- 2019.11.11
- INTERVIEW
安福博美さんの「テレワーク」×「子育て」
働き方改革という単語も一般的になってきましたが、実際に何か「改革」はされているでしょうか?
これまで以上に働きやすく、プライベートも充実させるような施策はまだまだ実現できていないという声も聞こえてきますが、その働き方改革推進に必要となるスマホ管理アプリ※を開発し、実際に自社でも在宅勤務やフルフレックス制度を運用するレコモット社で、育児と仕事を両立させている安福さんにお話を伺いました。
※業務でスマートフォンを利用する上で、必要なセキュリティ対策を行ったり、情報システム部門での一元管理を可能とするアプリケーション。
テレワークのメリットとデメリット
――まずは貴社についてどんな企業か簡単に教えて下さい。
2005年11月創立のモバイル向けのテレワークプラットフォームの開発をしている企業になります。近年では企業が従業員向けにスマートフォンを支給しているケースもありますし、自身のスマホを業務利用する場合でも、情報漏えいリスクを減らすためのセキュリティ対策が必須になります。弊社で開発している「moconavi(モコナビ)」がそれにあたります。
実際に、弊社でもリモートアクセスを活用した在宅勤務制度やコアタイムを設けないフルフレックス制度を採用したオープンな働き方を推奨しています。
――実際に在宅勤務をされてみて感じるメリットはありますか?
本格的にテレワークを始めたのは育休から復帰してからで、それ以前とは状況が変わっていますが、最も実感するのは通勤時間の短縮です。また、時間だけでなく体力的にもとてもありがたいです。出産後体力低下を感じていることもあり、往復で2時間の満員電車に乗らなくて済むのは助かります。
また、交通機関の遅れでお迎えが遅くなる心配や、災害時にすぐに迎えにいってあげられるという安心感もあります。
もし地震などで帰宅困難になった場合、5 時間ぐらいはかかってしまいますから。
――安福さんは週何日くらい在宅勤務をされているのですか?
週一日以上は出社するようにしています。
――それは完全に在宅勤務だと業務上むずかしいこともあるからですか?
いえ、とくに困難なことがあるわけではないのですが、開発部門の会議があるので、それに参加しています。一緒に働くみんなの進捗を把握するのはテレワークでもできますが、対面のほうが手軽なので。
あとは週に1回の出社が業務のよい切れ目になっていたり、帰属意識を感じさせてくれるというメリットもあります。
――ありがとうございます。逆に在宅勤務だからこそ困ることはありますか?
仕事と家事の切り替えが難しいです。家事は際限なくあるので、ついついいろんなことが気になってしまいます。
――業務面についての質問ですが、非対面だと管理職や上司の方への質問や相談がしにくい印象がありますがいかがですか?
チャットでのコミュニケーションでとくに支障がなく、業務面では困ることはあまりありません。
テレワーク実現の障壁
――貴社の場合はIT系企業ということもあり、抵抗が少なそうですが、チャットなどのコミュニケーションツールを活用することに抵抗がある企業もありそうです。導入の障壁となるようなものはありますか?
従業員にとって、使いやすいツールをしっかり選定することです。
日本にはチャットツールベンダーは70社以上あるといわれていますが、私達も「moconavi」の機能のひとつとしてチャット機能を提供しています。特ににシンプルな操作性にこだわっています。機能追加と使いやすさはトレードオフの関係になりがちですが、弊社の「moconavi」は必要な機能を保ちつつ、使いやすいUI、UXにすることに注力しています。
そうすることで、興味を持ってもらえさえすれば、触っていくことで、すぐに使えるようになります。
――ちなみにまだこういった仕組みを導入できていない企業にとっての導入メリットは何でしょうか?
会社からすると、柔軟な働き方をサポートする(多様性を認める)ことで優秀な人材を確保しておくことができ、業務効率化、業績アップにつながると思います。また、女性の産後離職はまだ多いですが、その人材を守ることも会社にとってのメリットになります。とくにエンジニアは需要がとても高まっていますので。
ほかにも親の介護や災害時の事業継続性にもよい効果がありますね。
テレワークをしていくうえで必要なモノ
――実際にテレワークをしていくうえで、求められる能力はありますか?
テレワークではどうしてもチャットでのコミュニケーションが多くなるため、気遣いとコミュニケーション能力は必要になってきます。相手が読み取れるように、疑問がでないように内容をまとめ、シンプルに伝えることが必要です。
なるべく簡潔に要点を絞って、どういった依頼なのか、相談なのか、または情報共有なのかを明確にして伝えることを意識しています。
少し言い回しが違うだけで相手に与える印象は変わりますし、つらつら書いたり逆に言葉足らずだと、内容ではなく、その書き方に対して余計な疑問が湧いてしまいます。そうなると、それを解消するために時間をとってしまい効率が悪くなります。
――対面でないと感情が読み取りにくいと思うこともありますが、いかがですか?
