教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

04:メモをアイデアへと変える方法①

KNOW-HOW

視点を変えると何気ないことが新鮮に見えてくる

 

どうしてもいいアイデアが思い浮かばないという時があります。企画の締切が迫っている、プレゼンまで時間がない。ジタバタしているだけで時が過ぎていきます。焦れば焦るほど、いいアイデアから遠くなっていくような気がします。どうひっくり返っても、何もでてこない! 目の前のメモ帳は白紙のまま。さて、どうすればいいのでしょう。

 

そんな時は気分転換しろとよくいわれます。気分転換するとなぜいいのでしょうか。それは、気分が変わることによって、視点が変わるからです。ものを見る視点が変われば、感じ方も変わる。感じ方が変われば、新しい発見ができやすくなるのです。

 

ならば、気分転換したつもりで視点を変えられれば、話が早いのではないでしょうか。ちょっとした視点の変化を試してみましょう。あなたは今、初めて日本に来た外国人です。日本のことは何も知りません。さて、何をメモしますか? 目の前に弁当の割り箸があります。

 

あらためて考えてみると、奇妙な道具です。なぜ割るんだろう? 「ハシ 割る」「割る道具」。とりあえずメモしてみます。何かこの先にありそうです。

 

一見、何気ないこと、取るに足らなそうなことに、いろんなヒントが隠れているのです。しかし、ふだん私たちはなかなかそれを見ようとはしません。なぜなら、当たり前すぎて、目にも入らないのです。ところが、今、世の中で注目を集めている新発想のものは、およそすべて、何気ないところに着目して新しい価値を生み出しているのです。

 

仮定・仮説をシミュレーションしてみる

 

そこで、一見何気ないことをメモしてみましょう。ありふれたものに何か別の角度から光をあててみるのです。いつもの朝の通勤路。ふだんなら何もメモするようなことはないかもしれません。しかし、視点を変えれば、どこかに奇妙なところ、おもしろいところはありませんか。もし「○○○が××だったら」どうなるか、いろんな仮定、仮説をシミュレーションしてみるとどうでしょう。

 

バカバカしいと思ってはいけません。人は固定的な観念にがんじがらめになっています。自由な発想ができる人は、そうした固定観念、既成概念から自由になれる人です。そして、自分でちょっとした仕掛け、視点を変えられる仕掛けをすることで、ふと日常にほころびが生まれてくるのです。その瞬間をすかさずキャッチするのがメモだととらえましょう。

 

あえて正しいとされていることと逆のことを考えてみましょう。それが逆転の発想です。大嫌いな音楽を聴いてみましょう。それも感情の刺激になります。何気ないところに目を向けて、何をメモできるか目を凝らすところから、思いがけないアイデアが生まれるのです。

 

メモを並べてそれぞれの関係を整理する

1枚に1件メモされたメモ用紙を大きなテーブルの上にずらりと広げて並べてみます。まるでかるた取りのような光景です。

 

しばらく眺めていると、メモ用紙を動かしたくなってきます。内容が近いメモを近くに集めてグループを作り、タイトルをつけます。するとそのグループ同士の関係も見えてきます。全体の構造がいくつかの層に分かれて浮かび上がってくると、その間にあるものも見えてきます。たくさん出てきたアイデアを分類、展開して一覧することで、思いもよらない法則なり視点なりポイントなりが発見できるのです。

 

このようなアイデア発想の手法としては、KJ法がよく知られています。KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が学術調査のデータをまとめたり、調査団のチームによる創造的な問題解決をしたりするために考案した創造性開発の技法です。論理学的には仮説法と呼ばれる体系にあたり、先入観・偏見を排して、データを集め、データをまとめ、新たな視点からの発見や問題解決策を導き出そうとするものです。

 

やり方の大まかな流れとしては、まず、テーマにもとづいたアイデアを、1アイデア1カードの原則でカードに記入。次に、内容が類似したカードを2~3枚ずつ集めて仲間分け(グルーピング)。そして、グルーピングしたものにキーワードをつけ、小グループ、中グループ、大グループへと組み立てて、大きな紙の上でキーワードをつけたグループの関係を明確にしていきます(たとえば目的と手段、原因と結果などの観点から)。

 

KJ法の方法そのものはそれほど複雑ではありませんが、効果的に行うためには、正しいやり方をしっかりと学ぶ必要があるとされています(公認の研修コースなどがあります)。

 

 

状況を正しく構造化し、自由な思考で発想する

 

とはいえ、こうしてメモを広げて一望するだけで、発想が活性化してくることはたしかです。さまざまなところで断片的に拾い上げたメモが、広い視野の中でつながったり反発したり、自然と動き始めるからです。

 

私たちは、何かを考えようとする時、ついつい既成の枠にあてはめて簡単に答えを得ようとしがちです。しかし、そういったところからは、なかなか新しい発想は生まれません。既成の枠は決まった形に答えを導こうとするからです。

 

そこから離れるためには、状況をできるだけ正しく構造化し、定型的な思考パターンから抜け出す必要があります。メモを広げ、さまざまな角度からその関係を見直していくと、それぞれのメモがさらに活きてくることになるのです。

 

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.