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創考喜楽

2018.12.06
REPORT

スーツに革靴で20km。災害時の「徒歩帰宅」って実際どうなの?【試してみた】


 

新コーナー企画書

 

企画名:
その情報、鵜呑みで大丈夫? 試してわかった防災の勘所

 

概要:
被災時に生じるさまざまな状況を再現し、身体を張って体験。
そこでわかった肌感覚の勘所を防災のヒントとしてレポートする。

 

実施案:
第1回:片道20㎞をスーツ+革靴で歩いて帰ってみた!
第2回:電気が使えないオフィスで、一晩泊まってみた!
第3回:未定

 

 

「口は災いの元」とはよく言ったもので、なにげない企画提案が採用となり、スーツ+革靴で20㎞を徒歩帰宅することになりました!

 

 

 

 

被災時、交通網が麻痺してしまえばタクシー移動もままなりません。そうなると、選択肢は2つ。その場に留まるか、歩いて帰る(徒歩帰宅)か。「地図を買っておきましょう」「スニーカーを用意しておきましょう」など、徒歩帰宅のTipsはよく聞きますが、実際はどうなのか?

 

こうしたQuestionに答えを求めるべく、また、みなさんの防災のヒントをご提供するべく、メディア編集者、講座開発担当者、&有志にて、オフィスから自宅まで、実際に歩いて帰ってきました!

 

 


 

〇参加者
編集H(30代後半・男性|自宅までの距離:20km)※本企画担当
編集K(20代後半・男性|自宅までの距離:9.6km)
開発T(30代前半・男性|自宅までの距離:18.5km)
有志A(20代後半・女性|自宅までの距離:7.7km)

 

〇基本ルール
・麹町(オフィス)から自宅までを徒歩で歩いて帰る。
・急な被災を想定して普段の服装・持ち物で(防災グッズなし)。

 

〇チェック項目
・30分おきの定点観測(移動距離、身体への影響など)
・帰宅路中の危険(危険エリアや通行困難箇所など)

 


 

 

17:30 スタート!

天候にも恵まれて、意気揚々と出発です。
この先に待つ、辛い道のりのことなど知る由もありません。
師走も近づく11月下旬、まだ17時過ぎですが空は暗くなっていました。

 

普段から交通量の多い国道は難所に。迂回ルートも要確認。

 

 

皇居周辺はトイレが多いけど、有事の際は通行止めになるか…

 

 

18:00(30分経過)

一般的な歩行速度は「時速4km(1km=15分)」とされています。
(被災時は道の混雑で、より時間がかかることが想定されます)
2-3㎞ならお散歩レベル。まだまだ余裕です。

 

〇途中経過
編集H(2.6km/20km)「新宿超え。平時から人が多くて歩きづらいのに、有事に通れるとは思えない。」
編集K(2.1km/9.6km)「東京って意外と小さい。」
開発T(1.8km/18.5km)「赤坂の繁華街から漂ってくるイイニオイに空腹を刺激されてます。ツラいです。」
有志A(2.1km/7.7km)「皇居ランナーに向かって逆走するのがつらい。」

 

赤坂のビックカメラ。品物があればいろいろ購入できそう。

 

 

普段は楽しい飲み屋街も、震災時は倒壊&火災に要注意。

 

 

18:30(1時間経過)

普段あまり歩かない人は、少々キツくなってきました。
18:30にもなると空は真っ暗です。路地などを歩くのは、ちょっと怖いですね。

 

〇途中経過
編集H(5.7km/20km)「西新宿のビルの下を進む。高層ビル群は本当に倒壊しないのだろうか…」
編集K(4.2km/9.6km)「新宿迂回ルートは人が少ない!」
開発T(4.5km/18.5km)「暑くて、マフラーもコートもセーターも脱ぎました。」
有志A(4.4km/7.7km)「ビルの間の同じような景色ばかり。暑い…!のど渇いた!ビール飲みたい…!」

 

新宿近辺。人込みはともかく、地図が多くて助かります。

 

 

喫煙者にとっては喫煙スポット探しも重要。意外とないから。

 

 

19:00(1時間30分経過)

このあたりまでは歩行速度もあまり落ちず、十分に徒歩帰宅圏内です。
運動不足解消にもなるので、たまに歩いて帰ることはお勧め。

 

〇途中経過
編集H(8.8km/20km)「都庁を越えて明かりが少なくなる。コンビニも遠ざかり、トイレ探しに苦労する。」
編集K(6.4km/9.6km)「人が増えてきた。革靴では足に疲労感。。」
開発T(6.8km/18.5km)「南北線沿いはちょいちょい地上に出て歩いたこともあったりしたルートでしたが、ここから先は未知の道でテンション上がります。」
有志A(6.8km/7.7km)「あとは京葉道路をまっすぐ。見慣れた地名が増えたな。」

 

平坦ルートの方は、自転車店を見つけておくと便利。

 

 

途中にあった高校。避難所になるかも?

