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創考喜楽

第7回:なぜ宇宙では音が伝わらないのか

KNOW-HOW

縦波と横波

 

 電磁波のことを、前回まで学んできました。そして電磁波とは、「電場と磁場が振動しながら進む波」と説明しましたが、そもそも「波」とは何でしょうか?

 

 物理的な波とは、“振動している何かが空間を伝わっていく現象のこと”を指します。振動とはその場で周期的に動いているものを指しますが、その振動が空間を伝わって遠くまで届く現象を、単なる「振動」と区別して「波動」と呼びます。「波」とは波動の簡単な言い方です。

 

 波には大きく分けて縦波と横波の2種類があります。横波とは、波の振動する方向が波の進む方向に対して垂直なものをいいます。電磁波は横波の代表格です。電磁波は進行方向に対して電場と磁場が垂直に振動します。それに対して縦波は、波の振動方向が波の進行方向と一致します。

 

 下の図のように、細長いスプリングに波を作ることを考えてみてください。この図では右方向(波の進行方向)にz軸を取って、それと垂直にx軸とy軸を取ります。上の2つはスプリングをx軸かy軸に振って、振動させたものです。この振動は波として、z軸方向に伝わっていきます。つまり波の進行方向と振動方向が垂直なので、この2つは横波です。

 

 一番下の場合は、z軸方向にスプリングを押したり引いたりして振動させています。このスプリングの伸び縮みが、z軸方向に波として伝わっていきます。振動方向も進行方向もz軸で一致しているので、スプリングの密度が高い部分と低い部分が交互に現れます。密度の変化が伝わって行くのが縦波の特徴です。そしてこの縦波の代表格が音波です。

 

 

 

音は空気の密度の変化を伝える縦波

 

 音波は空気の密度が振動していて、その密度の変化が空間を伝わっていくものです。

 

 下の図はスピーカーの模式図です。スピーカーでは中心にあるコーンという部分が振動することによって、空気分子を押したり引いたりします。コーンが前に出て空気分子を押せば、その部分の空気の密度は高くなります。逆にコーンが後ろに下がって、空気分子を引くことになれば、その部分の空気の密度が低くなります。これによってコーンの振動数と同じ振動数を持った空気の“密度の変化”、すなわち“縦波”が発生するのです。

 

 スピーカーに限らず音を発するものは、すべてこのような振動によって縦波を作っているのです。そして私たちの耳の鼓膜がその空気の振動を感知し、音として認識するのです。

 

 

 

光と音は同じ波でも全然違う

 

 同じ波でも、光(電磁波)と音(音波)はかなり性質が違います。光は横波、音は縦波ということもそうですが、最大の違いは“何もない空間を伝わることができるかどうか”です。

 

 宇宙空間のような真空でも、光は届きます。対して音は空気の密度の変化なので、空気がないと伝わりません。宇宙空間には空気がないので、音は存在しません。この違いはとても大きなものです。光は不思議なことに、伝える“もの”がなくてもいいのです。何もない空間を電場と磁場が伝わっていきますが、何か質量のある“もの”が振動しているわけではないのです。光というのは、そういう意味で特別な波です。

 

 

 

空気以外の物質でも音は伝わる

 

 それに対して、音には伝える“もの”が必要です。伝えるものは、実体のある分子です。空気でなくても実体のある分子が振動していれば音は伝わります。

 

 家の壁も音は通します。机に耳をつけて机の端を「コンコン」と叩くと、その音は空気を伝わるのではなく、机の中の分子の密度の変化を通して耳に届きます。プールに潜った状態でも、水の中を伝わる音を聞くことができます。空気のような気体だけでなく、液体でも固体でも音を伝えることができるのです。

 

 ただ、私たちが声を出す時は普通、空気の中にいるのですから、空気の密度の変化を作るように声帯ができています。水の中では空気中のように声は伝わりませんし、空気よりもずっと軽い分子であるヘリウムガスなどを気管に含ませて話をすると、いつもとは全然違う声になります。ヘリウムボイスといってパーティ用などに売っているものがありますが、声が変わる理由は、空気(主に窒素と酸素)とヘリウム(水素の次に軽い)の重さの違いです。

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