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Vol.7 じゃかるたの楽しみはじゃらん じゃらん(インドネシア)

東南亜細亜07 COLUMN

 

 

多くの日本人がイスラム教の国に対し、「テロが頻発していて怖い」「宗教的なタブーが多く息苦しい」といったネガティブイメージを抱いているのではないでしょうか。エジプトやシリアの混乱をみると、そのような感情を持ってしまうのは仕方がないと思います。しかし、東南アジアにある3つのイスラム国家――インドネシア、マレーシア、ブルネイに関しては、そうしたイスラム教のイメージはまったく当てはまりません。現地へ行ってみれば、発展めざましい国ならではの躍動感にあふれており、またアジアらしい開放感もあって、日本にはない魅力をたくさん発見することができます。他民族や他文化を尊重し、うまく融合しながら安定を維持しているアジアン・スタイルのイスラムは、中東のコアなイスラム国家が参考にすべきお手本だと思うのですが。

 

2年前の夏、久しぶりにインドネシアの首都ジャカルタを訪れました。中心部には近代的な高層ビルが続々と建設されており、あまりの変わりようにびっくり。かつてはスンダ・クラバという小さな港町に過ぎなかったこの地が急速に発展したのは、オランダ統治時代にバタビアと改称され、東インド会社が現在のコタ地区に置かれたから。その歴史あるコタ地区へ行けば、いまも東インド会社時代の雰囲気をとどめる重厚なコロニアル調建築が異彩を放っており、しばし都会の喧騒を忘れさせてくれます。地区の中心にある石畳のファタヒラ広場には、夕方になると、露天商やらパフォーマーやらがわらわらと集まってきて、毎日がお祭りのよう。 週末ともなれば、芋を洗うような大混雑です。まあ、それもそのはず、インドネシアは東南アジアで1番、世界でも4番目に人口が多い国なのですから。
広場を横切り、海を目指して進んで行くと、賑やかな魚市場に行き当たります。このあたりまで来ると観光客はぐっと少なくなり、ジャカルタの庶民生活を垣間見ることができます。大海原に沈む夕日を望みながら、大航海時代のロマンに思いを馳せてみるのもいいでしょう。

 

このようにジャカルタ散策の楽しさは、気ままな「じゃらん、じゃらん」にあるといえます。「じゃらん、じゃらん」とは、「ぶらぶら歩く」「旅をする」といったニュアンス。重ね型にせず、「じゃらん」だけだと「道」という名詞になります。ちなみに、有名な旅行情報誌の「じゃらん」は、このインドネシア語が由来なのだとか。今ではすっかりおなじみですが、なかなかセンスのいいネーミングですよね。
翌日も「じゃらん、じゃらん」を続けましょう。次の目的地はグロドッ地区にあるチャイナタウン。ここも前日のファタヒラ広場から徒歩圏内です。ドブの悪臭が鼻をつき、ネズミが走り回っているような、お世辞にも清潔とはいえない猥雑なエリアですが、そこに渦巻く庶民のパワーは圧巻のひとこと。チャイナタウン最大の見どころは、ド派手な装飾を施した中国寺院の金徳院で、門前には喜捨を求める貧しげな人が群れをなしています。足元から、にゅっと黒い手が伸びてきたりするので、慣れない観光客はドキッとするかも知れません。この界隈はイスラム教と隔絶されており、華僑・華人の心の拠りどころとなっています。

 
コタ地区から離れ、閑静な住宅街に近いメンテン地区のスラバヤ通を歩けば、アジアンテイストあふれるアンティークを扱う小さな店が軒を連ねています。ふだんは人通りも少なく、静かな時間が流れており、騒々しいファタヒラ広場やチャイナタウンが別世界のように感じられます。ただ、値段はすべて交渉ですし、現地在住の知人いわく「ニセモノばかりで、素人が行くと必ず騙されるよ」とのことなので、ウインドショッピングにとどめておくのが無難のようですが。

 

年じゅう暑いアジアでは、「じゃらん、じゃらん」のあとの冷たいビールがこたえられません。ところが、インドネシアの場合、その楽しみが制限されてしまうもどかしさがあるのです。戒律が厳格ではないイスラムとはいえ、基本的に飲酒はタブーの国。せっかく、「ビンタン」というおいしい国産ビールがあるのに・・・。外国人が多いジャカルタや世界遺産の拠点ジョグジャカルタなどでは不自由しないものの、これが地方となると、一気にビールのハードルが高くなってしまいます。冷たいビールを求めて田舎道を「じゃらん、じゃらん」というのも、嫌いではないのですが。 

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