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Vol.4 いろいろ見るところがないイロイロ(フィリピン)

東南亜細亜04 COLUMN

 

4フィリピンというと、マニラとセブ島のイメージしか浮かんでこないと思うのですが、実は大小約7000もの島嶼(インドネシアに次いで世界2位)から成る群島国家で、さまざまな表情を持っている奥の深い国なのです。日本からの距離は、東京―大阪間よりも短い約480キロ。もっとも、これは与那国島とフィリピン最北のイアミ島の距離ですが。南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)を巡る領有権問題で中国と激しく対立しているのは、尖閣問題を抱える日本と同じ島国ならではの悩みといえるでしょうか。中比関係は過去最悪といっていいほどに冷え込んでおり、昨年はフィリピン産バナナに対する「嫌がらせ」目的とみられる検疫強化措置が講じられ、税関でストップされた総額18億円相当のバナナが腐ってしまうという騒動もありました。

 

10年ほど前、マニラ滞在中に、その安くておいしいバナナを食べながらフィリピンの地図を眺めていたところ、気になる地名が目に留まりました。その場所は、セブ島の西に位置するパナイ島の中心都市イロイロ。イロイロとは旅心をくすぐる愉快な地名ではありませんか。マニラの喧騒に食傷気味だったこともあり、実際に行ってみようと思い立ち、フィリピン航空のオフィスを訪れると、ちょうどいい便があったので、早速、その日の夕方には機上の人となりました。イロイロまでは1時間余り。常夏のマニラからさらに南下したイロイロは、2月とは思えない空の青さと強烈な太陽の陽射しに包まれていました。空港も非常にのんびりとしており、明らかにマニラやセブとは空気が違います。空港から市内まではタクシーで約10分と近く、やがてスペイン統治時代の重厚な歴史的建造物が次々と目に飛び込んできました。イロイロ港付近の安宿で旅装を解き、夕食は豪華なシーフード。ツーリストを意識していない街なので、値段はマニラの半額くらいの感覚でした。

 

翌日も快晴。早起きし、張り切って散策に出かけました。ただ、街の規模が小さいので、半日もあれば一回りできてしまうのです。イロイロ見どころがあるわけではなく、宇宙船のような外観のイロイロ博物館、教会と鐘楼が別々に建っているという珍しい様式のハロ教会、16人の女性聖人像(教会が多いフィリピンでも数少ない)が並ぶモロ教会などを見てしまうと、もう行くところがありません。しかし、ぶらぶらと当てもなく歩いているだけでも実に居心地がよく、新鮮なフィリピンと出会った気がしました。おそらくマニラやセブが「特別なフィリピン」なのでしょう。
そんなのどかなイロイロですが、フィリピンでは9番目に人口が多い都市で、人口密度も非常に高いのだとか。島の主要産業はサトウキビ栽培、米作、養殖漁業など。砂糖、バナナ、マンゴーといった農産品の海外輸出拠点としては、国内で最も古い歴史を誇る都市のひとつに数えられています。

 

結局、イロイロには3日間滞在していたのですが、あっという間に時間が過ぎた印象でした。残念だったのは、詳しい情報を持っていなかったため、郊外のミアガオ地区にある世界遺産のサント・トマス・デ・ビリャヌエバ教会(ミアガオ教会)に行けなかったこと。後日、ガイドブックをみると、「ミアガオまでの90分のバス旅は海岸沿いを走る絶景コースで、教会は珊瑚礁の石灰岩で造られた美しい建物」と書いてありました。「近くにそんな素晴らしい世界遺産があったのか」と悔やまれますが、またイロイロへ行く理由があるのは嬉しい気も。今年こそはぜひ実現したいと思っているのですが。

 

数日ぶりに戻ったマニラの歓楽街。妖しいネオンがきらめき、肌を露わにした女性が日本人観光客を誘惑する光景は、イロイロ帰りの目にはいっそう毒々しく映りました。マニラにも落ち着ける場所はあるのですが、こうした欲望渦巻く「色色(イロイロ)」エリアはどうしても好きになれません。。 
 

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