企業研修

正解のない時代のリーダーシップ理論8種類|組織に合う最適解の見つけ方

会社の将来を見据え、空を見上げる組織のリーダー

リーダーシップは、組織の成果やメンバーの成長を左右する要素です。企業や組織ではこれまで、多くの研究者によってさまざまなリーダーシップ理論が提唱されてきました。一方で近年は、働き方の多様化や組織構造の変化に伴い、メンバーの主体性や協働を重視する新しい考え方も注目されています。

当記事では、従来のリーダーシップ理論と近年の理論を整理し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。自分の組織に合ったリーダーシップスタイルを知りたい方はぜひ参考にしてください。

記事のQ&A

Q.PM理論とは?
A. リーダーの役割を「目標達成機能(P)」と「集団維持機能(M)」の2つの視点から整理するリーダーシップ理論です。成果を上げる力とチーム関係を維持する力のバランスによって、リーダーシップのタイプを分類します。
Q.SL理論とは?
A. 部下の能力や意欲などの状況に応じてリーダーシップのスタイルを変えるべきだとする理論です。部下の成熟度に合わせて「教示型」「説得型」「参加型」「委任型」を使い分けます。
ゴールマンのリーダーシップ理論とは?
A. 感情知能(EQ)の研究を基に、リーダーシップを6つのスタイルに分類したものです。状況に応じて複数のスタイルを使い分けることが、組織の成果につながります。
Q.サーバント・リーダーシップとは?
A. リーダーがメンバーを支援する「奉仕者」として行動することで、組織全体の成長を促す考え方です。傾聴や信頼関係の構築を重視します。
Q.トランザクショナル・リーダーシップとは?
A. 成果と報酬の交換関係によってメンバーの行動を管理するリーダーシップで、目標と評価基準を明確にし、成果に応じて報酬を与えることで組織を運営します。
Q.アダプティブ・リーダーシップとは?
A. 複雑で正解のない課題に対して組織全体で学習と変化を促すリーダーシップで、メンバーが課題に向き合い、解決策を見つけるプロセスを支援します。
Q.オーセンティック・リーダーシップとは?
A. リーダー自身の価値観や信念に基づいた誠実な行動によって組織を導く考え方で、自己理解と信頼関係の構築を重視します。
Q.シェアド・リーダーシップとは?
A. 特定のリーダーだけでなくチームメンバー全員が役割に応じてリーダーシップを発揮する組織運営の考え方で、チーム全体で意思決定や課題解決を進めます。

従来のリーダーシップ論3つとそのメリット・デメリット

「Merit」「demerit」「?」と書かれたイラスト

従来のリーダーシップ論は、組織を効率的に運営するための基本的な考え方として多くの企業で活用されてきました。代表的な理論には、PM理論、SL理論、ダニエル・ゴールマンのリーダーシップ理論があります。それぞれの理論は、組織の成果向上やメンバーの成長を促すための指針となってきました。

ここでは、代表的な3つの従来型リーダーシップ理論と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

PM理論

PM理論とは、リーダーに必要な能力を「目標達成機能(P機能)」と「集団維持機能(M機能)」の2つの視点から整理したリーダーシップ理論です。P機能は業績向上や課題解決を目的とした行動を指し、具体的には目標設定や進捗管理、メンバーへの指示などが含まれます。一方、M機能はチームの関係性を維持する働きで、メンバーへの声かけやコミュニケーション、対立の調整などが該当します。

PM理論では、PとMの2つの機能の強弱によってリーダーシップを4つのタイプに分類します。P機能とM機能の両方が高い「PM型」は理想的なリーダーとされ、成果とチームワークを同時に高めることが可能です。一方、P機能だけが強い「Pm型」は短期的な成果は出やすいものの、メンバーのモチベーションが低下しやすい傾向があります。M機能が強い「pM型」はチームの雰囲気は良くなるものの成果が出にくく、両方が弱い「pm型」はリーダーとしての機能が不足している状態とされています。

PM理論のメリットは、リーダーの行動を成果面と人間関係面の両方から整理できる点です。リーダー育成や評価基準の設計に活用しやすく、組織診断にも役立ちます。一方で、理想像が「PM型」に偏りやすく、状況やメンバーの違いを十分に考慮できない場合がある点がデメリットです。

