人と話していて、話題に困ったことはないでしょうか。どうも話が噛み合わない、すぐに話が終わってしまう。プライベートならそういう人とはだんだん疎遠になっていくかもしれませんが、ビジネスの場ではそういうわけにはいきません。ビジネスの関係だけしっかりしていればいいとはいっても、お互いに人間ですから、いいコミュニケーションがとれなければなかなか共感が育たず、強い信頼関係も築けないのです。
まして、本来ならばもっと親しくなれるのに、その可能性をみすみす失っているとすれば、それは大きな損失です。とくにまだ経験の浅いうちは、相手に合わせた話題の展開がなかなかできないものです。もちろん聞き役に回ってもいいのですが、相手を気持ちよく話させるためには、その話題にうまく絡まなければいけません。そのためのメモを意識して蓄積していくのです。
具体的には、話題にできそうなことをどんどんメモしていきます。特定の相手がいるなら、その相手の関心あることや趣味のこと、あるいはその周辺のことです。疑問に思ったことやおもしろいと思ったことを一緒にメモしておけば、それはそのまま会話で使えることになります。
会話で使えるといえば、気の利いたジョークの類もメモする価値があるかもしれません。ただし、時と相手とジョークの質によっては逆効果になることもありますので、慎重に使いましょう。そのほか、観た映画のポイントと感想、読んだ本の感動した箇所と感想なども使えます。気になったニュースの数字なども話のきっかけにできます。
それから大勢の顧客を担当する人、たくさんの人と出会う機会の多い人は、人の管理も大変です。顔と名前と仕事が結びつかないということも多いでしょう。しかし、会ったとたん「誰だったっけ?」という顔をしていては、なかなか人間関係が深まりません。
そんな時に有効なのが、名刺にメモしてしまう方法です。その一日で出会った人の名刺に、いつどこで会ったか、なんの仕事だったか、何を話したか、どんな特徴があるかといったことを書き込むのです。事細かにあれこれ書かなくても、いつ・どこで・どんな状況で、ということと、もっとも印象的だったことが押さえられていれば十分でしょう。
本当はその場で書き込めればいいのですが、なかなか初対面の相手の名刺にメモするのは勇気がいります。別れたらすぐに書き込むようにするといいでしょう。しばらくの間、その相手に関する情報が得られたら、名刺にメモするようにしていけば、記憶にも残りますし、データベースの基礎資料にもなります。
自主的な能力開発、たとえば語学や資格取得のための勉強、習い事などでの技術習得、さらに何かテーマをもった研究などでも、メモ術を活用すれば、より高い効果を得られます。
たとえば、語学や資格取得では、こんな方法はどうでしょう。どうしても覚えられないことをささっと紙切れにメモして、ポケットに入れます。そして、ちょっとした合間にポケットから取り出して見るのです。ポイントはポケットに入れた紙切れだということです。
これをノートや単語カードでやるのが一般的でしょうが、どうしてもあらたまって勉強という形になってしまうのです。また、ノートや単語カードを取り出す行為もどこか構えたところがあります。半分くしゃくしゃになった紙切れなら、さりげなくいつでもどこでもほとんど無意識に取り出すことができるでしょう。朝、ポケットに入れて家を出れば、家に帰ってくるときはすっかり覚えていて、そのままゴミ箱へ、というような使い方です。
また、ノートづくりには、講演メモやインタビューメモのノウハウを活かすことができるでしょう。テキストや講義の内容を理解し記憶するためには、要点が整理されたノートづくりが欠かせません。図解の技術も役立つはずです。
こうした自己啓発で大切なのは、いかに時間を確保するかということです。しかし、学習や修練のための時間は限られています。できるだけ短期間で成果を上げるなら、時間の密度を高めるとともに、日常のちょっとした空き時間も、そのために使うという考え方が必要でしょう。
つまり、たとえば移動中の時間やちょっとした待ち時間などをうまく活用することが大切になってくるのです。勉強の時間を日常の中に延ばす――そのためにメモが役立ちます。
たとえば、今週の課題を自分で立てます。それをさらに1日に落とし込んで、紙にメモして毎日持ち歩くのです。見ていて何か思いついたことがあれば、その紙にさらにメモします。そして、日々の課題を着実に消化していきます。
また、自己啓発においては、自分に負けないことが大きなテーマになります。くじけてしまわないためにはどうすればいのでしょうか。それは、今取り組んでいる自己啓発が、将来的にはどんな実を結ぶのかを考えることです。
行き詰まるということは、その将来像を見失っているということです。そこをもう一度見つめて考えなおすと、新しいイメージ、新しいシーンが思い浮かぶかもしれません。それをすかさずメモして、しっかりと心に刻むのです。