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vol.6 「スーパー爆買い」の裏話を聞く!(後編)

COLUMN

これだけの中国人観光客が殺到すると、「商品を荒らされた」「トイレを汚された」「他の買い物客から苦情が寄せられた」といったトラブルが起こりがちなのですが、「休憩コーナーで持参のカニを食べている方がいらっしゃいましたが(笑)、全体的にマナーがよい方が多く、ほとんどトラブルらしいトラブルはありませんでした」とのこと。
これは受け入れ側の努力が大きいと思います。

 

中国語による館内表示、通訳スタッフが一目で分かるようなユニフォームの着用(人数が足りず、通訳の奪い合いになったようですが)、一般客に対する事前告知、さらには国際交流センターや地元大学生の協力も得るなど、「チーム日吉津」といった感じで真摯に対応したことが成功の要因といえるでしょう。
店内のみならず、周辺道路にも迷惑がかからぬよう、100台のものバスの車列は、2ルートに分散してスムーズに誘導したそうです。

▲外国人観光客に人気の鳥取砂丘

わずか数時間の滞在ながら、売り上げは通常の約2・5倍を記録。努力と苦労が報われた結果といえますが、「(中国人が好む)赤い色の下着をたくさん用意しました」といった、こうした細かな戦略も重要なのです。
貴重な経験は必ず糧になります。「次回の『爆買い』ツアーはさらに期待できますね」と水を向けると、「詳細なデータを得たのは心強いのですが、中国側の制度が変わったので、どうでしょうか……」との微妙な答えが。
というのも、中国政府は2016年4月から、海外で購入した商品を持ち込む際の課税を強化する政策を打ち出したからです。
酒・化粧品は50%から60%、食品・カメラは10%から15%、衣類は20%から30%、高級時計については30%から60%に引き上げられました。また、年間の総額が2万元を超過すると、個人消費枠ではなく貿易枠とみなされ、さらに高い税率が適用されてしまうのです。
この政策は「寝耳に水」だったようで、空港で大混乱を引き起こしたとの報道もありました。日中関係が悪化の一途をたどるなか、「爆買い」つぶしの一環なのかもしれませんが、消費マインドの落ち込みは避けられないでしょう。

 

取材を終え、イオンモール日吉津店からは米子駅まで路線バスを利用したのですが、車窓に広がるのどかな風景を眺めていると、ここに100台ものバスを連ねて中国人観光客が押し寄せたとは、とても信じられませんでした。乗り合わせた地元の年輩女性に「当時のことを覚えていますか」と声をかけると、「それはもう、すごい騒ぎでした。買い物ではなく『見物』に行きましたよ」と笑っていました。

 

米子からの帰路、初めて鳥取砂丘へ行ってみました。ここもご多分に漏れず、目立つのはアジア系の外国人観光客ばかり。広大な砂丘と海という組み合わせは、中国にも東南アジアにもあまりないので、みなさん非常に満足されているようでした。

 

ところで、この鳥取砂丘、最近「スナホゲーム・解放区」を宣言し、話題となっています。全世界で大ブーとなっている「ポケモンGO」を、「歩きスマホ」の危険が少ない広大な砂丘で存分に楽しんでもらおうという試みです。「スナホ」というネーミングもいいですし、これは国内外問わず、かなりの集客効果を見込めるのではないでしょうか。そのうち、砂丘は外国人観光客と妖怪だらけ、という状況になるかもしれませんね。

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