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被害者と見せかけて攻撃する「受動的攻撃」とは?心理や対処法を解説

職場で、遠回しな嫌味や無視、理由の分からない締め切り破りに振り回され、「自分が何か悪いことをしたのだろうか」と悩んだ経験はないでしょうか。相手が正面から怒りをぶつけてこない分、周囲も問題に気づきにくく、対応を誤れば関係の悪化や自身の評価低下を招きかねません。
この記事では、攻撃に見えない形で相手を追い詰める「受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)」について、職場で起きやすい行動パターンとその背景にある心理を解説します。さらに、記録と情報共有によって被害の拡大を防ぐ方法も紹介します。
| Q.受動的攻撃とは? |
| A. 受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)とは、怒りや不満を正面から伝えず、遅刻や締め切り破り、無視、皮肉、不機嫌といった間接的な言動で相手に負担や不快感を与える行動のことです。表向きは協調的に振る舞うため、職場ではハラスメントとして認識されにくい傾向があります。周囲には「自分こそ被害者だ」という印象を作り、相手に罪悪感を与えて追い込もうとする点が特徴です。 |
目次
Toggle受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)をする人の典型的な行動パターン

職場などで、一見して攻撃に見えない形で相手を傷つけたり困らせたりする言動は、「受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)」と呼ばれる行為です。
受動的攻撃をする人の行動には共通点があります。一見すると協調的に見えながら、遅延・皮肉・無視・不機嫌といった手段で相手の負担を増やし、同時に自分を「傷つけられた側」として見せようとする点です。正面から不満をぶつけるのではなく、行動を通じて間接的に不満を表明するため、暴力や暴言などの能動的攻撃と比べ、対立や責任を追及されにくいという問題があります。
表面上は穏便な言動に見えても、受動的攻撃が続くと心理的安全性が低下し、「何を言っても大丈夫」という空気が失われるため、職場の信頼関係や生産性は着実に損なわれます。したがって、早い段階でパターンに気づき、対処につなげることが重要です。
以下では、職場で見られやすい5つの典型的な行動パターンを紹介します。
受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)をする人の典型的な行動パターン
時間を守らないことで相手の業務を止めるのは、受動的攻撃の代表的なパターンです。直接反論するわけではないため摩擦が起きにくく、「忙しかった」「うっかり忘れていた」と釈明しやすいという特徴があります。
例えば、共同プロジェクトの資料提出を繰り返し遅らせるケースは受動的攻撃の典型です。そのたびに周囲がリカバリーに追われる状況が常態化すると、標的にされた人は評価を落としやすくなるだけでなく、心理的な余裕も削られていきます。
褒めているような言い方で嫌味や皮肉を言う
褒め言葉の形をとりながら相手の自尊心を削る言い方も、受動的攻撃の典型です。指摘しても「褒めただけだよ」とかわしやすく、周囲からは角の立たない発言に見えるため、問題が表面化しにくいという厄介さがあります。
例えば「さすがだね、普通はそこまでしないけど」という言い回しは、一見相手を持ち上げているようでいて、実際には「あなたのやり方は普通ではない」という含みを持たせています。こうした小さな棘を隠した言葉が繰り返されると、受け手は徐々に自信を失い、チーム内のコミュニケーションも損なわれるでしょう。
受動的攻撃の判断のポイントは、言葉の表面的な意味ではなく、受け手が継続的に萎縮しているかどうかです。同じ相手に対して同じパターンの発言が繰り返されている場合は、意図的な攻撃である可能性を視野に入れる必要があります。
相手を無視する
返事をしない、必要な情報を共有しないといった「無視」は、目に見えにくい形の業務妨害です。攻撃の意図が外からは分かりにくいため、無視された側だけが「自分に落ち度があったのか」と悩み続ける構図が生まれやすくなります。
典型的なのは、チャットやメールを既読のまま放置し、確認が遅れた責任を相手に転嫁するケースです。チャットで業務の確認を求めても返信をしない、前提となる情報を伝えない、などの行為が繰り返されると、無視された側は業務の進捗に問題が発生し、疲弊します。
露骨に不機嫌な態度を取る
ため息、舌打ち、ドアを強く閉める、書類を乱暴に置く、などの形で、不機嫌さを態度で周囲にぶつける行動も受動的攻撃の一種です。
例えば、会議の間ずっと腕を組んで不機嫌な表情を見せ続けることで、ほかのメンバーが意見を言いにくい空気を作る行動などは、受動的攻撃の一種と言えます。発言で妨害しているわけではないため指摘しづらいものの、チームの議論の質は確実に下がります。
露骨に不機嫌な態度を「あの人はそういう性格だから仕方ない」と放置すると、周囲が常に顔色をうかがう状態が固定化してしまい、結果として職場の業務の質は低下するでしょう。
職場で露骨に不機嫌な態度を取る行為は、近年は不機嫌ハラスメント(フキハラ)とも呼ばれており、個人の性格の問題ではなく、ハラスメントとして扱う必要があります。
大げさに「誰かに傷つけられた」という態度を取る
実際の出来事に対して不釣り合いなほど被害者の立場を強調し、周囲の同情を集めようとする動きも、受動的攻撃として現れることがあります。直接攻撃するのではなく、「自分はひどい目に遭った」と訴えることで周囲を味方につけ、結果として標的にした相手を「加害者」に仕立て上げようとするのは、受動的攻撃の典型例です。
例えば、業務上の小さな指摘を受けただけなのに「人格を否定された」「ハラスメントされた」と周囲に言いふらし、相手に罪悪感を与える形で相手への圧力をかけるのは、受動的攻撃の1つです。聞いた側は被害者の話だけで判断してしまいやすく、事実と異なる評価が広がるリスクがあります。
特にハラスメントへの対応が未熟で、感情的な訴えに簡単に流されたり、十分にヒアリングを行わなかったりする職場ほど、被害者のように振舞う受動的攻撃には弱くなります。
受動的攻撃をする人の心理

