KNOW-HOW
モーツァルト療法は、免疫力の向上にも役立ちます。しかし、一般的に言われている「免疫力」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。今回は、免疫力の正体やメカニズムについて知り、なぜそれがモーツァルト療法で改善できるのかについて理解を深めましょう。
私たちは絶えず食事をし、空気を吸って生活しています。その食物や空気の中には、細菌やカビ、ウイルスなどの微生物が数多く存在しているため、食物を介して消化管から、また空気を介して呼吸器官から体内に侵入してくるのです。
しかし、もしこうした微生物が体内に侵入したとしても、人間の体内には、侵入した病原体を異物（非自己）と認識して排除するしくみが備わっています。外界からの異物ばかりでなく、体内で生じたがん細胞のような、自己由来の異物的細胞なども非自己と認識して攻撃できるのです。このように、体内になかったものを撃退する力が「免疫力」です。この免疫力を根底から支える細胞が「免疫担当細胞」であり、それは血液循環系、あるいは静脈に沿って全身に張り巡らされているリンパ管を介して、流れながら異物の侵入をつねに監視しているのです。
人間の免疫システムは、「自然免疫力」と「獲得免疫力」という２つの防御壁（バリヤー）から成り立っています。それぞれのはたらきを見ていきましょう。
自然免疫力
人間が生まれながらに備えている防御壁です。その典型的な力は、体表面という全身を覆う皮膚や消化管に構築され、皮脂腺や涙、唾液、消化管分泌液などに含まれる免疫物質（リゾチームやＩｇＡなど）に依存しています。つまり、殺菌作用のある免疫物質を体表面に分泌して、体内に侵入しようとする病原体をいち早く撃退しているのです。
また、消化管に存在する数多くの乳酸菌などの善玉菌は、有害な病原体の定着や増殖を抑え、防御力を高める作用を持っており、さらに、こうした体表面のバリヤーを突破してくる病原体に対抗する手段も備えています。通常、血液中を流れて全身をくまなく循環している好中球（顆粒を細胞質に多く持つので、顆粒球ともいう）という白血球の一種や、ナチュラルキラー細胞（ＮＫ細胞）、単球などが、重要な外敵異物を攻撃する免疫担当細胞になっています。
こうした自然免疫は、感染を反復しても抵抗性の力が変化することはないこと、あらゆる非自己となる異物に対して特異性はなく、幅広く反応するなどの特性があります。
獲得免疫力
ある特定の、非自己となる異物に対してだけに特異的に反応する免疫系です。
この免疫系には異物を記憶する力も備わっているために、同じ異物の侵入に対しては、より早く、より強く応答できる性質もあります。したがって、獲得免疫は、感染の繰り返しでより鍛えられて強くなること、一度記憶した異物には、より強く応答して効率的に排除するという特性があるのです。
たとえば、はしか（麻疹）ウイルスに一度かかると二度とかからないという現象は、はしかウイルスを記憶していた免疫細胞が、二度目の侵入の際に効率的に増殖して攻撃をしかけたためなのです。
この獲得免疫力を根底から支えている免疫担当細胞は、胸腺由来のＴリンパ球と骨髄由来のＢリンパ球です。また、免疫物質としては、Ｂリンパ球が成熟した形質細胞とよばれる免疫担当細胞によって合成され、血液中へと分泌されています。これらの防御因子は、異物の特定の構造を認識して、特異的に攻撃を加えることができます。
今日、こうした身を守る免疫力が低下することによって、健康であれば問題ない病原体の感染を被ったり（日和見感染症といいます）、がんの発生が増加したり、花粉症のような特定の花粉という異物に対してだけ過敏に反応するようなアレルギーなどが増加しています。
最近の研究から、モーツァルトの曲を聴き入ることで、体表面の分泌の程度が高まり、さらにそこに存在するＩｇＡという抗体も増加すること、血液中のリンパ球の数が増加して、リンパ節や脾臓などのリンパ器官から動員されること、ＮＫ細胞の数と機能が増大すること、リンパ球由来のある種のサイトカインという物質が高まること、などが明らかになりました。
モーツァルト療法を日々の生活に取り入れることで、体表面や消化管での免疫力を高めると同時に、生体内での免疫力も高めることが可能になってきたといえるのです。
本来、免疫力を向上させるためには、生活習慣や食習慣の改善が必要だと言われています。しかし、目標と強固な意志がなければ、こうした習慣を改善するのは難しいものです。
そこで、ひとりでもすぐにできる免疫力増強の簡単な方法として、モーツァルトの音楽を活用した音楽療法が有効になるのです。ぜひ、今日からトライしてみましょう。
メンタルヘルス