かつてはビジネスとプライベートははっきりと分かれていました。ビジネス用とプライベート用の手帳を使い分けている人も少なくありませんでした。しかし、そんな時代であっても、使い分けはなかなか難しい部分があったのです。たとえば、アフターファイブの異業種交流パーティーはビジネスかプライベートか。2次会で流れたバーで趣味の話で盛り上がっていたら、思わずビジネスの話になった、その記録はどちらの手帳にメモするべきか。
まして現在は、ますますビジネスとプライベートの境界がなくなっています。その象徴ともいえるのがパソコンやスマートフォンです。インターネットの世界にはビジネスもプライベートもなく、仕事の情報もレジャーの情報も検索します。メールにしても同じです。ビジネス用とプライベート用のメールアドレスを使い分けている人もいますが、扱うのは同じメールソフトです。アカウントが分かれているかもしれませんが、一緒であってもとくに不都合はありません。
情報はビジネスもプライベートもなく行き交っています。今のビジネスパーソンは、どんな情報でもビジネスに活用できることが求められています。趣味の本や映画からビジネスのヒントを得ることも珍しくありません。それは「遊びも仕事に役立つ」のではなく、今や情報はあまねく並列して存在しているということです。
もし、手帳が使う人の分身だとしたら、ビジネスもプライベートもありません。そこには1日24時間という時間、ひとりの人間の行動記録があるだけです。
ですから、手帳は1冊。自分に関するすべてをそこにまとめるのが正解です。そうすれば自分の生活、人生を丸ごと投影することができます。
そもそも、手帳の使い方でつまずくのは、何をどこに書いていいのかわからない、ということです。きちんとルールにのっとって細かく管理しなければならない、という固定観念がその背後にはあるのでしょうが、何をどう書いてもいい、というのが基本です。書き方で迷うのであれば、とにかく何でも書いておいた方がいいのです。
書いている時には、あとでどう役立つかはわかりません。何か引っかかりがあるから書く、それで十分です。分類や選別をあまり細かくすると、結局は全体の見通しが悪くなってしまいます。ビジネスもプライベートもゴッタ煮でとにかく書く。混沌としているからおもしろい、ととらえた方が、深みのある手帳になるのではないでしょうか。
たとえば、新聞・雑誌の書評・映画評・音楽評、広告、またインターネットでブログなどを見ていると、気になる本や映画、音楽、さらに美術展などのイベントが見つかることがあります。そんな時は、すかさず手帳に「タイトル/著者名/出版社名/価格」などの情報を書き込みます。
その時に「おもしろそうだ」と思っても、そう思っただけでは忘れてしまうからです。うろ覚えで書店に行ったら、似たようなタイトルの本が並んでいて、さてどれだったか、ということにもなりかねません。
このような情報は、ノート(メモ)ページにリストアップしておくと便利です。いわば買い物リスト(鑑賞予定リスト)ということになります。購入した時点、鑑賞した時点で、その項目を横線で消せば、未購入・未鑑賞のものだけが残る形になります。ただし、横線は書かれていたものを判読できる程度に消しましょう。これは二度買いを防止するためです。
また、たとえば新聞の書評だったら、該当部分をびりびりとちぎって、手帳に挟み込んだり貼り込んだりするのもいいでしょう。タイトルなどを書き写すよりも、スピーディーかもしれません。ただし、リストとして残ることはありません。
さらに重要なのは、こうして読んだ本、観た映画、聴いたCD、行った展覧会などについて、短いコメントを書くことです。ほんのひとことでもかまいませんし、本ならば重要な部分(感銘した部分)の抜き書きでもいいでしょう。
これをやるとやらないでは大違いです。ひとこと・短文とはいえ、何かを書くためには内容を反芻して考えます。さらにそれをいつでも読み返すことによって、自分の中に定着させることができるのです。体験しっぱなしではなく、身につく体験となるわけです。
本の抜粋、映画の心に残ったセリフの抜粋などは、さらに強力です。何度も読み返すことによって、次第に自分のものとなり、場合によっては、会話している時にふっと口に出たりするかもしれません。
こうした感想や抜き書きは、独立したノート(メモ)ページに書くのもいいでしょうし、読了日・鑑賞した日のノート(メモ)欄でもいいでしょう。独立したページだとまとめて読むことができますし、その日のページだと、その日の出来事との結びつきが強くなります。どちらの方がピンと来るかは、実際に試してみてください。ただし、手帳とは別の専用ノートをつくるのではなく、手帳の中に入っていることが重要なので、これはおさえておきましょう。