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第8回:「満点は100点」のWhat型、「もともと満点なんてない」Why型
~なぜなぜくんはまず答案用紙を「破り捨てる」~

COLUMN

前回はWhy型の人材(なぜなぜくん)が育つための教育とWhat型の人材(そのままくん)が育つ教育が180度違うことをお話しました。What型の人材は受身でも「育てられる」のに対してWhy型の人材は自主的に「育つ」ことはあっても他人から「育ててもらう」ことは不可能ということでした。今回も人事担当者の皆さんに直接関係の深い人材育成という観点から、What型のそのままくんとWhy型のなぜなぜくんの違いを見て行きたいと思います。

 

与えられた問題を解くための受験教育

 

これまでの日本の教育は典型的なWhat型といってもよいでしょう。少なくともいま企業で主力となっている世代が受けた教育は知識詰め込み型のWhat型教育が中心であったことを否定する人は少ないでしょう。今でもアジア諸国はこの傾向が強いと言われていますが、これは過去の連載でも述べたとおり、正解を速く覚えて実行する「キャッチアップ型」には適していますから、他のアジア諸国に関してはある意味理にかなっているといえますが、いまの日本にそぐわないことは明白です。
What型教育の弊害のひとつとして挙げられるのが、特に試験対策においては、「与えられた問題で100点満点を取る」ことがひとつの究極の目標になっているということです。ここには2つの大きな根本的問題があります。一つ目は与えられた問題を「ありき」として、問題そのものが間違っているということを疑う癖がなくなってしまうことです。そして2つ目の問題は、「満点が存在する」という意識が根付いてしまうことです。
これをイメージで示したのが下図です。

 

 

What型のそのままくんは100点を取った途端に安心して思考停止し、それ以上の努力をやめてしまいますが、Why型のなぜなぜくんにはもともと「満点」という概念が存在しませんから、100点を取ったら次は200点、さらに300点と、問題そのもののハードルを上げながらそれをクリアすることによって常にレベルを上げようという意図が働いているのです。

 

まず答案用紙を破り捨てよ

 

では、これまでのWhat型に見られた上述の2つの「悪癖」から脱するにはどうすればよいか?
まずは与えられた問題が必ずしも正しいものではないということを疑ってかかるということです。言い方を換えれば、「これを解いてください」と渡された答案用紙をもらったら、「さあ、この問題で100点を取るぞ!」と解き始めるのではなく、「そもそも解くべき問題はこれでよかったのか?」と考えてみることです。例えばトレーニングのカリキュラムについて上司から「○○コースのやり方を考えて」と言われたら、即座にその「What」を信じて講師(Who)、会場(Where)、時間(When & How long)といった具体的実行手段を最適にすることを考えるのではなく、なぜ(Why)そのトレーニングが必要なのか、そもそもWhatとしての○○コースはそれでよいのか、もっと適切なコースがあるのではないかと、与えられた問題自体を疑っていくことが重要です。
そう考えれば、Why型のなぜなぜくんにとって「満点」は存在せず、常にそれを上回るモチベーションが沸くというイメージを理解してもらえるのではないでしょうか。先のグラフで示したように、Why型思考に「満点」は存在しません。つまり、「これでできた!」というスッキリした状態があるというよりは、常に「もっと良い答えがあるのではないか?」とモヤモヤが続くことになります。Why型思考の実践には、常にこのモヤモヤ感に耐える必要があるのです。

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