光の速さは宇宙で一番速く、具体的には1秒間に30万kmも進む速さで、地球を7周半も回ることができるものです。音は同じ波の一種ですが、空気という実体のあるものを動かさないといけないので、光のような速さでは伝わりません。
光の速さを「光速」と呼んだのと同様に、音の速さを「音速」と呼びます。音速は1秒間に約340 m進むくらいの速さで、光速の100万分の1しかありません。とはいえ時速に直せば約1,200 kmにもなるので、新幹線の最高速度よりも数倍速いです。飛行機の速さと比べても、飛行機の巡航速度が大体1,000 km/h以下なので、音速の方が速いのです。
音速が飛行機よりも速いという話をしましたが、それでも340 mを進むのに1秒くらいかかるので、速さが有限であること(瞬時に届くのではないということ)を日常でも感じることができます。空を飛んでいる飛行機の見える位置に比べて、飛行機が大気を割って進む音はかなり後の方から聞こえるでしょう。地上から飛行機が飛んでいる高さまでの距離は何kmもありますから、音が届くまでに数10秒くらいかかっているのです。
また打上花火の音もすぐ近くで見ていれば花火が開くのとほぼ同時に聞こえますが、300 mくらい離れた場所では花火の割れる「ドーン」という音は1秒遅れて聞こえます。これらの他、山に向かって叫んだときの「こだま」や、稲妻と雷鳴のずれなど、日常生活で音の速さが有限であることを感じたことがいくつもあると思います。
音速が秒速約340 mというのは空気中での話です。音は液体や固体の中でも伝わりますが、その場合の音の速さは空気のときと比べてどうなるでしょうか。答えを言う前に、音速がどうやって決まるかを考えてみましょう。
音は物質の密度の変化です。最初に与えた振動で密度の違いができても、そのままの状態に留まっていたら波として伝わりません。密度が濃い部分と薄い部分ができたときに、両方とも元に戻ろうとするから、波は伝わっていくのです。その復元力が強い方が、波は速く伝わります。簡単に言うと、“硬いものほど音速は速い”のです。ということは、気体、液体、固体の三態によって音速がどうなるか、想像できることでしょう。
硬さからわかるように気体が一番遅く、液体、固体の順に速くなっていきます。空気が秒速約340 mでしたが、水の中では秒速約1,500 mと4~5倍速くなります。さらに鉄の中では秒速約6,000 mとさらに4倍も速くなります。空気の中を伝わるのが一番速いような感覚を持ってしまいますが、実は壁や水中を伝わる音の方がずっと速いのです。
電磁波の振動数の中のある範囲だけが私たちの目で見ることができ、それを「可視光」と呼びました。同様に、音の振動数の中で私たちの耳で聞くことができる範囲を「可聴範囲」と呼びます。その範囲は約20 Hzから約20,000 Hzまでです。振動数が低い方が低音で、高い方が高音になります。
可視光の振動数が大体430 THz ~ 750 THzと、1秒間に数100兆回も振動していたのに比べると、可聴範囲の音の振動数はずっと低いです。音は実際に空気分子という質量のある実体を振動させているので、数100 THzなどというとんでもなく高い振動数は実現できないのです。
人間の可聴範囲が約20 Hzから約20,000 Hzまでといっても、実際にどこまでの音が聞こえるかには個人差があります。特に上限には差があり、20,000 Hzまで聞こえる人はまれで、16,000 Hzくらいまでが、みんなが聞こえる範囲だと言われています。歳をとると誰でも耳が遠くなりますが、高い振動数の音から聞こえなくなります。
電磁波の場合、可視光の外側に赤外線や紫外線という呼び名があったように、可聴域の外側の音にも名前が付いています。20 Hzよりも低い音波は「超低周波音」と呼ばれ、人間の耳で聞くことはできませんが、空気は振動しているので窓等がガタガタと揺れたり、身体にも不快な感じを与えたりすることがあります。
20,000 Hzよりも高い振動数の音波は「超音波」と呼ばれます。やはり人間の耳で聞くことはできませんが、イルカやこうもりはずっと高い振動数までの超音波を聞くことができます。また振動数と波長は反比例の関係にあるので、振動数が高いということは波長が短いということです。波長が短いと真っ直ぐ進む性質が出てきます。このことを利用して、超音波は水中での探知機(ソナー)や医療の分野でも活躍しています。