■今日の事例 :誤送付

A社はP社の新しいキャンペーン用のDM関連の業務を受託している。

A社のB社員は受託先から受け取ったリストに基づいてDM用の宛名ラベルを作成し、C社員がリストと作成した宛名ラベルについて再鑑(ダブルチェック)を実施した。 

C社員による再鑑が終わり、B社員は案内書と宛名ラベル一式を封筒に入れて送付した。

しかし、P社宛ての送付するところを、間違えてS社に送付してしまった。

 

・・・S社もA社の受託先であり、P社の同業他社であった

 

 

■考察 :何がいけなかったのか考えてみましょう!

「今日の事例」もどの会社でも起こりえる一般的な事例かと思います。

受託先から受け取ったリストに基づいて宛名ラベルを作成する。今回事例の直接のテーマではありませんが、受託先からのリストについても、作成する宛名ラベルについても、DMを受取る顧客の氏名や住所が記載されていますので、これらは個人情報です。受渡しや社内での作業においては情報が漏えいしないような対処がまずは重要です。

 

次に、今回事例の「リスクポイント(リスクが発生するポイント)」について考えてみましょう。

・「リストに基づいて宛名ラベルを作成する」ことが成果物である為、その成果物である宛名ラベルについては、C社員によるダブルチェックが行われていました。

 

・宛名ラベルの送付先に関するダブルチェックが行われていませんでした。成果物さえきっちりチェックしていれば問題ない、と考えていたようですが、業務の最終工程は『ラベルを受託先に送ること』である為、その最終工程までミスのないようにすることが重要です。

・『まさか送付先を間違えることはない』と思いがちですが、事務ミスが発生する可能性がある工程は、やはりミス低減策は考えておきましょう。

 

・業務体制の規模によりますので、業務を分けることは現実的ではないケースもありますが、受託先が同業だったり競合先だったりする場合はできるだけ担当を分けることが得策です。

・前述の②のようにミスを低減する対策をとったとしても、ミスをゼロにすることは難しい為、ミスが起こることを前提に担当を分けておくと、ミス自体の発生率も低減できると思います。似たような業務であればある程、今回のようなミスは発生してしまいます。

 

 

■対処 :誤送付防止に向けた対応

企業の事業や業務の形態によって事情が異なると思いますので、上記のリスクポイントを踏まえて、紛失や盗難が発生する可能性を少しでも少なくする方法を考えてみて下さい。

 

 

■結果 :誤送付によって発生すること

今回の事例で誤送付したことによって発生する結果は何でしょうか?

影響として大きいことは「宛名ラベルが個人情報であること」と「P社とS社は同業であった」ということです。結果の可能性として考えられることは以下の2点です。

 

・宛名ラベルの個人情報を関係の無い第三者(S社)に渡してしまったことになるため、法令の観点で言うと個人情報保護法違反に相当します。

 

・信用の失墜

P社の顧客情報が同業他社に漏れたことによりA社の信用は失墜してしまいます。

・契約の解除

契約の解除に至る可能性もあり、大きなビジネス損失につながってしまいます。

 

・同業他社のS社に顧客情報が渡ったことによるP社が被る損害の賠償を求められる可能性があります。

・今回のケースでは、S社が当該顧客の個人情報を悪用する可能性は少ないと思われますが、他社に情報が開示されたことに関して顧客からクレームが入る可能性があります。

 

 

今回の事例は、作業者の不注意によるちょっとしたミスですが、個人情報を取扱っている以上法令違反を問われる案件であることや、大きなビジネスリスクに繋がりかねない事例になっています。

業務工程においては最後の最後まで、ミスが発生しないようにリスクポイントが抑えられているか、改めてチェックしてみてください。

目次に戻る