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創考喜楽

第7回 “声が通る人は、話も通る”

COLUMN

少し前、「人は見た目が9割」という本がヒットしました。簡単に言えば、何を話すかより、どう話すかの方が、コミュニケーションにおいては重要だ、ということです。心理学者アルバート・メラビアンの実験からわかったことですが、見かけ、つまり非言語におけるコミュニケーションへの影響は55%で、声のトーンや抑揚による影響は38%。内容はわずか7%だったのです。

 

子供の頃を思い出してみるとわかりやすい。いたずらをして父親に怒鳴られても、怒られたことは鮮明に覚えているけれど、何を言われたかは忘れやすい。反対に、褒められる時でも、いつものように大きな声で言われると、なんだか怒られているような気になってしまったことはありませんか?
そうです。見た目と、声の調子は人に対して大きな影響力を持っているのです。コミュニケーションの基礎といってもいいでしょう。このふたつ。実はとても連動しています。気持ちがいいときは、自然と笑顔が出るし、笑顔が出れば声の調子も上がりやすい。企画に自信があってノリノリのときは、声が弾み身振り手振りも絶好調でしょう。反対に、パッとしないときは、声も沈みがちだし、表情も伏目がちになっているはずです。
だったら、大きな声、調子のいい声を出せばいい。しかし、現実には大きな声を出せていない人がほとんど。なぜでしょう? 赤ちゃんの時は、自然に大きな声が出ていたのに。

 

赤ちゃんの声の通路には全く障害がありません。それに比べて、大人には姿勢が悪い、間違った体の使い方をしている、さらに酒・タバコなどの自然に声を出すことを妨げている要因があります。それに加えて、おとなの習慣、常識という大敵。職場では大きな声を出さないように、食事中は静かに、会議では余計なことは言うななど、大きな声を出すことに対して精神的にブレーキがかかることが多い。これを続けていると話すことにストレスがかかって自然に声を出すことができなくなっているのです。
これがコミュニケーションをさらに難しくしています。話すタイミングを逸して何もいえなかった。また、黙ってないで何か意見をと強要されても、小さな声でしか言えず取り合ってもらえない。これが日常化すると、声を出すことに、コミュニケーションすることに対して臆病になってしまいます。これがコミュニケーション下手の大きな原因なのです。

 

この、声を出せない症候群を解決する方法はないのか?では、簡単なやり方をご紹介しましょう。それは、いつもより30%くらい大きな声を出して話してみること。そう言われて声を出すと、多くの人がのどから声を振り絞ってしまいがち。これでは、本人の頑張りに声がついていきません。よく腹から声を出せ! と言われるように、大事なのは腹式呼吸。これができていないと、カラオケの後のように声が嗄れてしまいます。
腹式呼吸のコツは、3秒間鼻から息を吸って、2秒間止めて、15秒間かけてゆっくり、少しずつ口から息を吐き出す。肺が空っぽになるので、自然に息が吸いやすくなる。これを繰り返していると、お腹がふくれたり、引っ込んだりするのがわかるようになるはずです。

 

次に、ふーと息を吐くとき、音を出してみてください。お腹から声が出ているのが感じられるでしょう。これが腹から声を出している感覚。コツをつかんだら、声を大きく出してみる。のどに負担がかからず、通る声が出ているはずです。周りの人にチェックしてもらってください。
こうなったら、しめたもの。張り上げなくても、通る声が出るので、みんなも注意して聞くようになるし、そうなると自信もでて見かけもゼスチャーも伴ってくる。話すことが、コミュニケーションすることが楽しくなってきます。まさに、話の通る人。間違いなく、話すことがやみつきになりますよ。

 

拙書「ある日、ボスがガイジンになったら!?:英語を習うよりコミュニケーションを学べ」の、第2章ハッピーの法則 Speak louderに詳しく説明してあります。興味のある方はご覧ください。

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