- 2020.01.30
- INTERVIEW
第3回 SDGsに貢献するメリット
はじめに
前回に続いて、一般財団法人PBPCOTTON代表理事の葛西龍也さんにインタビューになります。今回は実際にSDGsに取り組むことによるメリットやビジネスとしての観点についてをまとめています。
インタビュー
━━ここまでSDGsに関連した取り組みや、活動の背景を聞かせてもらいました。では次に、SDGsに取り組むことでどんなメリットが生まれたのかをお聞きしたいです。葛西さんたちについてはSDGsが生まれる以前から活動しているので、この場合は「SDGsが生まれてから起きた変化」という方が正しいかもしれませんが。
葛西:メリットは2つあります。1つ目は自分たちの活動に、名称と付加価値が付いたことです。先ほど「SDGsが生まれてから起きた変化」と言われましたが、これがまさに当てはまると思います。
なぜなら「インドで綿花の有機栽培を支援する活動」が「SDGsを15個達成している活動」になり、元々は目立たない「マイナスのゼロ化(酷い状況を普通の状況にする)」の活動だったものに「国際世論の最前線に立てる」という価値が生まれたからです。これは私たちだけに限った話ではなく、今まで「名称のない活動」だったものの多くが「SDGsに絡めて語れる活動」になりました。従来はビジネスに利用できなかった活動なども、社会に理解されてビジネス利用できるようになるでしょう。
2つ目は、認知にかかる費用が減ることです。
PBP certification、というタグを私たちはオーガニックコットンを使っている証明として製品に付与するようにお願いしています。これはお客様が製品を購入いただく際に、製品が「SDGsに貢献している」と一目で分かるものになっていて、SDGsやオーガニックコットンを知るお客様が優先的に商品を選ぶ動機につながります。それ自体がPBPタグにかかる付加価値ですので、商社などからPBPタグを求められることが多くなりました。今まで認知のためにかかっていたコストを削ることができはじめているのだと思います。
SDGsはオフィシャルな目指すべき方向性になっているからこそ、日本社会でSDGsが浸透していくことで今後も認知にかかる費用は減っていくと思いますし、付加価値はどんどん大きくなると思います。
━━SDGsの目標8は『働きがいも経済成長も』ですが、SDGsに貢献することやそれを世間に伝えることが、今後の経済成長や新しい事業のキッカケ・可能性になりそうです。今まで狭いエリアでしか認知されなかった活動も、SDGsというオフィシャルな指標を使えば世間に認知されやすくなりますね。
しかし、今までSDGsに触れてこなかった会社や組織が急に「SDGsに貢献しよう」という流れを生み出すのは難しいと思います。それについて葛西さんはどうお考えでしょうか? 社内でSDGsへの意識を高めるための対策など教えていただきたいです。
葛西:企業そのものも今SDGsに取り組み始めた時期なので、何をやればいいかというのが不明瞭なのではないでしょうか。すでに取り組んでいる企業でも一個の目標のみに取り組むあまりに、広い視野を見失っているケースが見受けられます。SDGsは個々の目標が別個に存在しているのではなくて、全ての目標が繋がっていると意識することが必要ですね。
その上で、SDGsへの意識を高めるには「人」「ためにからともに」「ビジネス」の視点で動く必要があります。まずは自分が「SDGsに貢献した活動をしたい」と思うこと。そして周りの人を巻き込むこと。自分の組織内の立場を少しだけ超えて、少しだけ無理することです。そのためには、その活動を『楽しい』と思ってもらうことが重要です。私の場合だとまずは部内、次は社内向けにPBPの活動を部活として、部員を募集しました。これは初めの方(※第1回)でも話しましたが、社内の人間が『どれだけSDGsに貢献しているか』を計るよりも、社内外に『やろうとする人を増やす』ことが大事です。
次に、これは私自身が一番大事にしていることですが、『エゴイスティックに、自己満足を大事に活動する』というのがあります。人はどうしても、自身が身を粉にして頑張っていると思いたいものです。「俺は~~のために、これだけやっているんだぞ」と独善的になれば、いつか活動に行き詰まりが生じます。わかってくれない人に対して否定的になったり、小さいムラ社会を作ってそうじゃない人を排除したりもしてしまいます。それでは本質的にSDGsとは言えない。「ために」ではなく「ともに」でなくてはいけない。「こうしないと自分の気持ちが悪いからやるんだ」と、自己満足で、相手が好きだから活動している、と考えることが大事です。
最後にビジネスの視点ですが、まだまだ利益の一部を寄付という構造が多く、利益重視でSDGsを考えるという考え方が欠けていると思います。利益がなければ事業は継続しません。ですので、自分たちの活動で生み出した何らかの成果を単年度の経費予算や、社内プロジェクトだけで終わらせないためには「継続すべき価値がある」「投資する価値がある」とステークホルダーにわかっていただく必要があります。
〈第4回へつづく〉