントは、見やすさです。1ページに収まるようにレイアウトを調整したり、色分けを活用したりして、視覚的な工夫を取り入れましょう。

スケジュール表を作成したら、改めて、研修日程に不備がないかを確認します。個別スケジュールについては、1日に内容を詰め込みすぎていないか、休憩のタイミングや頻度は適切かといったポイントも再確認しましょう。

研修スケジュールに記載しておきたい項目

スケジュールに記載するトピックス

研修スケジュールに記載しておきたい項目は、以下の通りです。

・実施日
・研修のテーマ
・研修の目的・ゴール
・研修事務局担当者
・タイムスケジュール
・準備するもの

下表を参考に、研修に応じて、必要な項目を選定しましょう。研修に関連する注意点や伝達事項がある場合は、備考欄にまとめて記載するのも1つの方法です。

実施日研修を実施する日付と時間を研修スケジュールの見やすい位置に記載します。特に、日付がないと次年度以降の研修計画の参考にできないため、注意が必要です。
研修のテーマスケジュールに研修テーマを記載すると、受講者が研修内容をイメージしやすくなります。テーマは受講者が一目で把握できるよう、なるべく分かりやすく端的な言葉で記載しましょう。
研修の目的・ゴールスケジュール資料を通じて研修目的・ゴールを共有することで、受講者に研修の重要性を認識してもらい、受講意欲を高める効果が期待できます。
研修事務局担当者研修スケジュールには、該当研修の事務局担当者の氏名や連絡先などの情報も必要です。受講者が研修について質問する際に役立ちます。また、担当者氏名の記載があると、次年度以降の運営時に、誰にアドバイスを求めるべきかが一目で分かる点もメリットです。
タイムスケジュール研修スケジュールには、タイムスケジュールを具体的に記載します。研修タイムスケジュールは、部分的に記載するのではなく、1日全体の流れが一目で把握できる形で作成するのが大切です。
準備するもの準備が必要なものがある場合は、研修スケジュールの見やすい位置に、具体的に記載します。受講者に認識してもらえるように、箇条書き・表・文字装飾などを活用して、分かりやすく記載しましょう。

研修スケジュールの具体例

研修スケジュールの具体例

研修スケジュール例として、以下の新入社員研修のスケジュールを紹介します。

【新入社員研修のスケジュール例】

・実施日時:◯年◯月◯日 10:00~17:00
・実施場所:◯◯会議室
・研修の目的
(1)仕事に対するプロ意識を高める
(2)仕事を進める際の基本となる考え方・必要なマナーを習得する
・研修担当者:◯◯ ◯◯

【タイムスケジュール】

時間研修内容進め方
9:30-9:50オリエンテーション研修目的、進め方を共有する
9:50-11:20新入社員の心構えディスカッションによって、学生と社会人の違いや職場の最低限のルールについて理解する。また、挨拶や返事についての実習を行う
11:20-12:30仕事の進め方指示の受け方から完了報告までの流れを実習と講義によって説明する
12:30-13:30昼休憩
13:30-14:00社会人が意識したい第一印象第一印象の重要性を伝えた上で、実際に自身の印象チェックを行う
14:00-16:40ビジネスマナービジネスマナーの必要性とおもてなしの方法を講義し、実際の立ち振る舞いについて実践で学ぶ
16:40-17:30研修の振り返り研修での気づきを共有し、改めて課題を洗い出す

各演習の時間配分などは、研修講師と相談しながら作成します。また、研修を複数日に分けて実施する場合は、研修日ごとにタイムスケジュールを作成するのがおすすめです。

『自律型人材を育成する 新入社員研修』について詳しくはこちら

効果的な研修を行うには?

効果的な研修を行う方法

研修を効果的に行うためには、スケジュールを組むときにも、いくつか工夫を取り入れる必要があります。スケジュール作成時に気をつけたいポイントとして、次の5つを解説します。社員のスキルアップにつながる、効果的な研修を実施するために役立ててください。

余裕のあるスケジュールにする

研修は予定通りに進むとは限らないため、余裕のあるスケジュールを組むのが大切です。また、1日に内容を詰め込みすぎると研修時間が超過したり、受講者が「覚えることが多い」と負担を感じたりする危険性があります。

