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「どうして私だけが……」は危険な思考

KNOW-HOW

 私たちを辛い気持ちにさせる思考法の一つに「どうして私だけが」というものがあります。自分以外はみんなこれといった悩みも不安もなく、人間関係にも恵まれて幸せな毎日を送っているように見えるのに、どうして自分だけがうまくいかないのだろうかと考えてしまうのです。

 

 

 この思考法はどんな人にも生まれてきます。感情生活が悪化するとほとんどの人が陥ってしまう思考法といえます。しかし、これは抜け出しやすい思考法でもあるのです。他人も自分と同じようにさまざまな悩みを抱えていると知っただけで、「私だけじゃないんだ」と気付くからです。「みんなそれぞれ、いろいろな悩みを抱えているんだなあ」と気付くことは、感情コントロールのための大切なヒントになります。

 

 

 

「どうして私だけが……」の危険性

 

 

 「どうして私だけが」と思い込むと、身の周りの小さな不幸や不運も、自分だけに起こっているように感じます。気の進まない仕事が回ってきても、外出先で雨に降られても、ローテーションの都合で休暇が取れなくなっても、「どうして私だけが」と思い込むようなものです。

 

 

 その程度のことは誰でも出会う不幸や不運に過ぎないのに、必要以上に重苦しく受け止めてしまいます。あっさり「ついてないな」と思うだけならすぐに気持ちを切り替えることができますが、「私だけが」と悲観的な受け止め方をしてしまうと、不満はいつまでも消えません。

 

 

 

 

 

 

 

 しかもこういった受け止め方が習慣になってくると、ものごとを悪い方向にしか解釈できなくなります。いろいろな可能性があるはずなのに、たった一つの悪い結果しか思い浮かばなくなるのです。

 たとえば、突然上司に呼ばれたとき、ただそれだけのことであれば、どんな部下にもありふれた出来事です。なぜ呼ばれたのか、用件は何なのか、すべて上司と向かい合えばわかります。ところが、悲観的な受け止め方しかできなくなると、反射的に悪い想像が浮かんできます。叱責を覚悟し、職場の状況や年齢によっては異動、配置換え、最悪の場合はリストラの提示さえ予想してしまうのです。

 

 

 

「このところ業務が滞っている。私だけ実績が伸びていない。その理由を追求されるだろうが、いったいどう答えればいいんだ」

 

 

 

 こんな調子で想定問答までやり始めますから、頭の中では、叱責されることがもう動かない事実になってしまうのです。このように反射的に1つの結論を出してしまうパターンのことを、自動思考と呼びます。本人は考えているつもりでも、それはすでに出された結論を検証しているだけのことで、なぜその結論が出てくるのかという問題は、まったく素通りしているのです。

 

 

 この自動思考、簡単に言えば思い込みですが、悪い感情につかまっている人ほど、ものごとを悪い方向へねじ曲げてしまうことになります。取引先へのメールに返信がなければ悪い結果を予測し、待ち合わせに相手が5分遅れただけで、「気が進まなかったんだな」と解釈するようなものです。日常生活のありふれた出来事が、自動思考に引っかかってしまうとすべて感情を悪化させる原因となってしまうのです。

 

 

 

「私だけじゃない」と気づくこと

 

 

 

 

 

 

 ラジオ番組に「テレフォン人生相談」というのがあります。この番組、よほど根強いファンがいるとみえて、1965年の放送開始以来、すでに45年以上も続いている長寿番組なのです。

 構成はシンプルで、相談者が電話で自分の悩みを打ち明け、それに対してパーソナリティーや回答者が「こうしなさい」「こうするしかないですよ」と答えるだけなのですが、その回答がキッパリ、スッキリしていることがまず一番の魅力、そして一般の聴取者が自分の悩みや不安に照らし合わせて聞いてしまうというのも長続きの理由でしょう。

 

 

「世の中には、私なんかよりもっとひどい悩みを抱えている人がいるんだ」「私も似たような悩みにつかまったことがあるけど、ここまで思い詰めたりしなかったなあ」。聴く人によって感想は違いますが、共通するのは「人それぞれ悩みはあるのだなあ」ということでしょう。それがわかっただけで安心するのが、人間の心理の面白いところです。

 

 

 「どうして私だけが」という思い込みは、わりと簡単に改めることのできる思考法です。身近な人間が自分と同じような悩みや不安を打ち明けてくれると、「この人もそうだったのか」と気付いて、たちまち抜け出すことができるからです。

 

 

 たとえば、雑談で「実はね」と言い出したりする人がいます。それがきっかけで「私もそうなんだ」と打ち明ける人がいます。そういうリラックスした人間関係が、感情のコントロールには欠かせないのです。「どうして私だけが」とかたくなに考えてしまうと、いつまで経ってもそこから抜け出すことができません。

 

 

 

 

まとめ

 

 

  • 「どうして私だけが……」という思考を続けていると、自分の殻に篭りやすくなってしまう。

 

  • 自分以外にも辛い人がいるという気持ちを掴むことが大切。

 

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