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ノンバーバルコミュニケーションとは?具体例から重要性や効果を解説
ビジネスシーンで日々行われているコミュニケーションには、言葉だけでなく表情や身振り手振り、声のトーンなど、多くの非言語的要素が含まれています。これらの「ノンバーバルコミュニケーション」は、相手との意思疎通を深めるために欠かせない重要な手段です。
この記事では、ノンバーバルコミュニケーションの具体的な例や重要性、ビジネスシーンでの活用方法について詳しく解説します。どのような形でノンバーバルコミュニケーションを役立てられるのか、具体例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
ノンバーバルコミュニケーションとは
ノンバーバルコミュニケーションとは、言語以外の方法で行うコミュニケーション手法のことです。「非言語コミュニケーション」とも呼ばれます。
バーバル(verbal)は「言葉の」「言葉から成る」という意味の英単語で、言語を使ったコミュニケーションは「バーバルコミュニケーション」と呼びます。反対に言語以外を使うコミュニケーションは、すべてノンバーバルコミュニケーションです。
ノンバーバルコミュニケーションの例としては、手を振る・視線をそらす・握手するなどが挙げられます。
ノンバーバルコミュニケーションは動物にも存在する
ノンバーバルコミュニケーションは人類が言語を発達させる以前から使われており、動物にも存在します。言葉によるコミュニケーションが、人間が進化の過程で身につけた後天的な能力であるとすれば、ノンバーバルコミュニケーションは本能に備えられた原始的なコミュニケーション能力と言えるでしょう。
例として犬は視線や身体接触、ニオイで他の犬とコミュニケーションを取ります。視線を合わせて喧嘩をしたり、相手を舌で舐めて愛情を示したりといった光景を見たことがある方も多いでしょう。
また、計算ができる馬として知られた「賢い馬ハンス」のように、馬も人間の感情変化を感じ取れる動物です。賢い馬ハンスは1900年ごろにドイツで有名になった「天才的な馬」で、簡単な計算にひづめを打ち付ける数で答えたり、選択肢の中からクイズの答えを選んだりできました。しかし、実際のところハンスは計算したり人間の文字を読んだりしていたわけではなく、人間の感情の動きを感じ取り、相手が喜びそうな答えを出していたことが分かっています。
ノンバーバルコミュニケーションは原始的なコミュニケーションであり、人間に対しても有効です。表情やボディランゲージなどのノンバーバルコミュニケーションは言葉以上に相手に伝わりやすく、適切な使い方をすることで、人間の本能に訴えかけて相手を動かす力があります。
ノンバーバルコミュニケーションとメラビアンの法則
コミュニケーションの上でノンバーバルコミュニケーションが重要な役割を担っていることは、メラビアンの法則から理解できます。メラビアンの法則とは、アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが行った実験の結果にもとづく法則です。
メラビアンは、人間が好意・嫌悪の感情を決定するときに、言語以外の情報がどのくらい影響するかを調べる実験を行いました。実験の結果、言語情報の影響は7%だったのに対し、声などの聴覚情報による影響は38%、見た目などの視覚情報による影響は55%という割合になりました。
メラビアンの法則をもとにすると、言語情報が人間の感情に与える影響は7%である一方、聴覚・視覚などの非言語情報の影響は93%と非常に大きいことが分かります。
メラビアンの法則は限定的な条件での実験にもとづいており、対人関係全般において非言語情報が93%もの影響を持つとは限りません。
しかし、非言語情報の影響が大きいという1つの証拠となっており、ノンバーバルコミュニケーションの重要性を示していると言えます。
ノンバーバルコミュニケーションの重要性・効果
メラビアンの法則から分かるように、コミュニケーションを取るときにはノンバーバルコミュニケーションの重要性を意識することが大切です。一方で、ビジネスチャットやメールなどの文字媒体のコミュニケーションが増えた現在、ビジネスの場でのノンバーバルコミュニケーションの機会が減っています。
以下では、ノンバーバルコミュニケーションを意識することでどのような効果を得られるかを解説します。また、テレワークなどでノンバーバルコミュニケーションが減った現在のビジネスシーンで、ノンバーバルコミュニケーションをどのように補えばよいかについても伝ええます。
