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創考喜楽

第5回 “褒め上手は、人間上手”

COLUMN

ある会社のことです。業績はどんどん下がり、社員のモチベーションも下がる一方。社長は怒鳴って発破をかけますが、一向に変わる気配もありませんでした。
その会社をじっと観察してみました。静かです。出勤した社員が、仕方なさそうに、おはようございます、と挨拶しても誰も声をかけません。それどころか社長は、顔さえ上げません。これが第1の問題でした。

 

コミュニケーションにおいて、最悪なのが無視という行為。人間は本質的に他人との交流を通して成長します。心理学ではストロークという言葉を使いますが、元々の意味は、なでる、さする。抱きしめる、褒める、よく聞く、励ます、頭をなでるなどの行為はプラスのストロークとして成長の要因になります。
一方、怒る、殴る、批判する、相手を見ない、聞かない、無視するなどは、マイナスのストロークとして成長を妨げる要因になってしまいます。
おわかりのように、この社長はマイナスのストロークを社員にためさせていたのです。これでは、やる気が出てくるはずもありません。

 

で、次の日から抵抗する社長に、挨拶をしてもらうように説得。
一番驚いたのが社員でした。社長からおはようのひと言。戸惑いながらも、挨拶を返す社員の顔は悪くありませんでした。
社長もその反応に悪い気はせず、もっと積極的に、
どう元気?
その洋服、似合うね!
昨日は遅かったのに、ごくろうさん!
あの企画書よくできてるね!
などなど、どんどん自然に言葉をかけるようになりました。
そうなると、社内は笑顔、明るい声でやる気もアップ。それにつれて、業績も回復してきました。

 

実に他愛もないことです。誰でもすぐにできること。なのにできなかったのはなぜ?
それは、人は誰でも、人に認められたい、と思っていることに気づかなかったからです。おなじみの心理学者マズローの5段階欲求説(生理欲求、安全欲求、所属欲求、承認欲求、自己実現)の4番目、承認欲求。じぶんの環境に不満がなくなれば、人は人に認められたい、すごいといって欲しい。この欲求が強くなります。
なので、無視されるのが辛い。評価されないのに我慢できない。
しかし、特に日本人はそのことを言えないで、内にためる、陰で言う。これでは、社員のモチベーションが上がらないのは目に見えています。
この社長は素直だったから良かった。でも、なかなか耳を傾けない人が多いのが実情です。

 

そこで、ガイジンを見てみましょう。彼らはいつもニコニコしている。で、やたらと褒めまくる。素敵なシャツだね、コンペは負けたけどいい企画だったよ、などなど。ちょっとやりすぎと思うこともありますが、言われた人はオーバーだなあ、と思っても悪い気はしない。それどころか、だったらこの人のためにがんばってやろう、という気まで起こってくるのですから。

 

ガイジンが承認欲求のことを知っているかどうかはわかりませんが、人は褒められればやる気になることは知っています。それどころか、コミュニケーションがうまくいくことも知っています。意外にも、人間のことが上手。いいことは誰からでもいい、さっと学びましょう。真似るは学ぶ、です。
拙書、“ある日、ボスがガイジンになったら!?”の第6の法則Rewardの項に、7つの言葉を使って解説しています。ご覧ください。

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