 

 

19:30(2時間00分経過)

映画一本を見終えられるだけの時間が経過しました。
ようやく一人目が帰宅しました。他のメンバーは、そろそろ身体への異変も出てきたようです。

 

〇途中経過
編集H(11.4km/20km)「このあたりは一本道。人混みと迷子ストレスがなく順調に進む。」
編集K(8.9km/9.6km)「大通りはやはり人が多いが良く知る道は安心。足の裏が痛い。」
開発T(8.7km/18.5km)「五反田駅周辺の明かりが見えます。このあたりで切り上げれられれば、『あぁ、良い運動だった』で終わりにできそうですが…」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)「5センチ、太めのヒールでも、足の裏やつま先が痛くなりました。」

 

橋の付け根にあったトイレ。人通りも要チェック(少ないと危険)。

 

 

20:00(2時間30分経過)

このような企画を立てたことへの後悔の念が強くなります(発案者が最長20㎞の人物)。
しかし、実際の被災時には、そのようなことは言ってられません。
身体を張ったケーススタディとして、「本番」のヒントを探しながら歩き続けます。

 

〇途中経過
編集H(14.4km/20km)「身体に異変発生。バッグの持ち手(左手甲)が痺れ始める」
編集K(9.6km/9.6km【所要時間2:10】)「革靴と知らない道は結構疲れる。。レザーソールはダメ絶対。」

開発T(11.2km/18.5km)「中原街道突入! 丸子橋まであと7キロの表示が、ボクに勇気を与えてくれます。」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)

 

買い物、食事、トイレ、休憩、避難等、万能の大型スーパー。

 

 

20:30(3時間00分経過)

実際の被災時でも、途中休憩は大切です。
身体の痛みが強くなっていくなか、適宜休憩を取りながら進みます。

 

〇途中経過
編集H(17.4km/20km)「やはり腕の痛みがいちばん辛い。ショルダーベルトかリュックベルトがほしい。」
編集K(10.3km/10.3km【所要時間2:10】)
開発T(13.2km/18.5km)「そろそろ足が痛くなってきました。左足の甲です。」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)

 

編集Hのバッグ。手が痺れると、数分も持ち続けられなくなる。

 

 

21:00(3時間30分経過)

平均よりも歩くのが早い編集H(私)。20㎞の道のりを歩き無事に帰宅。

ハーフマラソン経験もあるため「20キロくらい、いけるだろ」と思っていたのですが、
夜道を通勤着(スーツ+革靴+手提げバッグ)で歩くのとでは、まったく別物でした。
足の痛みで、明日(翌日は木曜日)は出勤できないかもしれません。

 

〇途中経過
編集H(20km/20km【所要時間3:27】)「無事到着! 11月下旬というのに、暑くて、喉が渇いた!」
編集K(10.3km/10.3km【所要時間2:10】)
開発T(15.5km/18.5km)「さっきから右足の裏に違和感が……気づかなかったことにします! この辺は既知の道なので、ちょっとテンション下がってます。」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)

 

思わぬ怪我もありえます。緊急時の駆け込み先もチェック。

 

 

21:30(4時間00分経過)

残るは1名。講座開発担当のTです。

彼の場合、自宅の1㎞前あたりで多摩川超えをするのですが、被災時は橋の崩落により迂回する可能性もあります。
「せっかくだから迂回ルート(+5㎞)を試してみたら?」と勧めたのですが、残念ながら断られました。

 

〇途中経過
編集H(20km/20km【所要時間3:27】)
編集K(10.3km/10.3km【所要時間2:10】)
開発T(17.9km/18.5km)「川の上を渡る風が、とても心地よかったです。あと少し!」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)

 

こういう道路は、 本番でどのような状況になるのでしょうか?

 

 

21:35(4時間05分経過)全員到着!