PM理論は、目標管理とチーム運営の両方が重要な営業組織やプロジェクト型組織で特に活用しやすい理論と言えます。

SL理論

SL理論(Situational Leadership)は、部下の能力や意欲といった状況に応じてリーダーシップのスタイルを変えるべきだとする理論です。従来のリーダーシップ理論が「理想のリーダー像」を示すのに対し、SL理論は「部下の状態に合わせて行動を変える」点が特徴です。

SL理論では、部下の成熟度を4段階に分類します。

成熟度1業務経験が少なく指示を必要とする
成熟度2習意欲が高まり始める
成熟度3ある程度自立して仕事ができる
成熟度4専門性を持って自律的に行動できる

これらの段階に合わせて、リーダーは「教示型」「説得型」「参加型」「委任型」という4つのリーダーシップスタイルを使い分けます。たとえば新人には具体的な指示を与え、経験豊富なメンバーには意思決定を任せるなど、柔軟なマネジメントが求められます。

SL理論のメリットは、部下の成長段階に応じた指導ができる点です。適切なサポートによって人材育成が進みやすく、従業員エンゲージメントや定着率の向上にもつながります。一方で、部下ごとに対応を変えるため、リーダーの負担が大きくなる可能性があります。また、メンバー間で扱いの違いが不公平に見える場合もあるため注意が必要です。

新人育成が多い企業や、人材育成を重視する組織で特に有効な理論と言えるでしょう。

ダニエル・ゴールマンの理論

ダニエル・ゴールマンのリーダーシップ理論は、感情知能(EQ)の研究を基に、リーダーシップのスタイルを6種類に分類したものです。ダニエル・ゴールマン氏は、組織で成果を上げるリーダーは状況に応じて複数のスタイルを使い分けていると指摘しました。代表的なスタイルには「ビジョン型」「コーチ型」「関係重視型」「民主型」「ペースセッター型」「強制型」があります。

ビジョン型組織の方向性を示しメンバーを導くスタイルで、組織変革や新しい挑戦を進める場面に向いている。
コーチ型メンバーの成長を支援する方法で、人材育成を重視する組織に適している。
関係重視型信頼関係を重視し、チームの結束を高めるときに有効。
民主型メンバーの意見を取り入れて意思決定を行うスタイルで、創造性を重視する組織に向く。
ペースセッター型リーダーが模範を示して成果を引き上げる方法で、能力の高いチームに適している。
強制型指示命令によって迅速に行動させるスタイルで、危機対応などの緊急時に効果を発揮する。

ダニエル・ゴールマンの理論のメリットは、組織の状況に応じて最適なリーダーシップを選択できる点です。一方で、スタイルの使い分けには高いコミュニケーション能力と経験が必要になります。変化の多い現代の企業では、複数のリーダーシップスタイルを柔軟に活用するマネジメントが求められています。

近年注目されるリーダーシップ理論5つとそのメリット・デメリット

金の天秤と「Merit」「Demerit」と書かれた文字

近年は、働き方の多様化や組織構造の変化に伴い、従来とは異なるリーダーシップ理論が注目されています。従来の理論が「リーダー中心の統率」を重視していたのに対し、現代のリーダーシップは「メンバーの主体性」や「組織全体での協働」を重視する傾向があります。

ここでは、近年注目される理論の特徴やメリット・デメリット、どのような組織に向いているかを解説します。

サーバント・リーダーシップ

サーバント・リーダーシップとは、リーダーがメンバーに奉仕し支援することで、組織全体の成長を促すリーダーシップ理論です。従来のトップダウン型の指示命令型とは異なり、リーダーはメンバーの能力や意欲を引き出す環境づくりに注力します。組織のビジョンを示した上で、メンバーの主体的な行動を支援する点が特徴です。

サーバント・リーダーシップでは、リーダーは「奉仕者」としてメンバーの成長を支援します。傾聴、共感、信頼関係の構築、人材育成などが大切な行動とされており、たとえばメンバーの意見を丁寧に聞き取り、強みを生かせる役割を与えることで、自発的な行動を促します。このアプローチにより、組織内の信頼関係やコミュニケーションが強化され、チーム全体のエンゲージメント向上につながります。

