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社員の意識を統一!滝のように目標や戦略が伝わるカスケードダウンとは?
カスケードダウンは、会社の目標や戦略を経営層から社員に浸透させるのに有効な方法の1つです。会社として安定的な成長を目指すには、社員一人ひとりの意識を統一する必要があります。しかし、経営層の理念や方針がうまく伝わらないことに課題を感じる企業は少なくありません。
当記事では、カスケードダウンの言葉の定義から具体的な実践例、成功させるポイントまでを解説します。カスケードダウンは会社の規模や事業内容を問わず応用できる理論なので、ぜひ参考にしてください。
カスケードダウンとは?
カスケードダウンとは、経営陣の作成した目標や戦略を細分化し、下層グループや個人に浸透させる組織改革の手法です。カスケードダウンでは、企業レベルの戦術が事業レベルの目的に該当するなど、各階層の目的・戦略・戦術を連動させます。
企業レベル | 事業レベル | 担当者レベル |
目的 | ||
戦略 | ||
戦術 | 目的 | |
戦略 | ||
戦術 | 目的 | |
戦略 | ||
戦術 |
カスケードダウンは英語の「cascade down(滝のように降りる)」が元になっていることから、まるで滝が流れるように経営層から社員に情報が伝達する様を指します。カスケードダウンが正常に行われれば、「経営方針を社員が理解していない」「目の前の仕事に必死で各部署の連携が取れていない」などの経営課題の解決につながるでしょう。
カスケードダウンの具体例|3段階の実行プロセス
カスケードダウンを導入する際には、「目的」「戦略」「戦術」の意味を正しく把握した上でそれぞれの内容を検討し、下層グループへ展開することが重要です。ビジネスにおけるカスケードダウンの概念については、森岡毅氏の著書「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」でも紹介されています。
目的・戦略・戦術の概要とカスケードダウンの進め方は、以下の通りです。
目的
カスケードダウンの最初のステップとして、経営陣は経営者の想いや企業理念を踏まえ、組織として長期的に達成を目指す「目的」を決定します。目的は、企業活動の基盤として機能し、さまざまな業務を進める際の指針としても活用されます。目的の設定後には、「経営方針や企業理念と相反する内容はないか」を確認しましょう。
経営陣が設定した目的は理由も併せ、従業員・株主・取引先など、すべてのステークホルダーへの説明が必要です。従業員に目的を説明することには、エンゲージメントやモチベーションの向上が期待できるというメリットがあります。従業員が目的を把握すると「自分の担当業務はなぜ必要か」「何に貢献しているか」を理解でき、より前向きな気持ちで働けるようになるでしょう。
戦略
「どのようなビジネスプランで目的を達成するか」が曖昧な状況では、下層グループや個人のやるべきことが曖昧になり、意識改革や行動変化につながりません。カスケードダウンの第2ステップでは、目的達成を目指すための長期的な行動計画にあたる「戦略」を立て、下層グループに共有します。
戦略は数値指標を含め、できる限り具体的な内容にします。たとえば、地球に優しい街づくりを目指すハウスメーカーのケースでは、「省エネ住宅の販売戸数で地域トップを実現する」などが戦略の候補と言えます。また、目的達成を目指すのに使用できる経営資源は有限です。戦略を立てる際には、経営資源の使い道や配分についても慎重に検討しましょう。
戦術
カスケードダウンの第3ステップでは、戦略を実行するための具体策にあたる「戦術」を検討します。たとえば、省エネ住宅の販売戸数で地域トップを目指す場合、「自社サイトで省エネ住宅の魅力を紹介する」「来店後のフォローを充実させる」などの施策が戦術にあたります。
カスケードダウンを効果的に実践するためには、以下の「4S」を満たす戦術を設定することが重要です。
Selective | 行うべきこと・しないことが明確に区分されている |
Sufficient | 実現に必要な経営資源が十分にある |
Sustainable | 中長期的に継続できる |
Synchronized | 自社の強みや特徴とマッチし、弱みをカバーできている |
戦術を設定した後には4Sに沿って内容を見直し、必要があれば修正した上で下層グループに共有しましょう。