言葉だけで伝わりにくい部分を補完できる
人とのやり取りにノンバーバルコミュニケーションを使うことで、言葉だけでは伝わりにくい部分を補完できます。
自分の考えや感情を相手に伝えたいとき、言葉だけで伝えても、相手に正確に伝えられるとは限りません。
例として、感謝の気持ちを「ありがとうございました」と言葉で表すだけでは、相手が社交辞令と受け取る可能性があります。丁寧にお辞儀をしたり、明るく快活に発声したりすれば、喜びや感謝の気持ちをより率直に伝えられるでしょう。
ノンバーバルコミュニケーションは、メールやビジネスチャットのやり取りが多くなるテレワークで失われやすい傾向があります。
デジタルなやり取りでもノンバーバルコミュニケーションを行える方法が、若い世代がよく使用する絵文字です。絵文字を使うと、言葉だけでは伝えられない気持ちを絵(アイコン)で表現できます。
実際に、コミュニケーションサービスを提供しているDiscordによる2022年の調査では、日本人の98%がデジタルなやり取りで絵文字を使っているという結果が出ています。絵文字利用者の83%は絵文字によって「自分の感情を表現できる」と伝えており、特に18~34歳の世代は約46%が絵文字を「いつも」あるいは「よく」使っているのが特徴です。
※出典:discord「Talk Emoji To Me: The Science Behind Why We Love These Tiny Pictures」
今後、ビジネスチャットなどにおいても絵文字を取り入れることで、文字媒体のコミュニケーションで失われやすいノンバーバルコミュニケーションを保管できるでしょう。
相手の距離を縮められる
ノンバーバルコミュニケーションには、相手との距離を縮められる効果があります。視覚情報・聴覚情報は言葉よりも多くの情報を含んでいて、相手に安心感や信頼感を与えるときに役立つためです。
例として人付き合いがうまい人は、相手の話を聞くときに軽く笑顔を作ったり話の途中でうなずいたりします。「機嫌よく聞いている」と示すことで相手は安心感を覚えるため、話しやすい雰囲気を作ることが可能です。
テレワークでは相手との物理的な距離があり、心理的な距離を縮める重要性がより高くなります。メール・チャットだけでなく、電話やビデオ通話も利用して、相手と積極的にノンバーバルコミュニケーションを行いましょう。
相手の心情を理解する
ノンバーバルコミュニケーションの重要性を知っていると、相手の心情を理解することもできるようになります。ノンバーバルコミュニケーションは無意識な動作にも表れるものであり、相手をよく観察していれば心情の理解につながるためです。
例として、相手が伏し目がちにしているときは、落ち込んでいて元気がないことを感じ取れます。反対に明るく笑っていれば、何かいいことがあったと分かるでしょう。
テレワークではノンバーバルコミュニケーションが失われやすいため、相手の心情を理解することも難しくなります。テレビ会議システムなどを導入して、ノンバーバルコミュニケーションで相互に心情を理解できる環境を構築することが必要です。
ノンバーバルコミュニケーションの種類と具体例
言語以外の方法で行うノンバーバルコミュニケーションはさまざまな種類があり、主要な方法としては下記の7種類があります。
種類 | 意味 | 具体例 |
周辺言語 | 声のトーンや抑揚、大きさ | ・とげとげしい言い方で相手を褒めて皮肉る ・ハキハキ挨拶する |
プロクセミクス | 相手との距離の取り方 | ・初対面の相手と距離を取る ・恋人同士が肩を並べて歩く |
ジェスチャー | 身振り手振りや視線の動き、表情の変化など | ・大きく手を動かしながら将来の夢を話す ・首を縦に振って相手への同意を示す | 身体特徴 | 容貌や身長などの身体的な特徴 | ・寝ぐせがある人が不真面目に見える ・背が高い人から威圧感を受ける |
接触行動 | 自分や相手の身体に触れる行為 | ・不安を感じたときに唇を手で触る ・親しくしたい相手と握手する |
人工物の使用 | 服装やアクセサリーなどの人工物が与える印象 | ・就職面接でフォーマルなスーツを着る ・デート前に目元をはっきり見せるメイクをする |
環境 | 部屋の内装や明るさ、温度・湿度などの環境要因 | ・穏やかな音楽を流して、落ち着ける空間を作る ・発言する人物にスポットライトを当てる |
どの種類のノンバーバルコミュニケーションが使用できるかは、コミュニケーションの流れや相手によって変わります。ノンバーバルコミュニケーションの主要な種類と使い方を押さえて、必要なシーンで活用できるようにしましょう。
ノンバーバルコミュニケーションが活躍するビジネスシーン
