教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

職位やテーマによって変わる研修への期待

担当者の悩み・受講生の本音 SURVEY

 

この記事のまとめ

  • 受講生が期待するのは〔日常業務ですぐ使えるツール〕の提供。研修に即効性を求める。
  • 職位が上がるにつれて傾向に変化が現れる。上位階層は手軽なツールよりも内容の充実を。
  • スキル研修は、仕事の成果に直結するからこそ、業務に合わせたカスタマイズに期待。

 

 

研修は即効性が命?!

 

担当者Xは、もやもやしていた。

 

午後のチームミーティングを終え、終業ベルを耳にした後のこと。
帰り支度を進める担当者Xのデスクに置かれているのは、某教育会社が実施した『研修実態調査』の結果である。
【満足度UPのために望まれる施策や工夫-〈受講者全体〉及び〈企画実施者〉との比較】の項が開かれていた。

 

ミーティングでは、これまでに明らかになった「研修企画への不満」を払拭すべく、
そのヒントとなる調査結果について、チームメンバーと共有していた。

 

 

 

 

調査結果によれば、受講生が研修に期待することの第1位は〔日常業務ですぐ使えるツール〕の提供ある。
受講生も忙しい合間を縫って参加しているし、業務上の課題も山積みであろう。
難しいことを考えずとも、すぐに成果に結びつくようなツールを求めるのは至極当然ともいえる。

 

そうしたツールが提供できれば良いだろうというのは、メンバーの多くが納得するところであった。
次回までに、研修受講生へのお土産となる「お役立ちツール」のアイデアを持ち寄ることで合意が作られ、ミーティングは終了した。

 

しかし、その結論に対して、担当者Xは、なにか腑に落ちないところを感じていた。

 

後輩Y

でも、研修ってそういうものなのですかね?

 

ミーティング後、会議室の片づけをしている際に、今年入社したばかりの後輩が漏らした一言だ。

 

仕事の成果向上を目的に、予算や時間を費やして集合研修は行われる。
当然のことながら、仕事に役立つということは、絶対に外してはならない要素である。
一方で、即効性を求めるあまり、ないがしろにされる部分はないだろうか?

 

さきほどのミーティングで問題提起することはしなかったが、
後輩が発した問いとは、担当者X自身も密かに抱いていたものであった。

 

担当者X

すぐに役立つツールが欲しいという考えは、もちろんとてもよくわかる。新入社員や若手社員など、仕事に慣れていないうちは、とくにそう思うだろう。しかし--

 

もやもやとした気持ちの正体を掴むべく、担当者Xは自らに問う。

 

担当者X

教育部門に配属され、多くの研修を企画し、受講生に触れてきたなかで、その考えも、少し変わってきたのではないかーー?

 

それは「集合研修の機能・役割」という根源を、問い直すものでもあった。

 

担当者X

まだ、時間はあるな…

 

腕時計を確認した後、担当者Xは帰り支度を中断する。
デスクに座り直し、調査結果の資料をめくった。

 

 

 

職位が上がるにつれて現れる変化

 

定時を回ってからしばらくの時間が過ぎ、オフィスは静けさに包まれていた。
そんななか、担当者Xは一人デスクに座り、調査資料に目を向ける。

 

担当者X

やはり、そうか。必ずしも共通の期待ではないのだ。

 

開かれているのは【満足度UPのために望まれる施策や工夫-〈受講者〉属性別】の項である。

 

担当者Xが注目したのは〔職位別〕の調査結果が示された箇所だ。
注意深く見ていると、職位があがるにつれて、望まれる施策や工夫の内容が変わってきていることがわかった。

 

 

 

 

 

まず目についたのは、〔日常業務ですぐ使えるツール〕の肯定率だ。
「一般社員」層から「部長/局長」層にかけて肯定率は右肩下がりとなり、順位も下がっている。

 

一方で、研修内容自体の充実を求める類の項目である、
〔研修実施後のフォローアップ〕や〔研修プログラムのカスタマイズ〕においては、
職位が上がるにつれて肯定率が高まり、順位も上げている

 

担当者X

例外はあるし、大きく変化が出ているわけでもない。しかし…

 