メリットとしては、メンバーの主体性が高まり、チームの一体感やモチベーションが向上しやすい点が挙げられます。人材育成を重視する企業や、専門性の高いメンバーが主体的に働く組織に向いています。一方で、意思決定に時間がかかりやすく、経験の浅いメンバーが多い組織では方向性が定まりにくい場合があります。そのため、明確なビジョン提示と適切なマネジメントのバランスが必要です。

トランザクショナル・リーダーシップ

トランザクショナル・リーダーシップとは、成果と報酬の交換関係を基盤として組織を管理するリーダーシップ理論です。リーダーは目標や役割を明確にし、成果を達成したメンバーに報酬や評価を与えることで行動を促します。

特徴は、成果と報酬を明確に結び付ける点にあります。たとえば、業績に応じた評価制度やインセンティブ制度を活用することで、メンバーの行動を促します。また、目標を達成している場合には過度に介入せず、問題が生じた場合にのみ管理を強める「例外管理」も特徴の1つで、組織の役割分担や業務プロセスを効率的に管理できます。

メリットは、成果基準が明確になるため、組織運営の効率が高まりやすい点です。営業組織やプロジェクト型業務など、短期的な目標達成が求められる環境で効果を発揮します。一方で、報酬などの外発的動機づけに依存するため、長期的な創造性や主体性が育ちにくいという課題があります。そのため、組織文化の醸成や人材育成を重視する場合は、他のリーダーシップ理論と併用しましょう。

アダプティブ・リーダーシップ

アダプティブ・リーダーシップとは、正解が明確ではない複雑な課題に対応するために、組織全体で学習と変化を促すリーダーシップ理論です。従来の知識や技術だけでは解決できない問題に対して、組織の価値観や行動そのものを変化させることを重視します。

アダプティブ・リーダーシップでは、課題を「技術的課題」と「適応課題」に区別します。技術的課題は既存の知識や技術で解決できる問題です。一方、適応課題は人々の価値観や行動の変化を伴わなければ解決できない問題を指します。たとえば働き方改革や組織文化の変革などは適応課題に該当します。リーダーは答えを提示するのではなく、メンバーが課題に向き合い学習するプロセスを支援します。

この理論のメリットは、変化の激しい環境に適応できる組織を育てられる点です。多様な意見を引き出しながら問題解決を進めるため、イノベーションが生まれやすくなります。特に新規事業や組織変革の場面で効果を発揮します。一方で、変化に対する抵抗が生まれやすく、組織内で意見の対立が起こる場合もあります。そのため、心理的安全性を確保しながら議論できる環境づくりが大切です。

オーセンティック・リーダーシップ

オーセンティック・リーダーシップとは、リーダー自身の価値観や信念に基づき、誠実な行動によって組織を導くリーダーシップ理論です。カリスマ性や権威ではなく、自分らしい価値観と倫理観に基づくリーダーシップを重視します。

オーセンティック・リーダーシップでは、リーダーの自己認識と信頼関係の構築が重要な要素とされています。リーダーは自身の強みや弱みを理解し、メンバーと率直に共有することで信頼を築きます。また、組織の目的や価値観を明確に示し、メンバーと共通のビジョンを持つことが求められます。このような姿勢は、VUCAと呼ばれる不確実性の高い環境において、組織の方向性を示す役割を果たします。

メリットは、リーダーとメンバーの信頼関係が強まり、組織のエンゲージメントが高まりやすい点です。価値観を共有する組織では、メンバーが主体的に行動しやすくなるでしょう。一方で、リーダー自身の価値観や倫理観が曖昧な場合、組織の方向性が不明確になる可能性があるので、自己理解と継続的な自己成長が大切です。

シェアド・リーダーシップ

シェアド・リーダーシップとは、特定のリーダーだけでなく、チームメンバー全員がリーダーシップを分担して発揮する組織運営の考え方です。メンバーそれぞれが専門性や役割に応じて主体的に意思決定に関わる点が特徴です。

従来の組織では、管理職や経営者が中心となって意思決定を行うケースが一般的でした。しかし、変化の激しい現代のビジネス環境では、1人のリーダーだけですべての課題に対応することが難しくなっています。シェアド・リーダーシップでは、チーム全体で責任を分担しながら問題解決を進めます。専門性の高いメンバーがそれぞれの分野で影響力を発揮することで、組織の意思決定の質が高まります。

