教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

第11回:Why型思考は「サボりの美学」
~そのままくんはまじめさが仇に~

COLUMN

前回はWhy型のなぜなぜくんは「戦わずして勝つ」ことを目標とし、What型のそのままくんがいかに「うまく戦うか」に腐心することとの違いを述べました。今回はその応用とて、Why型思考の「サボりの美学」について考えてみたいと思います。

 

Why型思考とはサボるために考えること

 

Why型思考のなぜなぜくんは「いかに戦わないか」を考えるということでした。これをさらに進めて考えると、なぜなぜくんは「サボり上手」ということが言えます。前回紹介した事例で「いまある会議をいかに効率化するか」を考えるのはWhat型思考で、Why型思考は「いかにその会議をやらずに済ませるか」と考えるというものがありました。
これは長期的な計画で会議をやらずに済ませる方法(別の形で情報共有するとか役割分担を変えて、そもそも意思決定を速くできるようにするとか)を考えるとことを意味していましたが、もっと短期的かつ端的に言えば、「案内が来た会議は出席するものだ」と考えるのはWhat型思考だということです。
Why型思考では、案内が来た会議についても、その上位目的を明確に意識するとともにそこで自分がどういう貢献ができるかを考え、本当に意味がある会議であればそこに必ず仮説を持って望み、そうでなければそもそも出席する必要はなく、別のことをやったほうがよいと考えます。
「そんなふざけたことはできないよ」という声が聞こえてきそうです。でもよく考えてみて下さい。「案内がきたから」という理由だけでその会議に出席し、居眠りまではしなくても死んだ魚のような目をして何の発言もせずに1-2時間を無益に過ごすのと、思い切って「サボって」その会議の上位目的を果たすために自分で別の調査をしてみるとか、別の関係者と意見の調整をするとか、能動的に自分が最大限貢献できることを考えるのとどちらが「誠実な対応」と言えるでしょうか。まあこれは何を重要視するかということで、まさに「直接目に見えるが表層的なこと」を重視するWhat型思考と「直接目には見えないが本質的なこと」を重視するWhy型思考の根本的な意識の違いということもあるでしょう。
また念のため断っておきますが、上のようなことをやるためには「周囲の理解」も必要です。周囲がWhat型思考の人ばかりの組織や「規律を重んじる」組織でこれをやったら下手をしたら「明日から来なくてもいい」ということにもなりませんから、「取り扱いには十分注意」して下さい。

 

実はサボる方が楽じゃない

 

逆の面から考えてみると、何でも与えられたものをそのまま受け止めてしまうWhat型思考のそのままくんというのはその「まじめさ」が仇になります。【表1】を見てください。これは「サボり」に関しての行動パターンを「松竹梅」の3レベルに分類したものです。

 

【表1】「サボり」の松竹梅

  会議案内に対する反応 周りからの想定反応


(Why型思考)

貢献できそうなら仮説を持って望む
そうでなければ欠席して別のことをする
結果を出さなければ非難される


(What型思考)

「案内をもらったのだから」
必ず参加する(心のサボり)

結果を出さなくても非難されない


(論外)

単に面倒で時間がないから出ない そのうち相手にされなくなる

 

まず一番下の「梅」レベルは何にも考えずに単に怠惰からサボること。これでは何の生産性もないばかりか個人も社会も成長がないですから、ある意味「論外」と言えます。次の「竹」レベルというのが「まじめな」What型思考のそのままくんの行動パターンです。呼ばれた会議には律儀に出席するので、誰からも非難されることはありませんが、だからといって本当に成果が出せているかどうかは別問題です。
そして一番上のレベルがWhy型思考のなぜなぜくんの行動パターンです。「必要性がなければ出ない」というのがそれです。つまり意味がないと判断すればあえて出ないという行動を取るということです。これが「松」レベルということになりますが、表面上同じように見える「梅」レベルとの決定的な相違というのは、「受動的な欠席」なのか「能動的な欠席」なのかということです。呼ばれた会議やイベントに出なければ、通常であれば非難の的となりますから、あえてこれを実行するにはそれなりの結果や「欠席して何をしたか」が厳しく問われるため、実はこれは「竹」よりもはるかに大変なことなのです。
「上位目的に忠実であり、手段には必ずしも忠実でない。」
これがWhy型思考の哲学であり、これまで述べてきたとおりです。
「会議」という例でお話しましたが、これを「トレーニング」と置き換えれば人材育成の担当の皆さんにも直接関係する話になってくるのではないかと思います。ついつい管理側の視点に立って表面上の「出席率」で評価を下してしまうという場面がないでしょうか。もちろんケースバイケースですが、「出席率」ではWhy型思考の人を評価することは難しいと言えるでしょう。

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.