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創考喜楽

#01 あなたが~しようと思った動機は何だったのですか?

COLUMN

「あなたの考えについて自由に話し合う機会をいただきましたが、『プレイボーイ』のインタビューを承諾しようと思った動機は何だったのですか?」
 この質問は、アメリカの雑誌『プレイボーイ』のインタビューアーとして有名だったアレックス・ヘイリーが、ブラックモスレムと呼ばれるイスラム教組織の幹部だったマルコムXに投げかけたものだ。
『プレイボーイ』といえば、ポルノ雑誌なのでは? と思われる方もいるだろう。実は『プレイボーイ』のヌード写真は読者をひきつけるために使われているにすぎない。『プレイボーイ』が本当に伝えたいのはインタビューのほうで、このインタビューこそが『プレイボーイ』の看板記事なのである。そして、知的な対話が楽しめるインタビュー記事は〈質問〉について考える格好の材料でもあるのだ。

インタビューの鉄則のひとつに「相手がなぜその場に来ているのか考える」というものがある。そこで、アレックス・ヘイリーが過激なマルコムXの考えを引き出す質問として使ったのが「あなたが~しようと思った動機は何だったのですか?」というものだった。相手の考え方を聞くには絶好の質問である。百戦錬磨のインタビューアーだけあって、アレックス・ヘイリーもその鉄則を守ったわけだ。

 

世の中には当たり障りのない質問しかしない人がいる。しかもいつも相手に同調してしまい、いうことといえば「そうですね」「おっしゃるとおりです」「はい」……これでは話を聞いていないのかと思われてもしかたがない。相手のことを本当に理解しようと思うのなら、時には大胆な質問を投げかけることも必要だ。アレックス・ヘイリーの場合もそのような質問でマルコムXの考えをつかみ、彼の本質を引き出すことに成功したのである。

 

アレックス・ヘイリーの質問は「あなたが~しようと思った動機は何だったのですか?」というものだが、実生活においてどのように応用できるか考えてみよう。

たとえば営業の場合。あなたは乗用車を販売するセールスマンだとする。お客様に「お客様が前の車種を購入しようと思った動機はどんなところですか?」といったような質問を投げかけてみる。その返答によってお客様の趣向が見えてくるはずだ。デザインかもしれない。値段かもしれない。燃費かもしれない。それらがわかれば、あなたは次の売り込みに打って出る突破口を見つけることができるのである。

また、「動機」を「ご用件」に言い換えて「本日お客様がお越しになられたのは、どのようなご用件でしょうか?」とすることもできる。メッセージは同じだが、これでお客様がやってきた理由を把握することができる。お客様が「ただ車の値段を見に来ただけ」なのか「車を購入しにきた」のかなど見えてくれば、お客様への売り込みや説明もより適切なものにできるのだ。

質問はあなたのコミュニケーションを円滑にする道具(ツール)である。それを上手く使いこなすことによって相手の気持ちをつかむか、それとも当たり障りのない日常会話で終わらせてしまうか。わかっているつもりと実際にわかっているとの違いはそこにある。相手とどうしてもコミュニケーションが上手くいかない場合、相手の気持ちを自分勝手に解釈していることが多いのだ。そのような時には、まず相手の気持ちを確かめる質問が効果的なのである。

 

ここでは、『プレイボーイ』の最高のインタビューアーと呼ばれたアレックス・ヘイリーの質問を見てみた。インタビューされる人に、そこに来た理由をいきなり聞くことは、まったく正当な質問のやり方なのだとわかった。それは、マルコムXの気持ちをいち早く知るために投げかけた、アレックス・ヘイリーの大胆な質問だったといえるだろう。プロのインタビューアーは質問の効用をよく知っているのである。

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