教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

07:メモを図解化するコツ

KNOW-HOW

重要なポイントを補足する

 

前回の「右脳を使う図解はアイデア出しに適している」では、図解化は高度な作業で、伝えたい情報を整理するスキル、情報から要点を抽出するスキル、図形を使って要点を視覚化するスキルなどが要求されると述べました。しかし、それほど複雑ではない日常的なメモやアイデアメモなら、そのための訓練をすることができます。

 

まずは、簡単なところから始めてみましょう。たとえば、明日の13時に取引先A社のBさんと商談のアポが入ったとします。場所はA社。新製品のサンプルを持ってくるように言われました。さて、どうメモするでしょうか。

 

「○月×日13時 A社のBさんと商談 A社にて 新製品のサンプルを持っていくこと」

 

これを図式化すると、

 

「○/× 13:00→A社・Bさん←新製品サンプル」

 

矢印を使っているだけですが、13時にA社に行くことと新製品のサンプルを持参することが表されています。メモとしてはこれで必要十分です。

 

では「商品カタログはいらないよ。新製品のサンプルを持ってきて。部長も同席するから絶対に間違えないで」と念を押されたとします。

 

「部長絶対!→◎新製品サンプル ×カタログ」

 

矢印や記号を使えば、文章で書くよりも手間がかかりません。書く分量が少なくなるので素早く書けます。さらに、一目でわかるため、ミスも減ります。メモのスペースにも時間にも余裕ができるので、キーワードにひとことを付け加えて、簡単に補足することもできます。

 

アイデアメモでも同じように、キーワードにひとこと「→若い女性」(若い女性がターゲット)、「→課長!」(課長に聞いてみよう)、「←補足」(補足するためのキーワード)、「←×赤」(赤はダメ)などと付け加えることで、ポイントを忘れないように強調するといいでしょう。「これなんだったっけ?」ということがなくなるはずです。

 

キーワードの抽出からはじめる

 

図解とは、情報やイメージの総体からその本質を切り出して、簡潔に視覚化することです。たしかに複雑に絡み合った内容の情報を図解化することは、簡単ではありません。しかし、その手段そのものはシンプルです。要するに、キーワードを抽出しながら、その関係を結びつけていけばいいのです。その図解化の過程が、思考するということでもあります。

 

つまり、図解化しようとすることにより、自分自身の理解と思考も深めることができます。わかりやすく視覚化するためには、問題点を発見し、不明点を解消する必要があるからです。図解化をする過程で、頭の中で混沌としていたことが目に見えて明快に整理されていくのは、一種の快感であるともいえるでしょう。

 

図解化していくための基本的な手順は、次のようになります。まず、情報からキーワードを抽出します。ちょっとした思いつきなら「○○を××したらおもしろそう」とか「○○と□□の共通点は△△だ!」といったこともあるでしょう。そうした場合、「○○」「□□」「××」「△△」がキーワードです。「××」「△△」はわかりやすいように多少手を加える必要があるかもしれません。続いて、キーワードどうしの関係を明確にして、その関係を図に表します。複雑なものについてはシンプルにできないか、説明不足の点は補足できないか考えます。内容によっては、イラストを書き添えるとイメージが広がります。

 

新聞や雑誌の図解をスクラップする

 

「てにをは」の助詞にあたる要素は、線や矢印で表します。たとえば、「苛酷な通勤ラッシュを緩和する」なら「通勤ラッシュ→緩和」。動詞は名詞化した方が締まります。場合によっては、漫画のふきだしのようにして「苛酷」を通勤ラッシュの上につけてもいいでしょう。さらに、汗の滴のイラストをいくつか描き加えたりすると、動感が生まれたり、イメージを刺激するポイントになったりします。

 

また、キーワードどうしをグループ化して罫線で囲んだり、枠の境界線をなくしたりすることによって、関係をシンプルに整理することもできます。複雑な内容をA4判などの大きなサイズで図解化する場合には、一度で完成することは難しいかもしれません。しかし、その過程こそが思考なのです。思考過程をメモするような気持ちで下書きするといいでしょう。

 

ふだんから新聞や雑誌のわかりやすい図解を切り抜くなどして時々見返すようにすると、図解化のコツが具体的に掴めてきます。

 

 

罫線と矢印はイメージを左右する

 

罫線には関連を表すはたらきがあります。矢印は方向性を表します。両端を矢印にすると、相互に力がはたらいていたり、影響を与えあっているような意味になります。左右方向と上下方向を意識して使い分けると、さらに立体的な表現ができます。たとえば斜め上方向に矢印線を引くと「上昇」「発展」などプラスのイメージを持たせることができます。

 

これは、単独ではあまり意識されないかもしれませんが、斜め下方向の矢印線と併用した際に、斜め上方向にマイナスイメージのこと、斜め下方向にプラスイメージのことを書くと、違和感が生じてスムーズに頭に入ってこない、そのため記憶として定着しない、混乱してしまうということが起こったりするのです。

 

このように、ちょっとした違いが認識や記憶と関わってくるので、罫線と矢印の違いも、意外に大きな差となって作用することになります。しかし、実際には単なる線と矢印線の使い分けはなかなか難しいものです。ついつい意味なく線の先に矢印をつけたくなってしまうことがよくあります。結果として、単なる線と矢印線の使い分けが曖昧になると、矢印線の意味が弱くなってしまうのです。

 

たとえばひとつのキーワードに補足説明をつける場合などは、矢印線を使わずに引き出し線にするなど、意識した使い分けが必要でしょう。また、罫線の太さ(太線、細線、二重線、点線)、直線と曲線、矢印の形状なども、意味のレベルの強さなどに応じて使い分けるといいでしょう。

 

意味をよく考えて使い分ける

 

ポイントになってくるのは、必要のないものはなるべく使わないということです。往々にして、線や矢印は過剰になってしまいます。大して重要ではないのに、線をぐいぐい引いて太線になったり、二重線にしたりすると、本当に重要なものが際立たなってしまうのです。矢印の場合は、不用意に使うことで意味が混乱します。

 

意味を含ませる場合、右向きの矢印は「順番」「因果関係」「結論」、双方向(両端)の矢印は、「相互作用」や「反対」、左向きの矢印は「原因」「理由」「注釈」といったイメージがあることをよく考えて使いましょう。

 

とくに双方向の矢印でいくつかのキーワードを結ぶ場合は、そこにほんとうに何らかの力がはたらいているのか、よく考える必要があります。単なる並列関係である場合に、それぞれを双方向矢印でつなぐことによって、特別な影響関係があるように理解されてしまうからです。明確にするために使う矢印が、かえって誤解や混乱の原因となってしまうのです。

 

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.