前回、手帳は仕事とプライベートの区別をなくすほうが、自分の生活、人生を丸ごと投影することができるため、生活を豊かにできるという点についてお話しました。
今回も引き続き、生活を豊かにするための手帳の使い方についてお話したいと思います。
生活のなかにはさまざまなデータがあります。とくに健康管理は、日々のデータが基本となります。たとえば、体温・血圧・体重・体脂肪。フィットネスクラブに行くと、血圧計や体重計が備えてあり、運動の前後に計測することが推奨されています。
とくに健康に心配がある人や本格的にダイエットに取り組んでいる人、また、アスリートとして厳しい自己管理が求められたりする人以外は、あえてこうしたデータを毎日記録することもないでしょうが、たとえば毎月1日と15日は測定の日と決めて、体温・血圧・体重・体脂肪などを記録し、合わせてその時の体調や気分なども書いておくと、おもしろいことがわかるかもしれません。
同様に、起床・就寝時間、気分の変化、飲んだお酒の量なども、気になる人は記録してみましょう。風邪をひいたり、腰痛になったり、といったことも症状の変化を書き留めておくと、パターンがわかって役立つかもしれません。睡眠時間や酒量との相関関係が見えてくるかもしれません。健康診断の結果を縮小コピーして挟み込んでおくのもいいでしょう。こうなると、立派な健康手帳となります。
また、日々のデータ管理の代表的なものとしては、家計簿があります。家計簿というと、所帯じみたイメージがありますが、お金を管理することで目標を達成できる、ということもあるはずです。自己啓発のための学費を貯めるなら、計画的に収支を管理していかなければなりません。マイホーム資金についても同様です。
たとえば、1本150円のペットボトル飲料を1日に2本買うとすると、年間で約10万円にもなります。これを20年間続ければ200万円です。200万円あったら、あなたは自分の目標のために使うのとペットボトル飲料を買うのとどちらに使うでしょうか。日々のちょっとした出費も、積み重なればバカにできないのです。
もともと手帳は日々の記録をつけるのに適していますが、緻密かつ厳密に家計簿をつけようとしたら、やはり専用のリフィルを使った方が便利でしょう。やりたいことのためにどうすれば資金を捻出できるのかというのではなく、だいたい何に使ったのかわかればいい、無駄遣いが抑えられればいいというなら、日々のページにメモする程度でも十分に役立ちます。それは、その日に何をしたか、何を食べたか、といった行動の記録代わり、記憶を呼び戻すキーワードにもなります。
同じ意味で、物の値段やタクシーの行列の人数など、ちょっとした数字を記録しておくのも、あとで思わぬ役に立つことがあります。
いつも持ち歩く手帳だから、気になる風景、気になるものがあった時には、すぐに取り出せます。これをスケッチブックとして使う人もいます。
たとえば、手帳を開いてほとんど書き込みのない過去のページ、そこに罫線やフォーマットを無視して大胆に書いていくのもひとつの方法です。カラーで色を付ければ、まるで挿絵のようにも見えます。手帳のサイズが小さいのもいいところです。スペースが小さいので、絵がスペースに負けないのです。たとえうまくなくてもそれなりにまとまって見えますし、大胆に描けばその大胆さが強調されてアート風になります。ちょっとした空き時間の時間つぶしにいたずら書きをするつもりで描いたら、思いのほか上手に見えたということもあるようです。
上手な人はもちろん、下手な人でもそれなりに見えてしまうのが手帳スケッチなのです。スケッチと行かなくても、喫茶店のテーブルでいたずら書きするのもいいかもしれません。
仕事のスケジュールの書いてある手帳にいたずら書きなんて、と思う人もいるかもしれませんが、半分ぼんやりしながら何気なく指を動かしているうちに、思わぬ発想が生まれることもないわけではないでしょう。最近は筆記具を手にして細かな作業をすることが少なくなりましたから、脳を刺激する行為としても、意味があります。
趣味的でアートの香りのするスケッチではなく、アイデアを生み出すために絵を描いてみるのも非常に有効です。そんなアイデアスケッチを日常的に行う職種の人は、大判のノートを使うかもしれませんが、専門職でなければ小さな手帳でも十分です。
下手でも何でも絵にして、頭の中からまず出してみることに意味があるのです。その時頭の中にあるビジュアルイメージを、言葉だけで書き出しておくと、あとで再現できないことが往々にしてあります。イメージははかなくもろいもの。ならばそれをダイレクトに書き留めておくのです。
うまく書けなくてどこか違う、という部分は、矢印を引っ張って、言葉で説明しておけばいいのです。手帳のページをめくって、ところどころにアイデアスケッチがあるのも楽しいものです。自分でもどうしてこんなものを描いたんだろうと思えるようなものがあると、なお面白いでしょう。
用紙は一見、白紙がよさそうですが、それよりもいろいろ線が引かれていたりした方が、手帳らしくていい感じです。薄い方眼も意外に描きやすく、うまく見えます。