燃料電池は「電池」という呼び方をしていますが、普通の乾電池などのように、内部にエネルギーを貯蔵しているタイプのものではありません。酸素と水素が化学反応をするときに放出する電気エネルギーを利用した電源のことを、燃料電池と呼んでいます。では、その仕組みを詳しく考えていきましょう。
水は「H2O」という化学式で表しますが、これは「H=水素」2つと「O=酸素」1つでできていることを表します。水に電圧を加えると、これらが分解されて酸素1つと水素2つが得られます。これとは逆に、酸素と水素を化学反応させれば水に変わるのですが、その過程で電気エネルギーを取り出すことができます。
酸素と水素は、短い時間で化合させると爆音や熱を発するのですが、ゆっくり化合させると、化学反応もゆっくりとおこなわれるので、長い時間にわたって徐々に電気エネルギーを外部に取り出すことができます。こうして酸素と水素の化学反応から電気エネルギーを取り出す装置を燃料電池といいます。
ひと口に燃料電池と呼んでいますが、実はいくつかの種類があります。それぞれの燃料電池は、電解質(※1)の名前を使って呼ばれています。電解質が異なると、電極での反応や動作する温度も異なるため、それぞれの電池には特徴があり、用途なども変わってくるのです。ここでは、代表的な4つの種類をみてみましょう。
Ⅰ.リン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell: PAFC)
電解質はリン酸です。約200℃で動作する低温型燃料電池で、白金などの触媒を必要とします。電気を実際に使う場所で作るオンサイト発電、電気と熱を作り出すコジェネレーション発電用の電源として使用され、ホテルや病院、集合住宅などの電源と給湯用に、50kWキロワットから200kWのパッケージ(都市ガスなどから水素をつくる設備を含んだもの)が市販の段階にあります。また発電所用として11mWメガワットのプラントも作られました。
Ⅱ.固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell: PEFC)
電解質としてイオン交換樹脂を用いています。小型で出力が大きく、室温に近い温度で作動する低温型燃料電池として、すでに現段階で燃料電池自動車に搭載され、より高性能化、より低コスト化にむけた開発研究がおこなわれています。
Ⅲ.固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell: SOFC)
酸素イオンが動くことのできるイットリア安定化ジルコニアという酸化物を、電解質として用いています。酸化物の中を酸素イオンが動いて導電性が現われるためには、1000℃近い高温が必要です。そのため高温型燃料電池と呼ばれています。火力発電所に代わる発電プラントとしての利用が検討されています。
Ⅳ.溶融炭酸塩型燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell: MCFC)
電解質として溶融炭酸塩を用いた燃料電池で、炭酸塩が溶融する650℃で働く高温型燃料電池です。シート状の材料を積み重ねた構造をとるため量産性に優れ、こちらも火力発電所に代わる発電プラントとしての利用が検討されています。2004年5月には、石油資源開発株式会社により、新潟県小千谷市で、250kWの発電所が稼働を開始しています。
※1 電解質
水などの溶液に溶け、陽と陰のイオンを生む物質。その溶液は、電気を導く性質を持つ。
いずれは「水素」が燃料電池自動車用燃料の主流になるでしょう。しかし、すぐに使えるようにするためには、水素式燃料電池自動車は技術的にもまだまだ課題があるといえます。そのため、メタノールやガソリンを使用した燃料電池自動車が、それまでの「橋渡し役」として使用されるでしょう。
また、燃料の選択は社会全体のインフラ整備にかかわってくる問題です。現在のところ、ドイツはメタノールを、アメリカはガソリンを選択する方向にあります。これらが、共存共栄の関係になることが必要です。石油のように、中東一極集中のような偏りがあるエネルギー源は、どうしても争いの火種になります。
ですから、私たちが、適切に選べるいくつかの選択肢が準備された社会こそが、21世紀型の社会のありかたともいえるのです。燃料電池を使った商品は、これから増えてくるでしょう。それまでの商品に比べて高額かもしれない燃料電池や燃料電池自動車ですが、地球温暖化防止対策として、それらの製品を温かい眼差しで見つめ、付き合っていかなければいけません。