カスケードダウンを成功させるポイント
海外には「Slack Technologies, LLC」など、カスケードダウンを取り入れた経営を実践した結果、成功している企業もあります。しかし、日本企業が海外の成功事例を模倣しても成功するとは限らず、自社に合う方法を検討することが重要です。
ここからは、カスケードダウンを成功させるためのポイントを説明します。
現実的かつ主体的な目標を設定する
カスケードダウンで決める目標は、努力によって達成できる現実的な内容を設定しましょう。高い目標は現実味がなく、有効に機能しにくい上、従業員のストレスになるリスクがあります。反対に低い目標を設定した場合には、モチベーションの低下につながる恐れがあります。
また、カスケードダウンで設定する目標は、各事業部や従業員の主体的な行動によって達成できる内容にする必要があります。市場の変化や季節的要因の後押しを受けて設定した目的は再現性がなく、従業員の達成感にもつながりません。主体的な目標を設定することには、従業員の当事者意識を引き出す狙いもあります。自分の努力によって結果が変化するからこそ、従業員は目標の達成に向けて前向きに努力することが可能です。
従業員の意見や達成状況を把握する
経営陣の設定した戦略や戦術を意識し、実際に行動する主体は従業員です。そのため、経営陣が戦略や戦術を検討する際は従業員の意見を考慮し、共感できる内容にする必要があります。従業員の意見を正しく聞き取るためには、日頃から十分なコミュニケーション機会を持つことが重要です。直接コミュニケーションを取れない場合は、アンケート調査によって率直な意見を把握するのもよいでしょう。
また、設定した戦略や戦術が有効に機能しているかを把握するためには、定期的な達成状況の確認が欠かせません。経営層や上層部は状況報告をただ聞くだけでなく、戦略や戦術が業務として実践されているか確認するようにしましょう。戦略や戦術の問題が発覚した場合には、よりよい内容へブラッシュアップする必要があります。
定性目標の評価方法を事前に定める
カスケードダウンで設定する目標には、達成に向けたプロセスに注目して設定する「定性目標」と、数値で成果を把握できる「定量目標」の2種類があります。カスケードダウンの戦略や戦術で定性目標を設定する場合には、公平な評価方法を事前に決めておきましょう。
たとえば、「明るく元気に接客する」と目標を設定した場合には、接客満足度調査を実施して、取り組み結果を評価する方法が挙げられます。顧客満足度調査では「接客担当者の印象」「説明の分かりやすさ」などを点数化してもらうと、定性目標の達成度を数値によって評価できます。
定性目標の評価は、定量目標の評価に比べて結果に対する従業員の不満の出やすい、難易度の高い評価方法です。個人の主観ではなく事実に対する評価項目を設定する、複数人で評価を行う多面評価を取り入れるなど、客観的かつ平等な評価方法を意識しましょう。
カスケードダウンとブレイクダウンの違い
カスケードダウンとブレイクダウンはいずれも経営陣の意向を下層グループに共有して実現を目指す手法にあたるものの、意思伝達ツリーの構造やアプローチ方法が異なります。カスケードダウンとブレイクダウンの主な違いは、下表の通りです。
カスケードダウン | ブレイクダウン | |
意思伝達ツリー | 3層 | 2層 |
現場の行動の決定者 | 従業員 | 上層部 |
アプローチの全体像 | 意思伝達ツリーの各階層で「目的・戦略・戦術」を検討し、組織目標の達成を目指す | 経営陣が目標達成手段を明確化し、細部まで指示して実現を目指す |
ブレイクダウンでは、大きな枠組みで決定した事項を噛み砕き、従業員が担当する作業内容の細かな点も設定します。
まとめ
カスケードダウンは、企業レベル・事業レベル・担当者レベルで、それぞれ目標・戦略・戦術を策定し、会社の上層部から下層部に情報を共有する方法です。目標・戦略・戦術は上下関係の垣根を越えて連動しているため、効果的に社員の意識を統一することが可能です。
カスケードダウンを実施する際は、従業員の意見を聞きながら、現実的かつ主体的な目標を設定することが重要です。定量目標はもちろん、定性目標の評価方法も決めておき、目標達成に向けた戦略・戦術を実行できているか確認しましょう。
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