単身赴任者の数を直接把握している統計はありません。厚生労働省が厚生行政の基礎資料収集のため毎年行っている国民生活基礎調査では、世帯の状況を調べており、その中で、かつては単独世帯の構成員、すなわち単身者(男性)が有配偶者かどうかの数字を集計していました。この中には別居中、あるいは妻が入院中の単身者など単身赴任以外も含まれていると思われますが、多くは単身赴任者であると考えられるので、これを単身赴任者の推移としてグラフにしました。
5年おきに行われる国勢調査でも家族類型別集計の中で「世帯主が有配偶男の単独世帯数」として同様のデータが得られるので同時に掲載しました。国勢調査年については単身赴任率(単身赴任者数の対有配偶者比率)も掲載しました。
単身赴任による家族のすれ違いや愛人関係、夫婦の離婚を題材にした日本映画の桂作「ウホッホ探険隊」(監督:根岸吉太郎)は1986年製作でした。登場人物の息子のセリフ「僕たちは探険隊みたいだね。離婚ていう、日本ではまだ未知の領域を探険するために、それぞれの役をしているの」(原作小説)から題名が付けられていることからうかがえるように、まだ、単身赴任やそれから生じる離婚は草創期の状況だったといえます。
単身赴任者の数は増加を続け、1997年に741万人とピークを記しましたが、その後2000年代前半に向けては増勢は止まり、やや減少傾向で推移しました。国勢調査でも同様に増加したのち、2000年から2005年にかけてはほぼ60万人で横這いとなりました。
ところが、国勢調査の結果を見ると、2005年から2010年には、再度、大きく増加し73万人となりました。有配偶者(男)に占める割合もついに2.3%と2%を超えました。
その割に、かつてのように単身赴任が話題とならないのは、離婚などと同じように、それが当たり前のことになってしまったからでしょう。