- 2019.12.23
- INTERVIEW
第2回 SDGsの貢献企業ができるまで
はじめに
前回に続いて、一般財団法人PBPCOTTON代表理事の葛西龍也さんにインタビューになります。今回は葛西さんがこれまでPBPCOTTONで行った活動についての話題から、さらに一歩深く踏み込んで「SDGs」という思想が生まれるよりも以前から活動を行ってきた経緯や、その背景にある思想についても触れていきます。
ぜひ、自分たちのSDGsに対する向き合い方と照らし合わせてみてください。
インタビュー
━━先ほど「SDGsが生まれる前から活動を行っていた」と仰っていましたが、PBPCOTTONの始まりや経緯を教えていただけますか?
葛西:それについては、私が勤めているフェリシモという会社(※1)そのものに始まりがあると言えます。会社名である「フェリシモ」という言葉は「フェリシティ(至福)」と「シモ(最大級)」という単語を合わせて「最大級で最上級の幸せ」という意味を込めた造語です。これは実質の創業者である前名誉会長の矢崎勝彦と、現社長である矢崎和彦が『事業活動を通じて社会を幸せにすることを追求する会社』を目指して決めた社名でした。
2人は「事業活動は活動を通じてお金を生み出しているので永続性があり、国が動くよりも民間企業の方が社会を幸福にするための活動に素早く取り組める」と考えていました。
それを踏まえて、我が社では事業でお客様から頂くお金の中から商品代金以外で100円をお預かりして積み立てる『100円基金』というものを1990年に始めて、そのお金を使って植林をする活動を続けてきました。その結果インドでは、木がなくなった山が元に戻る、土地から離れていった象が戻ってくるということがありました。
その他にも、住民たちがあるがままに任せていた森にカシューナッツの果樹を植える活動も行っていました。これは収穫したカシューナッツを売れるように工夫して、住民たちの経済活動の一環にしてもらうことを目的としたものです。
━━創業家である矢崎家の思想を連綿と受け継いで、現在の形になったわけですね。
葛西:はい。その他にもフェリシモの思想には『FG』と『SD』という2つの考え方があるのですが、前者は「Future Generations」の略で「将来世代視点でものを考える」という意味。後者は「Sustainable Development」の略なのです。
━━SDGsは「Sustainable Development Goals」ですから、つまり2015年に国際社会が目指し始めた「持続可能な開発」の思想を、フェリシモは最初から持っていたということですね。
葛西:1つ違うところがあって、フェリシモでは「Sustainable Development」を「持続可能な開発」ではなく「永続的な発展」と定義しています。自分たちの予算ありきで保たれる持続性ではなく、他者と手を結んで工夫をこらし、永続的に発展を続けられる方法を考えること。先の「FG」と合わせていかに将来世代に続き、永続的な発展ができるかを考えることが何より大事だと考えています。その結果が、今のPBPCOTTONであり、そのあり方です。
━━企業活動の一部だったものを一般財団法人化させたのも、SDGsの17個目の目標に「パートナーシップで目標を達成しよう」があったからではなく、フェリシモに根付いた「FG」と「SD」という考え方によるものなのですね。
葛西:SDGsに当てはめて考えれば「自分たちの企業はSDGsに関してこれだけの事をしている」というのは本質ではなく、それをいかに永続的に続けていけるのか、世界に発信していけるのか、他社と連携してより広く大きく発展できるのかが重要なのです。
※1フェリシモ:株式会社フェリシモ。衣服の通信販売を主な事業とする。PBPCOTTONだけではなく、様々な環境支援、育成基金、復興支援などを精力的に行っている。
〈第3回へつづく〉