コスト削減の観点から短時間で研修を終わらせようと考え、ハードなスケジュールを組むケースも見られますが、短時間で無理にカリキュラムを終わらせようとすると、学習効率の悪化を招く恐れがあるため注意が必要です。会場費や講師報酬といったコストは削減できるものの、研修効果を半減させるリスクが伴う点も理解しておきましょう。

1日の研修で無理なく習得できるカリキュラム数の目安は、3~5つと言われています。カリキュラム数が目安を上回る場合は、研修を複数日に分けて実施し、必ず時間に余裕を持たせましょう。

休憩時間をしっかり設ける

研修効果を高めるためには、受講者が集中力を保てるよう、休憩時間をしっかり確保するのも重要です。人が継続して集中できる時間には限度があり、90分を超えると、集中力が一気に低下すると言われています。研修の学習効果を低下させないように、90分程度に1回を目安に休憩時間を設定するのが理想です。

受講者の人数が多いと、トイレを利用するにも時間がかかってしまう可能性があります。トイレ休憩が十分に取れるかどうかも考慮し、こまめに休み時間を組み込んでおきましょう。

さらに、人は長時間同じ姿勢で過ごすと、精神的にも身体的にもストレスを感じやすいため、定期的にストレッチの時間を設けてリフレッシュするのも1つの方法です。

徐々に専門的な内容になるよう段階的なスケジュールを組む

研修では、基礎的なカリキュラムを優先的に習得した上で、徐々に専門的な内容を習得するように段階的なスケジュールを組みましょう。基礎知識を軽視し、説明不足の状態で研修を進めると、受講者に「難しい」という印象を与えてしまいます。受講者の混乱を招き、理解度も下がってしまうので、いきなり専門的な研修を実施するのは好ましくありません。

また、研修で専門的なカリキュラムや複雑な内容を扱う際は、受講者を置き去りにしない工夫が必要です。例えば、専門用語を解説する際に具体例などを用いることで、受講者の理解をサポートできる場合があります。

受講者に合わせた研修内容・進め方を実現するために、段階的なスケジュール構成を意識した上で、講師とも認識の擦り合わせを行いましょう。

振り返りの時間を作る

研修において、受講者の理解度を高めるには、振り返りの時間を作るのが効果的です。いくら研修内容が充実していても、受講者に知識が定着し、実際の現場で活用されなければ意味がありません。

インプットした情報を整理し、知識として定着させるために、研修を振り返る時間を確保しましょう。研修担当者からフィードバックを行い、研修内容の整理をサポートするのも有効です。なお、振り返りの方法としては、以下が挙げられます。

・簡単なテストや理解度チェックシートを用意する
・研修内容を文章にまとめてもらう
・学んだ内容をグループ内で発表し合うなど

上記のような振り返りとアウトプットを通じて、受講者の理解度・研修効果の向上を目指します。さらに、振り返りの時間には、受講者に「研修内容を業務でどのように実践するか」を具体的に考えてもらうのもおすすめです。

外部研修も活用する

研修スケジュールを組む際には、必要に応じて外部研修の活用も検討しましょう。社内研修は、準備や研修運営などの手間がかかるため、研修担当者の負担が大きくなる場合があります。外部研修を利用すると、個別スケジュールや研修資料を作成する必要がなく、担当者の負担を抑えられる点がメリットです。

また、公開型の社外セミナー・研修では、他社人材と交流する機会が得られます。日頃とは違った環境・価値観の中に身を置くことで、参加社員が新鮮な気持ちで研修に取り組めるのも利点です。他社人材から刺激を受けて、自社人材のモチベーションが高まる効果も期待できます。

外部研修を活用した場合は、研修内容やノウハウを自社に蓄積していくのが大切です。受講者を中心に社内で研修内容を共有し、自社業務に組み込むための方法を具体的に検討しましょう。社外研修サービスを探す際は、以下のようなツールを使うと便利です。

『社員のスキルとマインドを強化し、実践的なスキルを学べる効果的な企業研修』について詳しくはこちら

まとめ

人材育成を成功させるためには、効果的な研修スケジュールが不可欠です。年間スケジュールで全体の流れを見通し、個別の研修スケジュールで細部を具体化することで、準備不足を防ぎ、研修効果を最大限に引き出せます。

余裕のあるスケジュール感や段階的な内容構成、振り返り時間の確保を念頭に置きながら研修内容を決めることで、受講者の満足度や学習効果を高められます。少しでも効果的な研修になるよう、スケジュールを活用しましょう。

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