前回は「なぜいま地頭力か」というテーマでお話しました。
インターネットの時代には、単なる断片的な知識・情報は「あって当たり前」で、そこで真の付加価値を生み出すためにはそれらを自分の頭で考えて加工する必要があるということでした。今回はそれを少し別の切り口で見てみます。
まず、私たちが普段取り組んでいる「問題解決」にはどんな知的能力が必要なのかを考えてみましょう。ここでいう「問題解決」というのは、なにも難しい数学の問題を解いたりすることではなく、私たちが日常行っている「頭を使って何らかのアウトプットを出す」という行為全てのことを指します。例えば教育担当の皆さんであれば、どんなカリキュラムを組むか、どんな教材を使ってどんな講師を呼んでどんな受講者を集めるか、どうやって個々のコースの満足度を上げるか、そして教育内容の効果をいかに測定するかといった課題を解決するという普段の仕事は全て「問題解決」といえるでしょう。あるいは夏休みにどこに旅行に行こうかとか、どんなテレビを買おうかとか、日常生活の全てが問題解決の連続といえます。
これら問題解決というのは大きく3つのステップから成り立ちます。①関連の情報を収集する、②集めた情報に付加価値をつける(分類・分析する)、③結果を人に伝えるという3ステップです。これら3ステップに対応して、必要な「知的能力」が3つあるのではないでしょうか。第1ステップに主に必要なのが「知識・情報力」、第2ステップに主に必要なのが本稿のテーマである「地頭力」、そして第3ステップに主に必要なのが「対人感性力」(人に対して機転が聞くとか、空気が読めるとか、理屈ではない頭のよさのこと)です。
これら3つの能力の相対的重要性がインターネットの発展によって大きく変わりました。すなわち、ネットによって、それまで最も重要だった第1ステップで差がつかなくなった代わりに差がつくのが「どれだけ付加価値をつけられるか?」という第2ステップに移ったのです。したがって、「地頭力」の重要性が増したということになります。
先ほどの3つのステップを料理に置き換えて考えてみましょう。「おいしい料理」にも3つの要素があるのではないでしょうか。①食材、②料理の腕、③「味」以外の要素(味をいかにうまく伝えるか・・・盛り付けとかサービス等)です。これらはそのまま「問題解決」の3ステップに対応しているといえるでしょう。インターネット(コンビニや通販?)によって誰でも同じ「食材」が簡単に手に入るようになってしまったとしたら・・・そこで差がつくのは「料理の腕」ということになるでしょう。
「問題解決」における地頭力の位置づけと重要性がおわかりいただけましたでしょうか。
皆さんの日常の問題解決でも「自分が本当に付加価値をつけているか」ということを意識してみてください。
次回から、地頭力を構成する一つ一つの思考力について解説していきたいと思います。