手帳をうまく使うとどんなことが変わるのでしょうか。たとえば、あなたが今からちょうど1ヵ月前、どんなことをして1日を過ごしたか思い出してみてください。
よほど特別な1日でない限り、すぐにその日のことは思い出せないでしょう。しかし、あなたが手帳や日記をつけているなら、その日のページを開いてみてください。SNSをやっているなら、その日の投稿を表示してみましょう。何かが書かれていれば、それをきっかけに書かれていないことまで記憶がよみがえってくるのではないでしょうか。たとえ文章になっていなくても、たったひとことの手帳の記述からさまざまなことを、次々に思い出せるでしょう。
もし何の記録もなく、思い出すきっかけもなければ、極端な話、その日は何もなかったのと同じです。その日に何をして、何を考え、何を感じたのか――その積み重ねこそが人生であり、あなた自身であるわけです。行動の記録でも、アイデアのひとことでも、何かに対する感想のひとことでも、記憶を読み戻すキーワードになります。手帳をうまく使う人は、まめに過去のページを開いて、自分の行動や考えを反芻し、それを引き継いでさらに深めていけるのです。つまり、意識的に思考を育てるベースができることになります。
そして手帳の場合は、公開しているブログやSNSの投稿のように、人に読まれることを意識して話題を選択したり、文章構成に配慮したりする必要はありません。純粋に自分のための記録ですから、プライベートなことも具体的な固有名詞も制約なしです。文章であってもいいですし、箇条書きでも、単語だけでも、またその日によって違ってもかまわないわけです。
もちろん、これから起こることに対しても手帳は大きな力を発揮します。スケジュールの調整とタスク(ToDo=やるべきこと)の管理です。その場しのぎでスケジュールをこなし、追われるようにタスク処理をしていると、遅かれ早かれ仕事の処理は破綻してしまいます。
そこで、手帳でスケジュールとタスクの管理を一元的に行うのです。うまく活用すれば、スケジュールを中・長期的視野でも把握できるようになり、それに連動してタスクの重要度と緊急度、優先度も明確に判断できるようになります。つまり、日々の行動をスムーズかつ効率的にできるわけです。
このようなスケジュールとタスクは「やらなければならないこと=MUST」に属する事柄です。その先に見えてくるのが「やりたいこと=WILL」に関する事柄、すなわち目標や夢となります。手帳をうまく活用する人は、常に目標や夢を意識し、それを実現するために、一日一日を着実に積み重ねているのです。
これは遠い将来の目標や夢を達成するうえでも同じことがいえます。
日々の仕事に追われていると、なかなか先のことを見る余裕ができません。目標を見失うというのは、今日の一日と将来が結びつかない状態です。これを言い換えれば、将来の目標は、日々の仕事の中に生きていなければならないということになります。
手帳には予定や記録など、日々の変化がどんどん蓄積されていきます。その変化を自分の成長と位置づけることで、ひとつの道筋が見えてきます。その道筋をどこに導いていくのか、日々の動きが見えていれば、それを微調整することができるわけです。
この場合、中短期的目標の管理のように最初から目標を設定するやり方もありますし、日々の変化を見つめるなかで少しずつ目標を練り上げていくやり方もあります。いずれにしても、手帳の中で目標や夢を強く意識することにより、その実現に向けての足跡が日々刻まれていくことになります。
終身雇用制が崩れた今、自分自身で将来のキャリアプランを構築する必要性も急速に高まっています。そこには長期的な目標と、それを実現するための計画、計画を日々実行する行動が欠かせません。いつも自分の目標が胸ポケットの中に、あるいは鞄の中にある、という気持ちも自分を支える大きな力になります。「手帳で人生を切り開いた」ということも、決して大げさな話ではないのです。