受動的攻撃をする人の根底には、「怒りや不満はあるのに、それを正面から伝えられない」という共通した心理があります。
率直に自己主張できない背景はさまざまです。衝突そのものへの強い恐れ、自己評価の低さから「本音を言えば拒絶される」という思い込み、あるいは感情を言葉にする経験が乏しいまま大人になったことなどが挙げられます。こうした要因が重なると、不満を伝えるときに防衛機制が働き、間接的な行動で気持ちを表すくせが出やすくなります。
また、「相手に支配されたくない」という感覚を持っている人は、上司などの力関係が上の相手へ受動的攻撃を行う傾向があります。なぜなら、「正面衝突は避けたいが、完全に従うことにも耐えられない」という気持ちがあるためです。
加えて、「自分は正当に評価されていない」「周囲に誤解されている」という不満を慢性的に抱えた結果、周囲の同情や配慮を求めて受動的攻撃性が高まるケースもあります。
注意したいのは、受動的攻撃行動の背景に過度なストレスや職場環境の問題など、本人だけに帰せない要因が隠れている可能性もあるという点です。行動のパターンを把握することは大切ですが、「この人はそういう人だ」とパーソナリティを決めつけるのではなく、なぜそうした行動が出ているのかという視点を持つことが、適切な対処への第一歩になります。
職場で受動的攻撃によるモラハラを行う人への対処法

受動的攻撃は、ストレスや不満を抱えたときに誰でも一時的に取ってしまう可能性のある行動です。しかし、頻度が高く仕事に支障をきたすレベルになると、職場のモラルハラスメント(モラハラ)として深刻な問題に発展します。
以下では、職場で実行しやすい3つの対処法を解説します。
冷静に反応する
皮肉や無視を受けたとき、最も重要なのは「そのまま反応しない」ことです。声量や態度を一定に保ち、相手の行動に振り回されない姿勢を見せることが対抗手段になります。
受動的攻撃を行う側は自分が被害者であるように振舞いたがるため、怒りや苛立ちを見せるほど、「ほら、あの人のほうが攻撃的だ」と周囲に印象づけられるリスクが高まります。
したがって、冷静さを保ちながら事実ベースで状況を扱い、責任範囲を明確にして攻撃の余地を狭めることが重要です。
例えば、会議で自分の質問だけが繰り返し無視される場面があったときは、「なぜ無視するんですか」と詰め寄るのではなく、「確認したい点が1つあります。回答可能なタイミングを教えてください」と事実ベースで切り返すことで、やり取りの主導権を自分の側に保てます。
なぜ怒っているのかその場で尋ねる
受動的攻撃が成り立つのは、「不満の理由が言葉にならない状態」が続いているときです。逆説的に言えば、曖昧な態度を放置せず、短い問いかけで相手に意図を言語化させることで、受動的攻撃は成立しにくくなります。
例えば、相手が明らかに不機嫌な態度を見せているにもかかわらず「何でもない」と繰り返すような場面では、「何か気になる点があるように見えます。業務上困っていることがあれば教えてください」と声をかけましょう。
ポイントは、感情を問い詰めるのではなく、業務上の課題として受け止める姿勢を示すことです。相手の不満を個人的な感情の問題ではなく、解決可能な業務課題に変換することで、対話の土台が生まれます。
業務の責任範囲と期待する結果を先に明確にする
遅延や情報の出し渋りといった受動的攻撃は、業務の責任範囲が曖昧なほど発生しやすくなります。「聞いていなかった」「自分の担当だとは思わなかった」という言い逃れの余地があるためです。反対に、成果物・期限・担当を事前に合意しておけば、問題が起きた際に感情論ではなく事実に基づいて状況を是正できます。
依頼の時点で「目的はA、成果物はB、期限はC、確認者はD」と短く整理し、チャットやメールなど文面にも残しておきましょう。口頭だけの合意は「言った・言わない」の争いに発展しやすいため、記録に残すこと自体が防御策になります。
ハラスメントを防ぐために役立つアイ・イーシーの研修
受動的攻撃への対処で陥りがちなのが、「相手の性格を直そう」とすることです。しかし他人の性格を変えるのは現実的ではありません。それよりも、研修などを通じて自分の言動に自覚してもらい、かつ、職場内でも何が受動的攻撃なのか周知することが、受動的攻撃をはじめとしたハラスメントを防ぐのに役立ちます。
アイ・イーシーでは「悪気がなかった」をなくすための「行動変容」に焦点を当てた研修を行っています。性格を改善するのではなく、言葉の選び方・伝え方の技術を磨いてもらうことで、相手に配慮したコミュニケーションが可能になります。
ぜひ、アイ・イーシーの研修を職場の改善にご活用ください。
まとめ
受動的攻撃(パッシブアグレッシブ)が厄介なのは、露骨な暴言とは異なり、遅延、皮肉、無視、不機嫌といった見えにくい形で相手を疲弊させる点にあります。行動の背景には、対立を恐れて不満を言葉にできない苦しさや、正面衝突は避けたいが主導権は手放したくないという葛藤が関係しています。
職場で実害を減らすには、感情的に反撃せず事実として扱うこと、短い問いかけで不満の焦点を言語化させること、そして成果物・期限・担当といった責任範囲を事前に明確にして攻撃の余地を狭めることが有効です。それでも状況が改善しない場合は、やり取りの経過や遅延の事実を記録し、上長や人事に相談できる状態を整えておくことで、関係の悪化と業務への損失の両方を抑えやすくなります。
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