厚生労働省の労働経済動向調査では、年に4回、四半期毎に労働力の過不足の状態を事業所に対して調査しています。ここでは、不足という回答事業者比率から過剰という回答事業所比率を差し引いた値(DI値という)について、職種別の推移グラフを掲げました。
全体としての労働者の過不足については、景気の変動によって不足と過剰の間を大きく上下しているのが分かります。
1998年秋に拓銀、山一証券など大型金融破綻事件が起こりました。この時期に大きく落ち込んだ労働力需要が、2001年のITバブル崩壊・9.11同時多発テロの時期にもう一度落ち込んだのち、長期的に回復を続けましたが、2008年9月のリーマンショックによりかってない不況に突入し、労働力の過剰も深刻なものとなりました。その後、東日本大震災(2011年3月)の際に一時落ち込みましたが、これを除くと、再度、回復の傾向にあります。2013年の直近には、すべての職種で労働力が不足という状況となっており、これは、1996年以降、はじめてのことです。
こうした時系列変化に加え、全体を通じて、職種により、労働力の不足・過剰状態には大きな差があることも図からうかがえます。
専門職・技術職は常に労働力が最も不足している職種ですし、これに対して、事務職と管理職は、景気の良い一時期を除いて、常に労働力が過剰となっています。営業マンやホームヘルパーなどの販売職・サービス職は、どちらかというと、専門職・技術職に近いかたちです。
製造業・建設業に属する技能工と単純工については、景気変動の波を受けやすい職種となっています(特に単純工)。景気が悪化した1998年、2001年、2009年、2011年には、単純工は事務職・管理職より過剰となりました。不況が深刻だった2009年には、技能工も事務職・管理職より過剰となりました。ところが、それ以外の景気の良い時期には、事務職・管理職より労働力がずっと不足の状況となっています。
なお、2009年以降は、労働力過不足の状況の職種別の高低幅が、以前より、小さくなったことにも気がつかされます。就職にかかわる職業情報が行き渡るようになり、過剰な職種を目指す人が減り、不足する職種に就職する人が多くなったせいでしょうか。詳しいことは分かりません。
余り注目されることが少ないデータですが、こうした職種別の労働力過不足の状況は、社会構造の変化を端的に示しているといえるでしょう。