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創考喜楽

第12回:飛行機はなぜ飛ぶのか その2

KNOW-HOW

どこかおかしくないか?

 

 前のレッスンでは、ボールが曲がるのと同じ原理で飛行機が飛ぶ理由を説明しました。「なるほど、翼の形が問題だったのか」と納得できるかもしれませんが、よく考えると少しおかしいところがありませんか?

 

 翼が空気を分けるという説明の後、「上と下に分かれた空気が、また一緒になるように翼の後ろで合流するならば」とありますが、分かれた空気が一緒になる必要があるのでしょうか?

 

 また、翼の断面図は本当に前のレッスンの図3のような形をしているでしょうか?

 

 実は前回の説明は、「飛行機はなぜ飛ぶのか?」という質問に対して簡単に答えるためによく使われているもので、「飛行機がなぜ飛ぶのか」を完全に正確に説明したものではありません。「そんなのあり?」と思うかもしれませんが、本質はおさえています。簡単に説明する方法が他にないためにあえてわかりやすい説明をしたのです。もう少しくわしく見ていきましょう。

 

 

簡単には説明できないことも多い

 

 実は翼によって分かれた空気がまた一緒になる必要はなく、実際の実験でもそうなっていないことが確認できます。でも翼の上下で圧力差ができることは確かです。そして上の方の圧力が低くなって揚力が生まれることも、間違いありません。ただ、その説明は少し難しく、かつ、単純にひとつの原因では説明できない複雑な要素が絡み合っています。

 

 図1で考えてみましょう。この図では空気が再び合流することなく、翼の形も平らなものを使っています。簡便な図ですが、このように見れば、たとえ分かれた空気がまた一緒にならなくても、空気の流れが翼に沿って進み、上の方は空気が薄く、下の方が濃くなっているのがイメージできます。こうして翼の上下で圧力差ができるのです。この直感的なイメージのような効果と、翼の形の効果、さらには空気に渦ができる効果などが複雑に絡み合い、揚力が発生しているのです。

 

 この問題の大本を辿ると、空気分子と翼を構成している分子の衝突ということになります。ミクロな分子同士の衝突という素過程は物理で理解できても、マクロな話になると、単純な物理の原理では説明できないこともあります。

 

 マクロな話は、多数のミクロな過程の集団効果です。集団でどういう効果が起きるかはいくつかのモデルを考え出すか、シミュレーションや数値解析で答えを求めることになります。

 

 その結果、飛行機がどうすればどれくらいの揚力が得られるかということは、シミュレーションや数値解析で確実にわかっています。そのため、私たちは安心して飛行機に乗ることができるのです。

 

 

“全く考えない”と“正確にはわからない”は全然違う

 

 「簡単に説明できない」という答えは、答えとして意味がないし、それってサイエンス思考なの? と感じてしまうかもしれません。でも、そんなことはありません。最初に述べたように、本質は押さえています。

 

 ここでは“翼の上下で圧力差ができて揚力が生じる”という部分が本質です。前回のレッスンでは圧力差ができる理由に実は少し無理がありましたが、それは「正確に言えば違う」だけで、飛行機が飛ぶ原理を考える上で重要な「本質」は満たしています。

 

 サイエンス思考で大切なのは、このように本質的なところをつかむことです。本質を知るためには、疑問を持ち、その疑問を追求していくこと、しかもミクロにこだわらず、マクロな視点からも考えることが大切なのです。

 

 その意味で、この「飛行機はなぜ飛ぶのか」という問いは、サイエンス思考について考えるうえで、とても良い題材といえます。このようにして「その2」について考えると、サイエンス思考の良い訓練になるでしょう。

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