読者の皆さん、こんにちは。細谷功です。
今回より12回にわたって、企業の教育ご担当者を対象に、ビジネスに必要なスキル、中でも考える力を中心としたお話をさせていただきたいと思います。いま企業に必要なのはどんな人材か、そういう人材が育つための条件や環境とはどんなものかについて考えていきたいと思います。
まず今回は第1回として「いま、なぜ地頭力か」というテーマでお話します。
ビジネスに必要なスキルとして、「考える力」が必要だというのは昔から言われていることです(あるいはこれはビジネスというより「人間が生きていく上で」と言ってもいいかも知れません)。
ところが、いまビジネスの世界で特に「考える力」のベースとしての「地頭力」がビジネスの現場で求められています。これはなぜでしょうか。
地頭力の定義は次回以降に詳細にお話するとして、ここでは「知識や情報」と対比した、「知識や情報を加工して何らかのアウトプットを生み出す考える力」と定義しておきます。
はじめに「知識や情報」の位置づけのこの20年の変化を考えてみましょう。
ここで以下の2つの問題に答えてみてください。
①あなたは奥様や旦那様(あるいは一番近い大切な人)の電話番号をおぼえていますか?
②アンゴラの人口を1分以内に答えられますか?(携帯or PC使用可)
20年前だったら、恐らく10人に聞けばほぼ10人とも①はYes、②はNoという答えが返ってきたでしょう。ところがいまはどうでしょう。たぶん20年前とは全く逆で、ほぼ全員が①はNoで②はYesと答えるのではないでしょうか(完璧な「IT音痴」は除きます)。
これがインターネット+検索エンジンがもたらした「知の革命」です。
つまり「知識や情報」というのは、どんどん人間の頭からITが置き換えているとともに「専門家」と「素人」の知識・情報量の差がほとんどなくなってきていることを意味します。ではどこで差がつくのか。それは「自分なりにどこまで加工して付加価値をつけられるか?」ということに尽きます。
ここで必要になるのが「地頭力」というわけです。
インターネット時代には「専門家」と「素人」の境目はどんどんなくなり、これまでの素人でも「地頭力」を発揮すれば従来の専門家を凌駕することも夢ではなくなってきています。反面で知識や情報が簡単に手に入るということは、これを安易にそのまま使おうとすれば一切自分の頭を使わなくても何となく答えらしきものが出せてしまうという思考停止の危機の時代ともいえます(コンビニで何でも買えるので、料理の腕が落ちる危機と同じかも知れません)。
以上まとめると、いまは「地頭力」を発揮するかしないかで天と地ほども差がついてしまう時代だということです。「なぜ、いま地頭力か?」の理由がおわかりいただけましたでしょうか。これがいまビジネスの世界でこれまで以上に求められる人材といえるでしょう。ここまで述べてきた理由に加えて、100年に1度とも言われる、先の見えない経済状況ではこうした人材のニーズは一層高くなることはあっても、低くなることは決してないでしょう。
教育担当者としての皆さんは、いままで以上にこうした「自分で考えられる」人材育成に注力すべきでしょう。
次回以降、具体的に「地頭力」とはどんなもので、どうやって鍛えていったらよいか、それに対して企業の教育担当者である皆さんがどうやって対応すべきか等について具体的に解説していきたいと思います。