だからと言って、見過ごしてよい結果ではないと、担当者Xは考えた。
即効性ではない、たとえば「やるからにはじっくり学習したい」と期待する受講生も、ある層には確実に存在するのだ。

 

担当者X

年代や性別によっても違いが出ている。結局は、受講生次第か。

 

調査結果とは、あくまでも傾向値である。個別の事象に対する事実を示すものではない。
そのため、実際のところは、事前アンケートを取るなどして受講生の期待や不満を調査しなければならない。

 

しかし、傾向値だからといって、無益だと決めつけてしまえば、
「もしかすると--なのではないか?」という可能性を見過ごすことにもなりかねない。

 

そうなれば、無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に流されるまま、
「問い」を立てることすらしなくなってしまうだろう。

 

同じ世界で経験を積んだベテランであるほど、この危険は大きい。

 

担当者X

誰も私の報告に対して意見を返さなかったな。一人を除いては…

 

午後のチームミーティングの様子を思い起こしながら、担当者Xは呟いた。

 

 

 

業務とのマッチングが強く求められるスキル研修

 

約束の時間が近づいていた。

 

担当者Xは、退社する前に、もう一枚だけ資料をめくった。
【満足度UPのために望まれる施策や工夫-研修タイプ別 望まれる施策・工夫】の項である。

 

これまでは「階層別研修」を想定して、階層や年代を切り口とした調査結果を中心に見てきたが、
彼の組織では、「階層別研修」と同様に「スキル研修」も数多く実施している。

 

それらを企画する際のヒントがないか、最後に確かめたかったのだ。

 

 

 

 

いずれのタイプの研修においても、上位の顔ぶれは変わらない。
しかし、重視するポイントはそれぞれで異なっている。

 

「スキル研修」の多くでは、〔業務・事業内容に合わせたカスタマイズ〕が上位にあがっていた。

 

担当者X

業務に直結するテーマだから、当然のことか。

 

ただ、その「当然」が実行できているのかと問われると、
自信をもって「YES」と答えることはできないかもしれない。

 

担当者Xは、普段自分たちがどのように研修企画をしているのかを振り返る。

 

経営から降りてきたような重要テーマは、
事前に社内ヒアリングを行い、綿密に打ち合わせをして企画しているが、
一方で、実施するテーマだけ決めて、後はベンダーの提案任せ、というケースもゼロではない。

 

「この研修で、受講生はどう変わるのか?」と、ベンダーに尋ねることがある。
しかし、それを聞くということ自体、もしかすると、おかしなことなのかもしれない。

 

受講生や職場の現状に向き合うことができているのであれば、研修のゴールに対するイメージは自然とできているはずだ。
そうであれば、問うべきは、自分たちが希望・設定したゴールを「どのように実現するのか?」という点であろう。

 

担当者X

…いかんな。こうした調査結果を見ていると、次々と課題が浮かんでくる。

 

そろそろ、オフィスを出なければいけない時刻だ。

 

頭に浮かんできた課題への対策を考えるのは、次の機会にする。
担当者Xは調査資料を引き出しにしまい、そこで仕事を切り上げた。

 

帰り支度を整え、照明を落とし、オフィスを後にする。

 

担当者X

…意見を聞いてみよう…彼女にも…

 

そう言って、担当者Xは夜の街へ向かった。
約束の時間には、まだギリギリ間に合いそうだった。

 

 

 

次回、新エピソード開始!

大手企業の役職者として数多くの研修に参加してきた父と、
入社した企業で研修企画を行う部署に配属された娘
二人が酒を酌み交わす時、研修を巡る本音と悩みがぶつかり合う。
その衝突は、果たして建設的な示唆を得る契機となり得るのか?

 

次回の記事を、お待ちください。

 

 

 

〇お問い合わせ
本記事は、株式会社アイ・イーシーが2017-2018年に実施した「研修実態調査」の結果をもとに作成しています。より良い研修プログラムをご検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。

 

株式会社アイ・イーシー 企画開発部 研修開発室

Tel:03-3263-3306  Mail:kensyuteam@iec.co.jp

 

2018年11月20日 公開

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.