前回までは、幸せになるための4つの因子をそれぞれ説明していきました。
今回は、幸福に関連するちょっとした豆知識を紹介します。
もちろん、幸福になるためのヒントも隠されていますので、生き方の参考としてご活用ください。
「もう少し収入が多かったら…」、「もう少し頭がよかったら…」など、収入や知能、身体的魅力がいまと違っていたらと、つい思ってしまうことはあると思います。
確かに、いまと違っていたら、人生は違っていたかもしれません。しかし、実は、いまと何かが違っていても、幸福感とはあまり関係がありません。人生は違うものになっていたかもしれませんが、より幸せな人生だったはずだとは言い切れないのです。にもかかわらず、私たちはつい、「もう少し◯◯だったら…」と思いがちです。
これは日本人の国民性かもしれません。2012 年調査会社のカンター・ジャパンが21 ヵ国の16歳以上の男女を対象に、財産の所有と幸福感に対して行った調査によると、「もっと多くの財産があれば幸せなのに」と思う人の合計は、上位からロシア、中国に続き、日本は3 番目でした。
日本人では約65%の人が「もう少し財産があれば幸せ」だと思っていたという結果です。真逆なのはアメリカで、「もっと財産があれば」と思う人はわずか16%しかおらず、むしろ59%の人が否定的でした。
最近は日本でも物質的な豊かさよりよも心の豊かさのほうが大事だと言う人が増えてきましたが、この結果を見ると、日本人は欧米の人よりも物質的に満たされていないということが言えます。
日本語の「幸せ」は、もともと「し合わせ」でした。「し」は動詞の「する」の連用形です。
つまり、何か二つの動作をして合わせることが「し合わせ」の定義でした。昔は、「し合わせ」にはいい意味も悪い意味もあったということです。それがいつしか、いい意味だけが使われるようになりました。
国や言語が異なると幸せのイメージも異なります。たとえば、英単語の「happiness」は、人生の幸福から楽しくうきうきとした感情まで、広い意味を含む一般用語です。これに対し、心理学の分野では、幸せは「well-being」という言葉が使われてきました。well-Being は、辞書を引くと幸福、福利、健康と、幸福よりも広い意味があります。
つまり、日本語の幸せと「happiness」や「well-being」は意味が違うのです。ましてや「し合わせ」となるとさらに違うということです。
各国の研究者による幸福研究によると、主観的幸福感を得られる余暇の過ごし方は、テレビや映画を観るよりも、園芸やスポーツを実際にやることのほうが満足感が高いようです。
また、何かものを買う物質的な消費よりも、何かを体験することに対価を払う、体験的な消費のほうが主観的幸福感を高められるという報告もあります。
さらに、音楽や陶芸、絵画、ダンスなどは、鑑賞して楽しむより、自分でそれを創造するほうが主観的幸福感が高まるようです。
たとえば、美術館で絵画を鑑賞して、とても豊かな、幸せな気持ちなることがあると思いますが、さらに自分で描いてみると、いっそう幸福感が高まるということです。
余暇はのんびり、受け身で過ごしている方も多いと思いますが、能動的に何かを自分で行ってみると、余暇がさらに充実して、世界も広がるかもしれません。
月曜日になると憂鬱になる「ブルーマンデー症候群」と似ている症状で、「サザエさん症候群」というのがあります。
日曜日の午後6 時半から放送されているテレビアニメ「サザエさん」を観るくらいの時間帯になると、「また明日から仕事だ」と憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える人がいるそうです。
実際、自殺者は月曜日が最も多く、土曜日が最も少ないことが知られています。また、からだの不調を訴えることが最も多いのも月曜日、脳卒中や心筋梗塞も月曜日の発生が多いというデータがあります。
なぜ月曜日に憂鬱になり、体調不良まで起こるのかというと、土日に寝坊したりする不規則な生活習慣が原因ではないかという意見がありますが、私は、それよりも、職場や学校での仕事や人間関係が負担になっているからではないかと思います。
私の場合、いまは仕事が楽しく、日曜の夜、月曜の朝に憂鬱感はありませんが、会社員の頃は確かにストレスを感じていた時期もありました。なんとも言えない重苦しい気分はよくわかります。
これを抜け出す特効薬はわかりませんが、サザエさん症候群にならないコツはいくつかあります。
一つだけご紹介すると、土日も平日のように活動することです。土日に休むから月曜日がおっくうになってしまうのですから、土日も何か活動していると月曜日も関係ありません。土日は、仕事でなくてもいいのです。平日の活動のリズムを維持できる何かを始めてみてはいかがでしょう。
北海道・帯広の十勝平野に毎年10 万人もの人が訪れる観光地「紫竹ガーデン」があります。オーナーは90 歳という高齢の紫竹昭葉さんです。
紫竹さんは58 歳のときに最愛の夫を亡くし、毎日泣き暮らしていたところを娘さんに励まされ、63 歳のときに「花の庭をつくりたい」と、十勝平野に1 万5000 坪の土地を手に入れ、花を植え始めました。
庭づくりの経験も資金もなく、年齢も若くなく、周囲には反対されたそうですが、それから20 年余り、紫竹ガーデンは旭川、富良野、十勝を結ぶ北海道ガーデン街道の7 つのガーデンの一つにも選ばれています。
私も紫竹さんに実際にお会いしました。
ユーモラスでユニークで、力強く、お元気です。ガーデンを案内してくださっている間もずっと冗談の連発、大笑いの連続でした。そして、皆を包み込むような優しさにあふれていました。これからの高齢社会のまさにお手本のような、輝いている女性でした。
紫竹さんを見ていると、いくつになっても何かを始めることはできるのだと励まされます。人を幸せにすることができれば、自分も幸せになれるということです。
幸福に関する豆知識集、いかがでしたでしょうか。
次回はついに最終回です。
幸福を掴むためには何をすれかいいのか。最後のまとめを掲載いたします。
どうぞ、楽しみにお待ちください。