ノンバーバルコミュニケーションは日常生活はもちろん、業務や採用面接、人事評価などのビジネスにおいても活用できるコミュニケーション方法です。
ビジネスシーンにおけるノンバーバルコミュニケーションは、以下のような場面で活躍します。
面接・面談
就職活動における面接や、上司・部下の面談などを行うときにノンバーバルコミュニケーションは役立ちます。
面接・面談は基本的に少人数で行うケースが多く、ときには1on1ミーティングのように相手と向き合うこともあります。少人数でのやり取りではお互いの表情や仕草がよく見えるため、ノンバーバルコミュニケーションが効果的です。
面接・面談では、下記のようなノンバーバルコミュニケーションがよく使われています。
・話すときに相手の目を見る ・身だしなみを整えて、真面目な印象を与える ・表情を笑顔にして、親近感を与える ・相手が話しているときに相槌を打つ |
面接を実施する面接官や、部下の話を聞く上司側もノンバーバルコミュニケーションを意識することが重要です。ノンバーバルコミュニケーションを活用すると相手の緊張や不安を解消して、和やかな雰囲気で話し合いができます。
プレゼンテーションやスピーチ
プレゼンテーションやスピーチでは、主に発言者がノンバーバルコミュニケーションを活用します。
会場の聴衆は発言者の一挙手一投足に注目するため、下記のようなノンバーバルコミュニケーションで狙った効果を引き出しましょう。
・会場を見渡して、聴衆に向かって話しかけていることを印象付ける ・話すスピードはゆっくりと、声に抑揚をつけて話す ・商品の魅力を説明するときに、手を大きく動かす ・重要性を印象付けたいときは聴衆に近づく |
会場が広い場合は、ノンバーバルコミュニケーションで行う仕草を誇張しましょう。「声のトーンを普段より上げる」「両手を大きく広げる」といった仕草を多用すると、会場の後方にいる聴衆にもノンバーバルコミュニケーションの効果を伝えられます。
研修
研修では、研修担当者と受講者の双方がノンバーバルコミュニケーションを活用できます。
研修担当者は研修内容のポイントを強調したり、受講者の反応を見たりするときにノンバーバルコミュニケーションを使いましょう。
一方で受講者は、グループワークで意見を伝えるときにノンバーバルコミュニケーションが有効です。
研修では、下記のようなノンバーバルコミュニケーションを使用します。
・ホワイトボードに書いた重要なポイントを指で示す ・受講者を見渡し、表情やうなずきなどから理解できているかを感じ取る ・受講者は意見を言うとき、要点をハキハキと伝える ・グループワークでは笑顔と快活な振る舞いを意識して、他の受講者との距離を縮める |
近年はインターネット環境を利用するオンライン研修も増えています。オンライン研修におけるノンバーバルコミュニケーションの例は「目線をカメラに向ける」「絵文字やWeb背景で感情を表現する」などです。
ノンバーバルコミュニケーションを取り入れるポイント
ノンバーバルコミュニケーションを普段から意識的に活用していないと、いきなり使おうとしてもうまくいかないことがあります。
ノンバーバルコミュニケーションを取り入れるときは、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
相手のペースに合わせて落ち着いて話す
相手と会話をするときは、相手のペースに合わせて落ち着いて話しましょう。
話すペースが速いと相手が話を聞き取れなくなり、反対にペースが遅いと相手をイライラさせる可能性があります。相手のペースに合わせることで、相手にとって聞き取りやすい速さで話せ、「内容を伝えたい」という意図が伝わりやすくなります。
重要なことを話すときは、話の間を意識することも大切です。
例として商品を説明する場合、商品の名前を伝えてから、ワンテンポの間をあけて商品の特徴を説明します。作った間で相手の注意を引きつつ、相手の反応や理解度も確認できるため、相手の記憶に残りやすい会話ができるでしょう。
相手に目を合わせる
相手とコミュニケーションを取るときは、基本的に相手に目を合わせる必要があります。メラビアンの法則で説明したように、コミュニケーションを取る上で視覚情報の影響は大きく、特に目は本人の感情をよく表すためです。
例えば会話をするときに目を逸らすと、目を逸らす動きを相手に見られます。「目を合わせて話せない理由がある」と相手は考えて、不信感を抱く可能性があるでしょう。
目を合わせれば、「目の前の相手に注意を向けている」「自信を持っている」と相手に示すことが可能です。同時に姿勢をピンと正して、明るく快活な発声を意識すれば、良好な人間関係を築きやすくなります。