麹町を出発してから4時間5分。開発Tが到着し、無事に全員帰宅です。
実際の被災時は、道路混雑や悪天候、ストレスなど、より困難な条件が伴いますが、
「一度歩いて帰ったことがある」という経験は、不安軽減の一助にはなるだろうと実感しました。

 

〇途中経過
編集H(20km/20km【所要時間3:27】)
編集K(10.3km/10.3km【所要時間2:10】)
開発T(18.5km/18.5km【所要時間4:05】)「着いたー! やったー!」
有志A(7.7km/7.7km【所要時間1:43】)

 

 

(振り返り)徒歩帰宅のポイント

3つの観点から、参加者が体感したポイントをまとめました。

以下、みなさまのご参考になりますと幸いです。備えあれば憂いなしです。

 

 

▼日頃から準備しておきたいこと

 

・スマホ地図に頼らない方向感覚

スマホ見ながら歩くのでは、ペースが崩れ、ストレスにもなる。また、地図アプリ等は使えず、想定ルートが使えない状況も考えられる。

参加者全員が痛感。試してみたからこそ、重要性を実感できたポイントです。普段の移動時から、スマホ地図に頼らない、方角や現在地を確認するなど、意識的にトレーニングしておきましょう!

 

スマホばかり見ていると、こういうものを見落とします。

 

 

・「一度歩いて帰った」という安心感

道中で感じる「歩き続けられるか?」という不安や「道に迷った」というストレスは、ペースを乱したり、精神的な疲れを増やす原因となる。

 

・バイパスルートの検討

幹線道路ルートはわかりやすいが、有事の際、道路の状況はどうなっているか。歩行者の混雑はもとより、緊急車両優先で通れないこともあり得る。事前に人込みが予想されるルートを回避できる新ルート開拓は大切。

 

 

▼徒歩帰宅時の必需品

 

・スニーカー

革靴やパンプスでは負担が大きい。靴擦れやマメの原因となると同時に、歩く速度も落ちる。革靴であったとしても、レザーソールではなくラバーソールのものを。スニーカーまではいかなくても、厚手の靴下を持っておく。

 

・ショルダーベルトorリュック

両手を使えるようにという目的もあるが、負担軽減のために。長時間、手持ちを続けるという経験は日常では少なく、予想以上に負担が大きい。

 

・マスク

大通りルートの場合は、渋滞している車の排気ガスで苦しくなる。呼吸が乱れると、疲れやすくなるし、気分が悪くなる原因にも。

 

 

▼移動中

 

・買い物・トイレは見つけたらすぐに

普段はどこでも目に付くのに、あってほしいときにコンビニが見当たらない。とくに、都心を離れると格段に数が減る。また、迂回路を通るとコンビニすら少ないので、水や軽食の取得手段は注意。

 

・準備運動と適度な休息

焦りは禁物。とくに長距離を歩く場合は、事前のストレッチや定期的な休息をとることで、疲労の溜まり方が軽減される。

 

・目印は目線の高さで

ビル群に入ると方向感覚がまったくわからなくなるし、高層建築も見えなくなる。「スカイツリーを目指して」などはやめて、目線の高さの目印を見つけておく。

 

 

 

 

今回、事前準備なしにチャレンジを行いましたが、もちろん基礎知識を身に着けておくに越したことはありません。

 

最後は、2019年新講座『今日からできる防災完全マニュアル』開発者の一言で締めさせていただきます。

 


 

本講座には、防災についての基本、10の災害(台風、大雨、洪水、土砂災害、氷雪害、噴火、地震、津波、竜巻、酷暑)についての具体的な備えなどのこと、避難所生活のことなどが網羅されています。

 

ですが、受講して知識を蓄えるだけでは防災につながりません。テキストでも触れていますが、正しい知識をもとに実践に移すことこそが必要です。今回のこの取り組みも、そのひとつと言えるでしょう。

 

会社から家までのルートを調べる、家から避難所までのルートを調べる、ハザードマップで会社/家の近所のことを知る、いざというときに備えていろいろなものを用意しておく…。

 

こうしたことを正しく行い、また、「その時」にも正しい行動をして自分の、家族の命を守るために、本講座をご活用いただけると嬉しいです。(開発T)

 


 

 

それでは、次のチャレンジ企画をご期待ください!

 

2018年12月6日 公開

 

 

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