敬語はむずかしい。間違いなく使いこなすには敬語の意味を知ること、そして相当の経験が必要です。
敬語上達のコツは、恐れずに使うことです。敬語を上手に使いこなしている人をマネること、大胆に使ってみること、失敗しても恐れず、何度でも挑戦することです。具体的な使い方は実例を参考にしてください。
例えば、先輩たちは「わたくしどもは、御社のことを・・・」などとごく自然に使っているはずです。それを大胆にマネるのです。
自分のことを「わたくしは、〇〇でごいます」と言ってみましょう。普段の「です・ます」から「ございます」へ切り替えてみるのです。これが敬語上達への近道です。
●基本的な敬称
自称: 私・私ども(「わたくし」を使い慣れてください)
自社: 私ども・当社・手前ども
相手: 〇〇様・〇〇さん・あなた・そちら様・お客様
相手会社: 御社・お宅様・お勤め先
他称: 〇〇工業様・〇〇商事さん・あの方
敬語には、使いこなすために知っておきたいいくつかの基本的なパターンがあります。
①言葉の頭に「お・ご」をつける美化語
・相手の物や動作に対する敬意を表すときに、「御社の、お車は、ご立派ですね」のように頭に「お・ご・御」をつけます。
・動物、外来語、公共物などには原則としてつけません。例:×おコーヒー、×お椅子
・自分の動作でも、「お電話差し上げます」のように相手にかかわる場合に「お・ご・御」をつけるケースがあります。
②尊敬語と謙譲語を使い分ける
尊敬語は、目上の人(相手)を持ち上げる丁寧な言葉づかいです。「係長、お読みになりましたか」「部長は、ご出張になりましたか」のように「お(ご)~になる」の基本形があります。
謙譲語は、自分・身内の人を下げて、相手を持ち上げる丁寧な言葉づかいで、いくつかの基本形があります。
・「お(ご)~する」=「お手伝い致します」「お持ちします」
・「お(ご)~いただく」=「お話いただけますか」「お約束くださいますか」
・「お(ご)~申し上げる」=「ご連絡申し上げる」
③語尾を言い換える丁寧語
「そのとおりだ」→「その通りです」→「その通りでございます」のように、語尾の「~だ」を丁寧に「です・ます」と言い換え、さらに「~ございます」と言い換えるとより丁寧な言い方になります。
④言い換えて敬意を表す敬語
「食べる」を「召し上がる」というように、言い換える尊敬語・謙譲語があります。覚えて使うことが大切です。
●言い換えて使う基本的な敬語
原型 | 尊敬語 | 謙譲語 |
行く | いらっしゃる・おいでになる | まいる・うかがう |
来る | お見えになる・おいでになる | まいる |
する | なさる・される | いたす |
いる | いらっしゃる・おいでになる | おる |
見る | ご覧になる | 拝見する |
聞く | お聞きになる | うかがう |
読む | お読みになる | 拝読する |
言う | おっしゃる | 申す・申し上げる |
知る | ご存じ | 存じ上げる |
思う | お思いになる | 存じる |
会う | お会いになる | お目にかかる |
尋ねる | お尋ねになる | うかがう |
分かる | お分かりになる | 承知する・かしこまる |
与える | くださる・賜る | 差し上げる |
もらう | お受け取りになる | ちょうだいする |
食べる | 召し上がる | いただく |
着る | お召しになる |
敬語は相手への敬意の表現です。積極的には、尊敬の気持ちで話すこと。少なくとも、相手に対して失礼な言い方をしないことです。失礼にならないためのコツが、最後を丁寧に言うことです。
例えば「ご提案いただきましたプランのことでございますが、私どもで読ませていただきましたところ、たいへんにご立派なお考えだと思いまして、つきましては、詳しくご相談いたしたいのですが」という表現があります。これで十分に丁寧に聞こえます。しかし、能率を求めるビジネス現場では、やや丁寧すぎます。最後だけ丁寧に言い換えると
「ご提案のプラン、拝読いたしました。一度詳細意をお伺いしたいと存じますが」
前半は謙譲語の「拝読」でまとめたので話が早く、後半を「お伺いしたい・存じます」と丁寧に締めているので、決して失礼ない方にはなりません。丁寧な言い方をスッキリとまとめて、失礼のないように最後だけ「です」を「ございます」とまとめます。