相手の話に合わせてジェスチャーをする
相手の話に合わせてジェスチャーをすると、相手の話をきちんと聞いていることを示せます。
相手が説明した内容に「うん」「なるほど」と相槌を打ったり、軽くうなずいたりするとよいでしょう。重要な話を聞いてメモを取ることも、「相手の話を聞いている」と示せるジェスチャーです。
ただし、相槌のタイミングが適切ではないと、相手は「自分の話をきちんと聞いていないのでは」と疑念を持ちます。ジェスチャーは相手の話に合わせたタイミングで、話を聞いていると伝えられるように大きく行うことが大切です。
お互いの距離感を適度に保つ
ノンバーバルコミュニケーションの1種である「プロクセミクス」は、相手との距離の取り方でお互いの関係性や自分の感情を表します。
距離感は人それぞれ異なり、自分と相手とでは距離の受け止め方も違うことが普通であるため、お互いの距離感を適度に保つことが大切です。距離感は人それぞれ異なり、自分と相手とでは距離の受け止め方も違うことが普通であるため、お互いの距離感を適度に保つことが大切です。
たとえ親しい相手であっても、急に顔を近づけたり、ボディタッチをしたりすると嫌がられる可能性があります。反対に声を大きくしないと会話できない距離でいると、「自分とかかわりたくないと考えているのでは」と感じさせることもあるでしょう。
人は誰にでも、他人が入ってくると不快感を覚える「パーソナルスペース」という空間があります。相手と親しくなるにはなるべく近い距離を取りつつ、相手のパーソナルスペースには踏み込まないように注意してください。
身だしなみを整える
髪型や化粧、服装などの外見は、相手が感じ取る印象に影響する視覚的要素です。「かかわりを持ちたい相手」と考えてもらうには、身だしなみを整えて清潔感を出すことが欠かせません。
例として髪はきれいに整えて、服にはシワができないようにアイロンをかけた衣類を着ます。化粧やアクセサリーも適切なものを選ぶことで、清潔感や信頼感を与えることができます。
身だしなみを整えるときのポイントは、TPOに合わせることです。
ビジネスシーンであればフォーマルな服装を選び、冠婚葬祭であればそれぞれに合った服装を選ぶように、どのような身だしなみが適切かはTPOで異なります。「自分がどのように見られたいか」「相手に不快さを感じさせないか」も考慮して、TPOに合った身だしなみをしましょう。
ノンバーバルコミュニケーションの注意点
最後に、ノンバーバルコミュニケーションを活用する際の注意点を説明します。
・相手に合わせて活用する ノンバーバルコミュニケーションは、相手との関係性や相手の理解度に合わせて活用することが大切です。 例えば同僚同士の場合と、上司・部下の場合とでは、会話のときに行うジェスチャーや距離感の取り方に違いがあります。相手のことを無視したノンバーバルコミュニケーションは逆効果になる可能性があるため、注意してください。 ・伝えたいことを明確にする ノンバーバルコミュニケーションは単体では意図が伝わりにくく、使い方によっては誤解につながるケースも少なくありません。 伝えたいことを言葉に出しながらジェスチャーも織り交ぜるといったように、言語コミュニケーションを補強する使い方をするとよいでしょう。 ・互いの文化の差異を意識する ノンバーバルコミュニケーションで伝えられる内容は、個人の生まれ育った国や文化圏によって大きな差異が見られます。 例えば親指と人差し指で丸を作るOKサインは、国によっては侮辱の意味があるジェスチャーです。 ノンバーバルコミュニケーションを使うときは、互いの文化の差異を意識して、間違ったメッセージを伝えないようにしてください。 |
紹介した3つの注意点を押さえることで、ノンバーバルコミュニケーションを効果的に活用できます。
まとめ
ノンバーバルコミュニケーションは、言葉を使ったバーバルコミュニケーション以上に相手との関係性を深める鍵となるコミュニケーション方法です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、相手や状況に応じた柔軟な対応が求められます。また、文化や個人差による解釈の違いにも注意が必要です。
オンラインでのコミュニケーションが増える現代であるからこそ、非言語的な要素を意識して取り入れることで、より円滑な人間関係を築けます。特に、ビジネスチャットなどの文字をベースにしたコミュニケーションではノンバーバルコミュニケーションが失われやすいため、顔文字などを活用して補完するのがおすすめです。
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