私の場合はテレワーク以前から数年一緒に働いているので、そもそもその不安はあまりないですが、そうでない方でも今はビデオ会議のツールも豊富にありますので、そんなに遠くにいるようには思わないですね。
――他はありますか?
私もまだテレワークを始めて半年もたっていないので、手探り状態ですが、仕事への気持ちの切り替えは大切です。自宅でテレワークをしていると、〜時から〜時まで仕事、と決めても突発的な対応が発生したり、急な訪問で集中が切れてしまうことも多々あります。
単純なテレワークであれば近場のレンタルオフィスや外部に影響されない環境で効率よく仕事できますが、テレワーク×子育てとなるとそうはいきません。
小さい子供と同じ空間にいるときは仕事をすることはできないので、子供といるときに家事を少しでも片付けて、1 日のなかで時間を創ることを心がけています。
父親や家族の協力があるとそういった時間ももっと作りやすくなるかなと思います。
――テレワーカーの方が一般ビジネスマンよりモチベーションが高いという調査結果もありますが、どういった理由があると思いますか?
自身の経験からいうと、管理されている感がないといった部分が大きく影響しているように思います。相談や共有は前提としても、自分の裁量で仕事の場所や時間配分をコントロールできるということは、モチベーション向上に繋がると感じます。
――実際にテレワークをされているなかで“もっとこうなればいいのに”と思うことはありますか?
私自身についてはないですが、男性もテレワークをもっと活用して、子育てに参加出来るようになるといいですね。気兼ねもなくなりますし、みんながもっと働きやすくなりますので。
我が家では、主人が産後3カ月は私の実家でテレワーク、その後は週2日テレワークをしています。育休まではとれなくても、テレワークで家にいてくれるだけで、本当に助かりますし、父親と子供の関係性も全然違ってきます。
子育てと仕事
――子育てと仕事を両立するポイントは何だとお考えですか?
仕事と家事の頭の切り替えです。時短で働く時間も短いので、集中して取り組む事が大切です。
そして、主人の育児、家事への参加も重要です。「協力」ではなく、主体性をもって、「あれやって、これやって」と言わなくても必要な事をしてくれることもとても重要です。
お風呂に入れるにしても、お風呂掃除や着替えの準備から、お風呂から上がってからの保湿等まで一通りやってくれると、「お風呂」に関わる事をする時間があくので、かなり違います。
お風呂に入って、身体を洗ってくれるだけでもありがたいのですが、それだと 15 分ぐらいしかないので、パジャマを用意して、寝室を整えたりしているうちにあっという間に上がってきてしまうので。
子供が病気をした場合に、休みを交代で取るためにも、家事も育児も一部ではなく、一通りしてもらえるようになっている必要があると感じます。
子供の肌着がどの引き出しに入っている、解熱剤はどこにあって、いつもどうやってお薬を飲ませている等、細かい事も把握してくれると助かります。
――最後に読者に伝えたいことをお願いします。
働くお母さんへ
私もまだ職場復帰して半年もたっておらず、手探りの毎日です。理解のある職場、積極的に育児、家事をこなしてくれる主人に恵まれ、かなりいい環境で仕事をさせて頂いていると自覚しています。
それでも困難を感じる事もあります。仕事も子育ても1人で背負い込むのは無理なので、出来る限りご主人や、ご両親、行政等の力を借りて、楽しく子育てし、生き生きと働けるといいですね。
お父さんへ
お仕事が大変なのは重々承知していますが、子育てに「協力」では足りません。又、子供を育てるというのは、仕事とはまた違った成長が出来る良い機会です。
例えば、子育て以上に理不尽な要求、不可解な行動に振り回され、忍耐力を試される機会もそんなにないです。「協力」では、学べる事も少ないです。今しか出来ません!
これからもっと子育てをしながら働く女性が増えてきて、その方達の上司になる事もあるでしょうし、しっかり子育てをした経験は、いろいろな面で生かされると思います。
今後もっと働き方が多様化し、働くお母さんだけでなく、みんなが働きやすい環境が出来る事を願っています。
何歳になっても、学び、働き、成長出来る社会になりますように。
安福さんにとっての「学び・成長・働く」
子供が産まれて1年半。寝返りすら出来なかった赤ちゃんが走り回り、言葉を話すようになり、日々成長していく姿を目の当たりにする毎日です。
母もぼーっとしているわけにはいきません。
子育てで新しく知る事も多いですが、それとは全く違う知識を仕事では必要とされます。システムエンジニアという職業柄、日々必要とされる知識は変わっていきます。「働く事≒学び」であり、それによって、私も少しは成長していければいいなと思っています。