「分かりました。では、この問題をどうすれば解決できると思いますか?」……「苦情」を前向きな「問題点の指摘」に変換せよ!
「今、私は大変な状況にあるんです」「私は困っているんです」という悲鳴をよく耳にする。だが、その人はどういう危機に面していて、どういうリスクがあり、どうすればいいのか、それらのことをしっかりと理解しているといえるのだろうか。
それが分かっていないとすれば、その悲鳴は、ただの「苦情」であり、解決の糸口は見えなくなる。ゆっくりと時間をとって、おちついてそれぞれの点を煮詰めてみると、本人もなかなか理解していないことに気づく。今回は、ただの「苦情」から前向きな答えを見つけ出す質問技術を紹介したい。
まずここで、「苦情」と「問題点の指摘」の違いを考えたい。「苦情」とはなんとなく問題があるという感情的な意思表示であり、それ自体、話を聞いたとしても、前向きな答えは生まれない。ただ単に怒っている場合もあるし、不平不満の場合もある。あるいは、分かってほしいというメッセージの場合もある。しかし、そこに耳を貸すのは、同情してくれる人だけである。
問題点の指摘は理論的でなければならない。どういうことが問題なのか、どうしてそれが起こっているのか、そこまで指摘しなければ問題点の指摘とはいえない。
だが、あなたがもしも、部下や同僚から「問題点の指摘」を受けているとすれば、否定してはいけない。怒ってもいけない。しっかりと耳を研ぎ澄まして聞いてみてほしい。そこには「真実の断片」がある場合があるからだ。
しかし、ただ聞くだけでは足りない。もう一歩突っ込んで質問しなければならない。その場合の質問は、「分かりました。では、この問題をどうすれば解決できると思いますか?」である。
なぜ、この質問が効果を発揮するかというと、
という理由がある。
「分かりました。では、この問題をどうすれば解決できると思いますか?」この質問をされた人は、相手に分かるように客観的に発言しなければならない、という意識が生まれる。質問者が、問題に対して真剣に取り組んでくれるという信頼を寄せる。そして、具体的なプランの話が出てくるのだから、問題が解決される糸口が見つかる可能性がある。
たとえば、次のようになるだろう。
ある女子社員が、あなたにこのような問題の指摘をしてきた。
「○○さん、私はこの会社では情報の共有がされていないと思います。私のやっているアシスタントの仕事がどういう意味があり、どういう扱いをされているのか、知らされていないのです」
そこで、あなたは相手の話を否定せずに、「分かりました。では、情報の共有がされてないという状況をどうすればわが社は解決できると思いますか?」と聞いてみるのだ。
解決策が出てきたらどうするか。「この問題を私に伝えてくれてありがとう。この問題は~だということが分かりました。今、私がここで、解決することはできませんが、この問題を調べて、その後どうなったか、あなたに連絡させてもらいます。会社の向上に協力してくれてありがとう」
このような応対ができれば、あなたの質問が生きることになる。質問をすることで、あなたは「問題の指摘」をしてくる本人に解決案を聞くことができるようになる。そして、結果として、あなたの信頼度は上がり、問題の指摘をしてきた人もそれほど悪い思いをしなくて済むということになる。