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第6回:アナロジー思考を発想力につなげるために ~「雑学博士」と「アイデアマン」を分けるもの~

COLUMN

アナロジー連載6回分のまとめとして、今回はアナロジー思考を徹底的に活用することで発想力を高めるためのヒントをお話したいと思います。

 

 

アナロジーとは「つなげる力」

 

 

アナロジー思考を活用するために必要なのは「共通点を探すこと」でした(3回前を参照)。さらにその共通点というのは、表面的なものではなくて「構造的」なもの、あるいは個別の事象ではなくてそれらの「関係性」が重要でした。

 

別の言い方をすれば、アナロジー思考の強さというのは抽象化思考による共通点発見の能力と言う事ができるでしょう。物事を常に具体的事象のみで捉えるひとほど共通点発見が不得意と言えます。具体的に物事を見るというのは決して悪いことではないのですが、これだけでは応用が効きません。

 

アイデアを豊富に生み出すために必要なことは大きく2つあります。一つは多種多様な経験は知識、それもなるべくバリエーションや多様性の大きいものを身につけることです。「アイデアは遠くから借りて来た方が良い」ことを考えればこの意味がわかるでしょう。

 

ただし、これだけでは単なる雑学博士となってしまい、なかなか応用が効きません。そのために必要なもう一つのことというのが、「全く違う(ように見える)事象」を自分の関心ある領域とつなげる能力です。単なる雑学博士と発想豊かなアイデアマンとの違いを分けるのがここです。発想豊かな人の一つの側面というのは、一つの経験をその経験だけで終わらせずに様々な分野に応用できることにあります。

 

「引き出しにしまう」ところから勝負は始まっている

 

アナロジーは誰もが持っている能力であることは前述の通りですが、これをどこまで「骨までしゃぶって」徹底的に活用できているかというと、かなり疑わしいのではないかと思います。それほどにアナロジーの考え方は「ありとあらゆる場面」に活用できます。

 

そのためには少しでも尖った経験、「あれ?」と思うような経験をしたときに、常にそれが他の世界にも使えないかと考えてみるというのが一つのポイントです。この場合にもう一つのコツがあります。それは、この体験をすぐに他に流用できるような場面がなくともそれをある程度抽象化・一般化した状態とセットで記憶しておくことです。よく「頭の引き出しに入れておく」等という言い方がありますが、これはつまり特徴をとらえて一般化したインデックスとセットで個別の事象を記憶しておくということです。

 

これによって、次にこうした場面が登場したときすぐに、前に引き出しに入れた話題を「流用」できるということです。たとえ話が巧妙な人というのは、その場の思いつきの力が強いのはもちろんですが、身の回りの話題になる事象を単に覚えているだけではなくてそれを抽象化して「箱にしまっている」という点でも工夫があったというわけです。

 

ここまで6回にわたって「遠くから借りてきて新しいアイデアを生み出す」アナロジー思考について解説してきました。アナロジーは多かれ少なかれ誰でも実践している考え方です。ぜひ解説した内容を踏まえて「骨までしゃぶる」ことで面白いアイデアを生み出してもらえればと思います。

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