広州田園商務諮詢有限公司

 

董事長
太田 元子さん

 

終息がみえないコロナ禍によって、日本中から外国人観光客の姿が消えてしまいました。2020年5月の訪日客数は、前年同月比99・9%減の1700人というショッキングな数字が。なかでもインバウンドの主役を担っていた中国人観光客は、多額の消費で日本経済の大きな支えとなっていただけに、その影響は計り知れません。コロナ禍に苦しむ日本を中国の人たちはどうみているのか――中国滞在歴がすでに16年、流暢な北京語と広東語を話し、日中双方の観光・ビジネス事情に詳しい太田元子さんにお話をうかがいました。

 

メールを通しての取材だったため、今回もインタビュー形式で紹介します。

 

コロナが終息すれば必ず旅行先に日本を選択

 

——コロナ禍の前までは中国人の訪日意欲は依然として高かったのでしょうか

 

絶対的に高かったです。いまや多くの中国人にとって、日本へ行きショッピングをするのは欠かせない行為となっています。私の周囲にも、日本へのチケットを買っていながら、結局、行けなくなってしまった友人が少なからずいました。

 

——日本でのコロナ感染拡大を受け、中国人の入国禁止措置が取られましたが、どのように受け止められていましたか

 

残念なことではありましたが、基本的にはこの措置を理解しています。感染は全世界に蔓延しており、すべての人の健康のため、今はみなが耐える時期だと思っていますから。

 

——日本のコロナ対策や緊急事態宣言については、どう映っていますか

 

日本の感染対策については、初動が遅く、拘束力も弱いとの印象を受けました。とはいえ、この2ヵ月くらいの状況をみていると、なかなかの抑止効果をあげていると感じます。これは日本人の衛生観念や社交習慣と関係があるのではないでしょうか。

 

——コロナ終息後、以前と同じように多くの中国人が日本を旅行先に選ぶと思いますか。また、それはいつ頃になると予想されますか

 

これまで通り、多くの中国人が日本を選ぶと思います。なぜなら、日本の感染対策は他の地域に比べて優れており、みなが安心できるからです。ただ、中国経済はコロナの影響でそれなりに打撃を受けており、収入が減った人や失業した人も少なくありません。さらに両国間の航空路線もいつ従来の状態に戻るか不透明ですし、すぐに旅行熱が高まるとは考えにくいでしょう。観光客が回復するのは、航空路線の運航が再開したのち、最低でも半年くらい要するのでは。

 

いずれにせよ、コロナが終息しさえすれば、中国人は真っ先に日本を旅行先に選ぶ、これは間違いありません。

 

——中国国内では、すでに各地の観光客が賑わっていますが、「第二波」に対する不安はありませんか

 

不安はあります。最近、北京では感染が再び深刻になっており、みな緊張し始めています。しかし、今はマスクを着用することが全国民の共通認識となっていますから、年初めのような爆発的な感染は起きないはずです。それ以上に心配なのは、まだ回復しきっていない経済がまた打撃を受けることのほうですね。

 

アフターコロナは「代理購入」がブームに!?

 

——コロナ禍により日中とも経済の鈍化が指摘されていますが、海外旅行熱や旅行中の消費活動に影響を及ぼすと思いますか

 

一定の影響はあるでしょう。コロナ禍は経済にダメージを与え、多くの人が減給や失業に直面しています。加えて海外、特に欧米での感染抑止状況が思わしくないので、こうした遠くの国々へ行く機会は減り、距離が近くリーズナブルな東南アジアなどが、これまで以上に人気を集めると思います。

 

——外国人客がほぼ途絶えている中、中国の観光業も深刻な影響を受けていますか

 

それは間違いなく影響を受けています。年初に感染が爆発的に拡大し始めた頃、全国の旅行業は国家の政策に従い全面的に停止になりました。こうした状況はメーデー連休(5月1日からの5連休)にようやく改善されましたが、現在、北京で再び感染が確認されており、今年下半期の国内旅行熱にも一定の影響があるとみられ、当然、旅行業もさらなるダメージを負うことになるでしょう。

 

——中国人の多くは来夏の東京五輪を開催できると考えているのでしょうか

 

ほとんどの人が無事に開催してほしいと願っているはずです。日本旅行は簡便化されており、みなが現地でお祭りムードを体験し、そして自国の選手を応援することを楽しみにしています。開催の可否は再度の感染拡大の有無によりますが、もし日本が現在の状況を維持することができれば、あるいはワクチンが開発されれば、大いに期待が持てると思います。

 

——アフターコロナのインバウンドはどう変化すると思いますか

 

短期的には、まず代理購入が増加すると予想されます。コロナ禍においては、日本製品を愛用している人が商品を購入できませんでした。日本への自由旅行が解禁されれば、(日本へ行けた人による)代理購入が爆発的なブームになる可能性があります。

 

——香港に知人も多く現地事情に詳しい太田さんからみて、混迷する香港情勢が香港人の訪日旅行に何らかの影響を及ぼすと思いますか

 

去年の時点では、「週末は(デモで)荒れる香港にいたくないから」と日本に週末旅行に行く人が増えていると聞きました。週末ごとのデモを逃れて温泉などを訪れていたようです。今年に入ってからは、現状、ビザ免除措置も暫定的に停止されていて、ビザ自体も下りないので、物理的に日本に行くことができないようですが。どんな状況であれ、香港人の日本に対する好印象は、この先も変わらないと思います。

 

取材協力

広州田園商務諮詢有限公司 董事長

太田 元子さん

 

(2020年6月中旬に取材)

 

 

 

筆者は北海道を拠点にしていますが、中国人のいない観光地は火が消えたような静けさです。一日も早く日中双方の状況が落ち着き、観光客の笑顔があふれる日が戻ることを多くの人が願っています。

 

※ふだんは中国人観光客であふれ返る小樽のメインストリートもご覧の通り…

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