私たちにとって自分の感情ほど手に負えないものはありません。間違いなく自分自身のものなのに、思うようにコントロールできないからです。そもそも意識することさえ難しいときがあります。感情に振り回されて失敗することもあれば、感情が困難を乗り越える力を与えてくれることもあります。両刃の剣、まさに感情は私たちにとって大きなパワーにもなるし、そのパワーを抑え込むものにもなるのです。
この連載では、自分の感情をコントロールするためにはどうすればいいかを学びます。果たしてそんなことが可能なのかという疑問は当然、あるはずです。けれども感情には「いい感情」と「悪い感情」があります。「いい感情」は私たちの考え方や人間関係にも肯定的な気持ちをもたらしてくれます。「悪い感情」はその逆です。
この「悪い感情」さえコントロールできれば、私たちの毎日はずいぶん違ってくるはずです。感情のコントロールというのは、わかりやすく言えば「悪い感情につかまらない」、あるいは「悪い感情からすぐに抜け出す」技術のことでもあるのです。
感情コントロールの技術はとても大事です。ビジネスに限定して考えてみましょう。私たちは不機嫌な人を嫌います。悪い感情をこちらにぶつけてくる人、僻みっぽい人や疑り深い人、怒りや不満を隠そうとしない人、その日の気分で態度を変える人とは、いくら仕事とはいっても付き合いたくありません。パートナーとして信頼することができないし、好きになれないのです。
つまり、悪い感情をコントロールできない人は、どんなに能力やキャリアがあっても周囲との信頼関係が築けません。ビジネスは人間関係が作るものですから、悪い感情に満たされる人は自分の能力を発揮することができないのです。
これから皆さんと一緒に学ぶのは、感情のコントロールという、ある意味ではつかみどころのないテーマになります。けれども感情は自分自身と同じですから、自分を思い出し、問いかけるつもりになれば感情について考えることはできます。自分の感情の世界に踏み込むのは自分しかできないということです。
自分に問いかけ、自分で答を探すつもりで学んでみてください。