メモを使いこなす第一歩は、とにかく何でもメモしてみることです。「あっ」と思った瞬間、反射的にペンと紙に手を伸ばしているくらいになりましょう。
さっそく、今、この瞬間からはじめてみましょう。まず「何でもメモ」。そう書くことによってスイッチが入りました。受け身の姿勢で読んでいたあなたは、具体的にメモするという行動をとることによって、アクティブなモードに入ったのです。ともかく、しばらくの間、そのモードを続けてみましょう。
ノートに書くようにきれいな文字でていねいに書こうとする必要はありません。殴り書きで十分です。自分で解読可能な範囲内であれば、どんなに汚くても全然問題ないのです。とにかくスピードを重視します。素早く書くことで、思考にも勢いがつきます。パッと見て(聞いて)、パッと紙とペンを取って、パッと書く。そのリズムが快感になります。少し大胆なくらいの字を書く方が気持ちいいかもしれません。
内容も、どう書こうかあれこれ考えません。直感を信じて反射的にひとこと書きます。往々にしてそれが正解です。なかにはあとでメモを読み返して「どうしてこんなことをメモしているんだろう」と思うこともあるかもしれません。メモとしては失敗ですが、何だったんだろうと考えてみることにも意味はあります。
書き続け、見返し続けることによって、メモの取り方も自然と洗練されていきます。技術の向上を考えるのではなく、とにかくメモをとること、メモをとるクセをつけることに集中しましょう。
なかには「何でもメモしましょうといわれても、何をメモしたらいいのかわからない」という人もいるかもしれません。そんな人は、目的から考えてみましょう。
まずは、忘れないためにメモするものです。アポイントの内容(いつ・どこで・誰と・何を)などはその代表です。スケジュールは手帳で管理するという人も、移動中に突然かかってきた電話で、しかも時間に余裕がない、というケースがあるでしょう。鞄から手帳を出して、スケジュール欄を開いて、という時間もない。そんな場合は、頭で記憶しようとせず、とりあえずささっとメモして、後でゆっくり手帳に書き込めばいいのです。それから、忘れ物も意外に多いものです。持っていかなければならないものや買いたいもの(買わなければならないもの)も品名・メーカー名・型番などのデータとともにしっかりメモしましょう。
しなければならないことを忘れないためのメモもあります。誰かに電話しなければならない、メールしなければならない、手紙を書かなければならない。いずれも、そうしなければならないことがわかった時点ではすぐに取りかかれないけれど、後で必ずしなければならないというケースです。この場合も、発生時点でしっかりメモしておきます。
また、使えそうな情報をキープするためにするメモもあります。たとえば、話のネタになりそうな情報。テレビや新聞・雑誌、あるいはインターネットなどで、思わず人に話したくなるような興味深い話、おもしろい話を目にすることがあるでしょう。それもささっとメモします。同僚や友人だけでなく、仕事の取引先との雑談でも使えそうな情報はたくさんあるはずです。
詳しい内容まで書かなくても、タイトルや見出し程度のキーワードをメモしておけば十分に思い出せるでしょう。数字のデータなどがあれば、一緒にメモしておけば、さらにいい話題が提供できます。
企画のネタになりそうな情報も、ぜひメモしておきたいことです。企画のネタといえば、アイデアも重要なメモの対象です。ふとした思いつき、ひらめき。なかには、どの企画に使えるというわけではないけれど、なんだかおもしろそうなことを思いついた、ということもあるでしょう。そうしたこともしっかりキャッチしてメモします。おもしろそうなことは、いつか形を変えて何かの役に立つかもしれません。
メモ帳がない時には、なんでもメモ用紙にしてしまいます。デスクまわりならいくらでもあるでしょう。ただし、すぐにほかのものに紛れてしまうようなものはいけません。よく、電話をしながらメモ帳を探し始め、置いてある資料を裏返してささっとメモするような人がいますが、そのままあわてて飛び出していったりすると、後で何にメモしたかわからなくなってしまったりします。手近な紙であれば何でもいいとはいえ、たとえば、その部分をちぎって持って行けるようなものにしましょう。
外出先でメモ帳がなければ、レシートの裏側、テーブルナプキン、箸袋など、何か書けるものがないか周りを見回しましょう。緊急事態であれば、ゴミ箱に捨ててある新聞紙の端をちぎる、トイレに入ってトイレットペーパーを数センチちぎる。その気になれば、何かあります。
しかし、筆記具がなければ、これはかなり厳しくなります。近くにコンビニ、駅の売店などがあれば簡単に買えますが、必ずしもメモしたい時、近くにそういった店が目につかない場合もあります。そんなことはめったにないよと思うでしょうが、シャープペンシルの芯がなくなったり、ボールペンのインクが切れたりという間の悪いことがまま起こったりするのです。
そんな時、近くの見ず知らずの人にちょっとペンを貸してくださいと言えればいいですが、そうでなければ、筆記具だけはどんな時でも書けるものを携帯するようにしましょう。
しかし、紙とペンがなくても、メモができないわけではありません。スマートフォンや携帯電話を持っていたらメモ機能が使えます。自分宛にメールを打ってもいいでしょう。ただし、いくらひとことふたこととはいえ、手書きメモに比べるとかなりスピードが遅くなります。
緊急時にそんなにちまちまキーを打っている時間はないというなら、ボイスレコーダー機能を使うのもひとつの手です。自分の声でメモしたいことをしゃべってそれを録音するという手段も、それなりに使えます。とくに、歩きながらなどというシチュエーションでは威力を発揮します。電話をしているふりをすれば、それほど周囲に違和感を与えないでしょう。
難点は、手書きメモのように目に見えないこと。後で聞き直すのは、メモを見直すよりもやや敷居の高い作業となります。それでも、書くものがない時は重宝するでしょう。ふだんからICレコーダーをよく使って持ち歩いている人は、同じような使い方ができます。