メリットは、多様な意見が反映されることでイノベーションが生まれやすくなる点です。また、メンバーの主体性や責任感が高まり、チームのパフォーマンス向上にもつながると報告されています。一方で、役割や責任が曖昧になると意思決定が遅れる可能性があります。そのため、基本的な役割分担やチームの共通目標を明確にした上で導入しましょう。

自分の組織に合ったリーダーシップスタイルの選び方とは

「選び方」「POINT!」と書かれたブロック

リーダーシップ理論にはさまざまな種類がありますが、すべての組織に共通する唯一の正解は存在しません。チームのミッションやメンバーの特徴、組織が目指す方向性によって適切なスタイルは変わります。

ここでは、数あるリーダーシップ理論の中から自分の組織に合ったスタイルを選ぶための考え方として、「組織の現状の把握」と「組織の将来像の設計」という2つの視点を解説します。

組織の現状を把握する

自分の組織に合うリーダーシップを選ぶためには、まず組織の現状を正確に把握しましょう。特に大切な視点は「組織のミッションや目標」と「メンバーの特徴や強み」の2つです。目標が明確で成果達成が強く求められる組織では、成果管理や評価制度を重視するリーダーシップが適している場合があります。一方、メンバーの主体性や成長を重視する組織では、サーバント・リーダーシップのような支援型のスタイルが適することもあります。

また、メンバーの能力や価値観を理解することも欠かせません。主体性や創造性の高い人材が多い組織では、意見を尊重する民主型やコーチ型のリーダーシップが機能しやすくなります。反対に、経験の浅いメンバーが多い場合は、明確な指示や管理が必要になるケースもあります。

組織の目標とメンバーの特徴を整理することで、適切なリーダーシップの方向性を判断しやすくなります。

組織の将来像を考える

リーダーシップスタイルを選ぶ際には、組織の将来像を明確にすることも大切です。なぜなら、リーダーシップのあり方は、組織が目指す方向性を実現するための手段となるためです。たとえば、メンバーが主体的に行動し成果を上げる組織を目指す場合は、自律性を重視したリーダーシップが適しています。一方、信頼関係を重視した働きやすい組織を目指す場合には、メンバーとの対話を重視するスタイルが有効です。

また、VUCAと呼ばれる不確実性の高い時代では、状況に応じて複数のリーダーシップを使い分ける柔軟性も求められます。組織のビジョンや目標を具体的に描き、その実現に必要な組織文化や働き方を考えることで、適切なリーダーシップの方向性が見えてくるでしょう。現状の課題と将来の理想像の両方を整理しながら、組織に合ったリーダーシップスタイルを選択することが大切です。

リーダー層の育成にはアイ・イーシーの研修がおすすめ

リーダー層の育成には、実践的なマネジメント力とリーダーシップを体系的に学べる研修の活用が有効です。アイ・イーシーでは、現場で活用しやすいリーダー育成プログラムを複数提供しています。

「新任管理職研修」は、管理職の役割を多面的に整理し、業務設計や部下育成、組織運営の基本を実務に即して学ぶプログラムです。「攻めと守りの課題形成 変革のリーダーシップ研修」は、変化の激しいビジネス環境に対応するため、組織の課題を見極めながら変革を推進するリーダーシップを習得します。また「リーダーとして成果を上げる8つの行動」は、成果を出すための具体的な行動を体系的に理解し、チーム運営に生かせる実践的な内容が特徴です。

リーダーの経験や役割に応じて研修を活用することで、組織全体のマネジメント力向上が期待できます。

『新任管理職研修~リーダーの役割を理解し実践する~』について詳しくはこちら

『攻めと守りの課題形成 変革のリーダーシップ研修』について詳しくはこちら

『リーダーとして成果を上げる 8つの行動(リーダーシップ研修)』について詳しくはこちら

まとめ

リーダーシップにはさまざまな理論があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。大切なのは、特定のリーダーシップ理論をそのまま当てはめるのではなく、組織の状況やメンバーの特徴、将来のビジョンに合わせて適切に活用することです。

リーダー層の育成を進める際には、体系的な知識と実践的なマネジメントスキルを学べる研修の活用も有効です。自社に合ったリーダーシップを磨き、組織全体の成果と成長を目指しましょう。

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