感情には「いい感情」と「悪い感情」があります。「いい感情」は私たちの仕事や人間関係に肯定的な気持ちをもたらしてくれますが、「悪い感情」はその逆です。仕事の安定感やパフォーマンスを低下させ、考え方や人間関係へも悪影響を与えます。言い方を変えれば、「悪い感情」さえコントロールできれば、私たちの毎日は大きく違ってくるはずです。そこで、本連載では、悪い感情をコントロールするための技術を紹介していきます。
今回は、知り合いや会社の人間から挑発を受けたときの対処法について学びます。どのような場所でも、嫌な挑発をしてくる人間はいるものです。実際にこのような状況に遭遇した場合、どんな反応をするのがベストなのでしょうか。
難しい感情コントロールの一つに、他人の挑発をどうかわすかというものがあります。「挑発」という言い方は少し大げさかもしれませんが、相手の言葉の端々にこちらの感情を逆なでするような言い回しや悪意を感じることがあります。
そういうときでも、「取り合わない」「気にしない」という態度を取ることが大事なのですが、理屈では割り切れても、感情は割り切れません。ついカチンときて「どういう意味だ」と詰問してしまい、相手の反応によっては、さらに怒りが込み上げてくることもあります。
こういうことは、仲間内のやり取りでも仕事上のやり取りでも起きます。日ごろからあなたにいい感情をもっていない人間ほど、挑発的な言葉をぶつけてくるのです。もちろん相手が悪いのですが(感情攻撃を仕掛けてくるという意味で)、言い争いになってしまえばどちらも醜態をさらすことになります。職場の雰囲気も悪くなりますし、仕事の上でもマイナスにしかなりません。怒れば損だということは、皆さんもわかっているはずです。
では、実際に挑発をされたときは、どのような反応をすればいいのでしょうか。答えは至ってシンプル、
どういう相手であっても、悪意のこもった言葉を投げかけられたときにはすぐに反応しないこと
これだけを心がけてください。
カチンと来るのは一瞬のことですから、その一瞬をとにかく無言でやり過ごす。それさえできれば間が生まれます。1秒でも2秒でも間が生まれれば、相手も「言い過ぎたかな」とか「怒らせたかな」というためらいが生まれます。すると、お互いに間が生まれてくるのです。短い間であっても、売り言葉に買い言葉でいきなり口論が始まることだけは避けられます。冷静さが戻れば怒りもだいぶ収まってくるでしょう。それによって最初のピンチを乗り越えることができれば、あとは大丈夫です。
仮にしつこく挑発する人間がいたとしても、最初の怒りを抑えたことで精神的な余裕が生まれます。「まだ何か言ってるな」ぐらいの気持ちで聞き流すこともできます。そうなれば相手もだんだんシラけてきます。どんなに挑発しても、反応がなければ自分がバカみたいだからです。
言葉を返すというのは相手と正面から向き合うことです。怒りが込み上げたときに相手と正面から向き合えば、それだけで対決する気持ちになります。そこで何か言葉を口にすれば、当然態度も敵意むき出しになります。これでは怒りがますます燃え上がります。その点、無言は楽です。相手を見る必要もないし睨み返す必要もありません。間を置いて瞬間的な怒りさえ抑えることができたら、用件を切り出すなり、その場に他の人がいるならその人に話しかければいいからです。時間の隙間が相手との距離にも隙間を作ってくれます。
間を作るというやり方の利点として、怒りをやり過ごせることが挙げられます。これができれば、多少の考える時間が生まれます。考える作業がさらに怒りを静めてくれる効果を生み出します。
怒りが最悪の結果をもたらすのは、乱暴な結論を出してしまうときです。のらりくらりと言い訳を繰り返す相手にカッとなれば「もういい!」となります。仕事ならチーム解散、議論打ち切りです。混乱状態を一人で乗り切る破目になったり、積み重ねてきたものを全部ぶち壊すことにもなりかねません。
相手の挑発に乗ってしまったときも同じで、あとで後悔するような結論を強引に出してしまいます。「しまった」と思っても遅いのです。間を置いて怒りを少しでも静めることができれば、そういった乱暴な結論を出す前に自分の考えを確認することができます。「この線は譲れない」とか「この条件だけは納得させなくちゃ」といった、本来の目的を見失わずに話を続けることができるのです。
つまり、自分のペースを取り戻すということです。怒りは挑発に乗ることで相手のペースに乗せられてしまうことにもなります。悪意のこもった言葉をぶつけてくる相手は最初からこちらに悪感情を抱いているのですから、何もそのペースに乗せられる必要はないのです。
まとめ