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vol.1 賃金・給与を何で決めるか-成果主義の見直し-

Vol1. 統計データから読み解く 働く人と企業の未来像 COLUMN

賃金・給与を何で決めるか -成果主義の見直し-

企業やサラリーマンを取り巻く状況についてデータの動きからチェックしてみようというこの連載の第1回目は賃金・給与が何で決められるかのトレンドです。

 

厚生労働省は、毎年、常用労働者が30人以上の民営企業を対象に「就労条件総合調査」を行っています。賃金・給与自体は別の統計で調べられていますが、この調査では、労働時間制度、定年制度、賃金制度といった雇用に関する企業の制度を調べています(4千社以上が回答)。毎年ではありませんが、労働費用や福利厚生制度、退職給付についても調べる年があります。毎年きいている賃金制度に関する設問の中でも「賃金・給与を何で決めているか」は何年かおきに実施されています。この設問の回答結果の推移を図に掲げました。調査票には「給与、会計、人事等についてよく把握されている方が記入して下さい」とあり、調査結果は企業の人事部門の考え方が反映していると見ることができます。

 

(注)E職務・職種は実際は「職務・職種など仕事の内容」という選択肢。調査対象が2001年までは「本社の常用労働者が30人以上の民営企業」であったが、2009年以降は「常用労働者30人以上の民営企業」と範囲が拡大。問には「職務遂行能力」の選択肢もあり、結構高い値を示している(12年管理職70.7%、管理職以外68.7%)が、「業績・成果」とほぼ同様な増減傾向で推移している(評価基準としては具体的でないので図では省略)。 (資料)厚生労働省「就労条件総合調査」

 

バブル崩壊後の「失われた10年」と呼ばれる1990年代の後半には、働かない雇用者は切り捨てるというリストラが進行する一方で、何とか企業活動を活性化させようということで、能力主義に加えて、成果主義による業績アップが流行となりました。こうした潮流を反映して「業績・成果」で基本給を決定するという回答が1996~2001年には6割を越えていました。

 

ところが、その後、2001年から2012年にかけて、「業績・成果」という回答が、管理職についても、管理職以外についても、低下しており、成果主義の見直しが進んでいることがうかがえます。

 

一方、成果主義が見直されたからといって、以前、重視されていた「年齢・勤続等」、あるいは「学歴」に回帰した訳ではありません。それらの値も基本的には大きく低下しています。ただし管理職以外では「年齢・勤続等」が2009~12年に増加しており、従来型の復活を印象づけるかたちとなっていますが。
残るは「職務・職種」ですが、これについてはほぼ横ばいの傾向です。ということは相対的重要性は増したということです。

 

成果主義は、目標管理という手法も登場しましたが、何で成果を計るか、成果を計れる職種とそうでない職種の公平感、誰が成果を計るか、適切な成果基準を作れるか、結局上司の判断(恣意)次第ではないか、等の問題からそうそう定着しなかったものと思われます。

 

「業績・成果」という回答が減少した2001~2009年は、小泉構造改革を象徴する郵政選挙(2005年)を経て民主党への政権交代(2009年)に至る時期にあたっており、市場主義経済の行き過ぎが反省された結果が賃金制度にも反映したということも考えられます。

 

一方、グラフには掲げていませんが、2009年調査から新たに調査項目となった賞与(ボーナス)の決定要素については、「業績・成果」を基準としている企業が、2009年及び2012年について、管理職については、それぞれ、57.6%、54.1%、管理職以外については、58.9%、51.0%となっています。いずれも5割を越えており、成果主義は賞与については定着しているようにも見えますが、一方で、過去3年で低下傾向が見られ基本給と同様やや見直されていることが分かります。

 

賃金・給与について、個々の社員の実力、貢献度を、職種や職務による基準で計るしかないというところに向かっているため、昇進や配属、転属といった点がこれまで以上に社員の重大関心事となっていると考えられます。年齢、学歴、勤続が決定要因として衰え、しかも成果主義も見直されるということになると、あとは運やトップの意向次第ということになりますからハラハラ・ドキドキはそれだけ増す訳です。飲み屋での話題はこういった点に集中していませんか?

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