ツアーガイドが同行しない個人旅行の場合、最も苦労することのひとつが言葉の問題といえます。たとえ英語がペラペラであっても、アジアの国々では、高級なホテルやレストランなどを除き、庶民の生活エリアでは英語があまり通じません。これでは、せっかくの英語力も「宝の持ち腐れ」です。それは日本も例外ではなく、これだけインバウンドが盛り上がっても、英語で話しかけられると、逃げ出したくなってしまう人(筆者もそのひとり)が少なくないのではないでしょうか。
では、日本語以外は話せない日本人がアジアへ行ったとして、一番スムーズに過ごせる国はどこだと思いますか?
個人的なナンバーワンは台湾です。漢字を見れば大体の意味は推察できますし、幅広い世代で日本語を話せる人が多い点も心強い限り。そして何より、人々の親日ぶりは群を抜いていますから、不快な思いをすることはまずありません。慣れてくると、国内旅行の延長のような錯覚に陥ることも。しかも、懐かしい昭和の日本の雰囲気なので、実に居心地がいいのです。
台湾に続く国となると、それぞれ一長一短があり、評価が難しいのですが、そのなかでイメージよりは旅がしやすいと感じたのが韓国です。
筆者はハングルがまったく分かりません。にもかかわらず、食事・移動・宿泊で困った記憶がほとんどないのです。ハングルだらけの世界に放り込まれ、「ハングル酔い」してしまったという人の話をよく耳にしますが、あれは視覚的に疲れるだけで、必要のない情報はスルーするよう意識すれば、すぐに慣れるはずです。
▲韓国の都市部では、ごくふつうの店にも日本語が併記されている
韓国の地下鉄は、駅名に漢字が併記されているので分かりやすく、主要駅では日本語のアナウンスも流れます。自動券売機で切符を購入する際も、日本語を選択できるので安心です。
また、トイレが充実しており、総じて衛生的(ちゃんとペーパーも備わっている)なのも、旅行者にとってありがたいと感じました。
しかも、トイレは改札外にあるので、電車に乗らない人も気軽に利用できます。韓国ではコンビニにトイレが併設されていないこともあり、大変に重宝しました。
「食」は旅の最大の楽しみといえますが、メニューが読めないと、楽しみが半減してしまいますよね。適当に注文し、何が出てくるかドキドキ、というのも悪くはないものの、やはり食べたいものを注文できるに越したことはありません。
その点、韓国は高級店でなくとも日本語併記率が非常に高く、指差しでOKなので助かります。メニューに写真を多用しているのも韓国の特徴で、食いしん坊の旅行者には、天国のような国といえるでしょう。
ただ、これまでの経験上、本当に美味いと思える店は、観光客を相手にしていない(拒否するということではなく、行けば笑顔で歓迎してくれる)ので、必死に韓国語と格闘するほかないのですが。
政治的な問題が影を落とす日韓関係は、残念ながら、悪化の一途を辿っている印象です。しかし、現地を訪れれば、親切かつ善良な人がほとんどで、少なくとも一介の旅行者が「反日」を意識することはありません。
もし、日本を訪れる韓国人が「嫌韓」を感じる場面があるとしたら、「おもてなし」以前の話です。マスコミが作り上げたイメージに感化されず振り回されず、曇りのない目で「日本から一番近い外国」を体験してみませんか。