私たちは水がないと生きていけません。人間の身体は6割以上が水分で構成されていますし、日常的な水分の摂取に加え、生活の中でも多量の水を利用します。しかし、「水の惑星」と呼ばれる地球であっても、その水資源には限りがあります。
地球の表面を海と陸に分けると、海が約70%を占めています。面積にすると、海は3億6千万km2、陸は1億5千万km2になります。しかし、私たちが生活に必要とする水は、海水のような塩分が含まれている水ではなく、塩分濃度の極めて低い淡水です。人体の尿に含まれる塩分は海水の約半分、血液は海水の3分の1以下であるため、もし海水を飲み続けていると、血液が次第に濃くなってしまいます。特に、海水中のマグネシウムは、その濃度が血液の15倍もあるため、海水を飲んでいると、マグネシウムが血液中に大量に蓄積され、生理的に重大な障害を起こすことになるのです。
地球上に存在する水の量の中で、海水は約97.5%を占めています。次に氷雪(1.75%)、地下水(0.73%)、湖沼水(0.016%)、土壌水(0.0018%)、水蒸気(0.0010%)、河川水(0.0001%)の順となります。氷雪のほとんどは北極や南極の氷なので、実際には利用できません。そのため、私たちが必要とする淡水は、地球上における水全体の約0.8%ほどしかないことになるのです。
現在、人口の急激な増加と社会の発展に伴って、多くの国で水不足が発生しています。水の不足がもたらす影響は、生活用水の不足だけではありません。その他にも、生活に関わるさまざまな問題を発生させています。たとえば、深刻な食料不足や生態系への影響を及ぼしたり、汚水処理施設が整備されていないために水が汚染されたりします。また、危険な氾濫地域における居住人口の増加を原因に、洪水被害が増大するといった問題もあります。
水不足を原因としたこうした問題は、なかなか改善の様相は見せていません。むしろ、今後の世界的な人口の増加によって、問題が一層深刻化することが懸念されています。
日本ではさまざまなものを輸入に頼っています。その中でも食料に関する輸入量の多さは、食料自給率を見ても、他国に比べて群を抜いてひどいことがわかります。小麦粉や大豆など、普段の生活の中で、輸入食料を食べていることも多いのですが、実は、この輸入食料も、水問題に大きく関係しているのです。
輸入食料の生産には多量の水が必要となり、その量は、年間数百億m3に相当するといわれています。インド・中国・アメリカといった農業大国では、乾燥地帯を穀倉地帯に変えることで、食料の大量生産を可能にしていますが、この工程には大量の水が必要となるためです。結果的に、輸入食料の生産には大量の水が使われていることになります。日本では、食料の半分以上をこうした輸入食料に頼りきっているため、世界の水問題の深刻化も、自分たちと無関係とは考えていられないのです。
たとえば、食料自給率のグラフを見る場合でも、実際の食料を考えるのではなく、その食料を生産するのに、どのくらいの水が必要だったのかを考えてみてください。近年は、日本のみならず、中国も大豆などを大量に輸入するようになりました。これはまさに、水の取りあいがはじまったことを意味するのです。
生活排水の割合は、台所からの排水が半分以上を占めています。まず料理をする場合を考えてみましょう。調理の準備の段階では、野菜や魚などを洗ったりします。米のとぎ汁も流しています。食後には、食器などを洗ったり、食べ残しや飲み残しを捨てたりします。これらには、水質を汚染する有機物がたくさん含まれているので、まず台所からこのような汚れた水を流さないことが大切です。
こうした排水を減らすためには、食事として出されたものは残さないようにしたり、食器に残る汚れ、特に油汚れを、紙やいらない布などでふき取るようにしていきましょう。食べ残しを流しに捨ててしまうと、それを元に戻すにはとても多くの水が必要となるのです。
こうすることで台所から流れていく食べ物の残りものとしての有機物は減っていきます。また、あわせて食器を洗うための洗剤の量も減らすこともできます。家庭からできる水質浄化にもいろいろあることがわかります。
一人一人の心がけが、きれいな水を呼び戻すことに繋がっていくのです。