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あの人は敵?味方?
2分割思考をやめて、人間関係を円満に

KNOW-HOW

 感情には「いい感情」と「悪い感情」があります。「いい感情」は私たちの仕事や人間関係に肯定的な気持ちをもたらしてくれますが、「悪い感情」はその逆です。仕事の安定感やパフォーマンスを低下させ、考え方や人間関係へも悪影響を与えます。言い方を変えれば、「悪い感情」さえコントロールできれば、私たちの毎日は大きく違ってくるはずです。そこで、本連載では、悪い感情をコントロールするための技術を紹介していきます。

 

 

 

 今回は人間関係に関する感情コントロール術を紹介します。職場に限らず人間関係は複雑に絡み合い、広がっていきます。一対一の付き合いだけで完結するということはあり得ません。そういう広がりの中においては、「嫌いな人」が存在することも多々あります。しかし、こうしたなかで決して陥ってはならないのが「2分割思考」です。

 

 

ちょっと危険な思考法……2分割思考とは

 

 

 私たちの感情を悪化させる思考法の一つに、「2分割思考」があります。ものごとを白か黒か、そのどちらかに分けてしまう思考法です。シンプルといえばシンプル、便利と言えば便利な思考法ですが、それだけに非常に適用範囲が広いのでやっかいな問題を起こします。

 

 

 たとえば、他人を好き嫌いの感情だけで色分けする人がいます。わかりやすい例を挙げてみましょう。

 

 

 

 「あの人は好き。だから信用できる」

 「あの人は嫌い。だから信用できない」

 

 

 

 こんな言い方をする人がいます。少しも珍しくありません。あなたもときどき口にしているかもしれません。しかし、冷静に考えてください。言い方が変だと思いませんか?では、こちらはどうでしょうか?

 

 

 

 「あの人は信用できる。だから好き」

 「あの人は信用できない。だから嫌い」

 

 

 

 先に挙げた言い方より、いくぶん理性的です。前者は感情優先、後者は理性優先です。少なくとも二つの言い方を比べれば、そんな結論が出せるはずです。

 

 

 2分割思考を人間関係に当てはめると、他人に対して「好き」か「嫌い」か、あるいは「敵」か「味方」かといった意識を持ってしまいます。その結果、悪い感情につかまってしまうと、周囲には「嫌いな人」や「敵」がどんどん増えていくのです。昨日までは味方だと思っていた人が敵と仲良く話しているのを見ただけで、「Aさんも私の敵なんだ」と思い込んでしまいます。好きな人が嫌いな人と歩いているのを見ただけで、二人とも嫌いになってしまいます。

 

 

 

2分割思考の問題点 ①理性的な判断ができなくなる

 

 

 けれども、2分割思考にはもっと危険な側面が隠されています。「好き」とか「味方だから」といった感情だけで相手を見てしまうと、冷静な判断ができなくなるのです。好きな人の意見にはとりあえずうなずいてしまったり、敵だと思っている人の意見には理由もなく反対することがあるからです。好きだから、味方だから信用できるというのも同じです。感情が理性より先立ってしまい、判断を誤らせることがあるのです。

 

 

 つまり、2分割思考に陥ってしまうと、曖昧なものや中立的なものを許さなくなります。とにかく白黒をつけないと気が済まないのです。そして、相手が自分の敵なのか味方なのかを気にしはじめます。「この人は私の味方だ」と思える相手となら付き合えても、「敵だ」と思ってしまえば付き合えなくなります。しかも自分の味方は常に自分に賛成してくれる人間だと思い込みます。この思い込みが当人を苦しめるのです。

 

 

 たとえば、Aさんを自分の味方、Bさんを敵だと思っている人がいます。この人は自分の意見とBさんの意見が対立したとき、Aさんが当然自分の意見に賛成してくれるものだと思っています。味方なんだからそうするはずだと信じています。ところがAさんは二人の意見を聞いて、「私もBさんに賛成だな」と答えてしまいました。さあ、どうなるでしょうか?この人はおそらく、Aさんが憎らしくなるでしょう。思わずAさんに対して「あなたは私の味方なの、それとも敵なの?」と詰問するかもしれません。口には出さなくても「Aさんは私の味方だと思っていたのに、そうじゃなかったんだ」と怒りが込み上げてきます。

 

 

 

 

 

 

 

 でもAさんにしてみれば、とんだとばっちりです。Aさんは敵とか味方とか、そんなことは考えたこともなく、ただ自分が正しいと思った意見に賛成しただけなのです。これが感情を悪化させる2分割思考です。自分が白と思い込んでいた人が灰色の立場を取ると、それだけでもう黒と断定してしまいます。白でなければ黒、灰色を認めないのです。

 

 

 

2分割思考の問題点 ②悪感情を抱くようになる

 

 

 2分割思考が対人関係に向けられたとき、もう一つの障害が現われます。相手をいったん黒と断定してしまえば、その人間の白い部分、つまり長所や魅力を認めようとしなくなるのです。実際、私たちは他人を嫌いになってしまうと、何もかもが我慢できなくなることがあります。自分でも息苦しくなるほど感情が悪化してきます。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉がありますが、その人のことを思い出すだけで不機嫌になるのですから、相当にしつこい悪感情です。

 

 

 この悪感情も2分割思考が原因です。他人に対して「嫌い」とか「敵」という意識をあまり強く持ってしまうと、その人間を黒一色に塗りつぶしてしまうのです。その結果、あいさつされても無視したり、笑顔を向けられても冷たく見返したりするようになります。その人を褒める人間がいればその人間に腹を立て、その人に親切にされても「魂胆は何だ?」と疑うようになります。万事がこんな調子ですから、悪感情が消えることはありません。他人の長所を認めようとしない態度も、そういった悪感情の表われです。

 

 

 

冷静に、客観的な視点で他人を見つめる

 

 

 2分割思考を持ち込むと、周囲にはどんどん敵や嫌いな人間が増えていくことになります。味方のつもりで付き合っていた人でも、敵と仲良くすれば「敵」、好きな人でも嫌いな人の意見に賛成すれば「嫌い」、これでは最後は孤立するしかなくなります。

 

 

 感情コントロールのできる人はどんな相手に対しても素直に長所や魅力を認めることができるという共通点を持っていますが、それは2分割思考に陥らないからです。好き嫌いや敵味方に分けず、その人のいいところを素直に認めることができるからです。

 

 

 そのような人は、仮に嫌いな人や敵対する人間が現われても、相手を黒一色で塗りつぶすことはありません。嫌いな人にも長所や魅力があることを認めるのですから、息苦しい関係にはならずに済みます。そして意見が合えば、また好感を抱くことができます。人間関係がとてもリラックスしているのです。

 

 

 

まとめ

 

 

  • 相手を「好き」「嫌い」だけで判断する2分割思考は危険

 

  • 相手を「白」か「黒」かの2択で決めず、いいところは素直に認める

 

 

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