前回は「地頭力とはなにか?」ということを、人間の知的能力の中での位置づけや「問題解決」に占める役割といった点から解説しました。引き続いて今回は、そういう地頭力を分解するとどういう構成要素に分けられるのかということを解説したいと思います。
まず下の図1を見てください。
これは、私なりにこれまでの問題解決の経験から導き出した考える力としての「地頭力」の構成要素の定義です。図に示す通り、地頭力は大きく3つの層から成り立っています。下から上の順番で基礎→応用というイメージです。
まず一層目の「最底辺」というのは「知的好奇心」です。これは「考える」という行為を起動するための「ひらけゴマ」のような合言葉のようなものと言ってもよいでしょう。具体的には、ありとあらゆるものに興味を持つこと、いまあるものをその通りに受け止めるのではなく疑ってかかること、そしてそれらに対して「なぜ?」という疑問を持つことが考える行為のスタートになります。これがなければ他の力は全て意味のないものとなります。
そして次の2層目が「論理思考力」と「直観力」です。よく言われる「論理と直観」のペアです。最近はとかく「ロジカルシンキング」というのがクローズアップされますが、論理的であるということは、「当たり前のことを当たり前にする」だけということであって(これが難しいのですが)、これだけでは斬新な考えが生まれるわけではなく、必ずそこには「直観」という要素が必要になってきます。「守りの論理思考力」と「攻めの直観力」といってもよいでしょう。
以上の2層をベースとして、具体的な思考の基礎としての構成要素が①「結論から考える」仮説思考力、②「全体から考える」フレームワーク思考力、③「単純に考える」抽象化思考力という3つの思考力になります。問題解決をするにあたっての「考える」という行為のほとんどがこの3つの思考力の組み合わせの応用でできるというのが私の結論です。実際に日々の問題解決の中ではこれらの思考力をフルに活用することによるアプローチが可能です。
「結論から」「全体から」「単純に」考える。この発想は経営者的な発想とも言え、私がいつも経営層の方々とお話やプレゼンテーションをするときに短時間でわかりやすく説明するために気をつけている点でもあります。また、短期間で成長していく周囲のコンサルタントにも共通しているものの考え方が、この「結論から」「全体から」「単純に」の考え方です。こうしたことなどから、ビジネスに必要な基本的な考え方としてこの3つの考え方が重要だと結論づけるに至ったというわけです。
以上述べてきた地頭力の3層構造というのは、独立して使われるものではなく、組み合わせて用いられるものです。例えば第2層と第3層との関連を見てみましょう。図1をよく見ると、「論理と直観」という第2層の要素が第3層の3つの思考力と直角の方向で配置されていることにお気づきでしょうか。つまりこれは「仮説思考力」にも「フレームワーク思考力」にも「抽象化思考力」にもそれぞれ「論理」と「直観」の両方の要素があることを意味しています。
教育担当者としての皆さんは、こうした個々の思考力の関連を踏まえた上で、個別の思考力をどういう場面で活用し、トレーニングしていくかということを考えられれば、一層効果が上げられることでしょう。
次回から、これら6つの構成要素のうちの「結論から」「全体から」「単純に」考えるという3つの思考力について詳細かつ具体例を含めて解説していきたいと思います。