■今日の事例 :書類の紛失

デザイン会社S社の社員であるAは、様々なデザイン関連の仕事をとってくる営業の担当をしている。

A社員は明日、重要なクライアントの一つであるM社が開発中の新商品のデザインについてのプレゼンが控えていた。朝一番でM社の会議室に直行する必要があり会社に寄る時間が無いため、課長にも了承を得てプレゼン用の資料を持ち帰ることにした。

帰り間際に仲の良い同期たちに「飲み行こう」と誘われた為、「1杯くらいなら明日のプレゼンにも影響しないだろう」と思い、飲みに行くことにした。 

同期だけだったこともあり、飲み会は盛り上がり、結果として結構飲んでしまった。

帰りの電車は空いていたので、上の網棚に鞄を置いて席に座り、そのまましばらく寝てしまった。目を覚ますと、網棚の鞄は無くなっていた・・・・

資料には『M社名や新商品の詳細』なども書かれていた・・・・

 

 

■考察 :何がいけなかったのか考えてみましょう!

「今日の事例」はどの会社でも起こりえる一般的な事例かと思います。

新商品向けのプレゼンに限らず、クライアントや提携先などを訪問する際に資料を持っていくことはよくあることです。最近では紙資料の替わりにiPadなどのモバイル型の端末を持って行くことも増えてきていますが、訪問先の方々に資料を見てもらう場合は、先方要望も踏まえると、まだまだ紙資料のケースが多いのではないでしょうか。

「翌朝直行」なので「資料を家に持って帰る」、「家に帰る前に軽く飲みに行く」・・・どれもどこにでもありそうなケースです。

 

ここで今回事例の「リスクポイント(リスクが発生するポイント)」について考えてみましょう。

・情報は社外に持ち出すだけ潜在的なリスクが発生します。社内でも紛失するリスクはありますが、社外であると紛失のリスクが増加することと、盗難などの新たなリスクも発生します。

・また、紛失した場合でも、「社内のどこかにある」というケースと「社外のどこか」とではリスクのレベルは大きく異なりますし、紛失にともなって被害を受ける側の印象も大きく違います。

 

・社外に持ち出したことによりリスクが高まる上に、立寄る先があると、そこで紛失する可能性が追加で発生します。必ずしも「夜に飲みに行く」というケースだけでなく、日中でも「プレゼン前に2カ所、別の営業先に立寄る」というようなケースはよくあることかと思いますが、立寄る先が増えるということは、持っている資料への意識が弱くなる場面が増えることと、それだけ社外にいる時間が長くなる、という点で紛失するリスクが高くなると認識しましょう。

 

・社外に重要な情報を持出した場合は、情報の入った鞄や封筒は手元から離すことは厳禁です。今回のように寝てしまうケースだけでなく、カフェなどで休憩する際に、鞄を置いたままトイレに行く、というようなことも避けなくてはなりません。資料を盗むことが目的でなくても、鞄ごと盗まれてしまえば、「重要な機密情報が盗まれた」ことと同じことになってしまいます。

 

 

■対処 :紛失事故防止に向けた対応

企業の事業や業務の形態によって事情が異なると思いますので、上記のリスクポイントを踏まえて、紛失や盗難が発生する可能性を少しでも少なくする方法を考えてみて下さい。

 

 

■結果 :情報の盗難によって発生すること

今回の事例で機密情報を含む重要情報が盗まれたことによって発生する結果は何でしょうか?

影響として一番大きいことは「M社の新商品に関する情報」が含まれていたことです。結果の可能性として考えられることは以下の2点です。

 

・信用の失墜

当然の結果ですが、M社の新商品に関する情報が外部に漏れたことによりS社の信用は失墜してしまいます。

・契約の解除

信用の失墜度合にもよると思いますが、契約の解除に至る可能性もあり、大きなビジネス損失につながってしまいます。

 

盗まれた新商品の情報が競合他社に渡ってしまった場合や、新商品情報をSNS等で流され、特許が取れなくなった場合など、M社にとって大きな損害に繋がるケースが想定されます。その場合は、その損害をS社に請求する、ということもあり得る話です。

 

 

今回の事例のように、今後も「どの企業でも発生しそうなこと」を事例として紹介し、「リスクポイント」について解説していきたいと思います。

情報に関する事故については、事例自体は小さな出来事であったとしても、ビジネス的な損失や経済的な損失に繋がる可能性を含んでいますので、特に『それぞれの事例が招く結果』については十分留意ください。

目次に戻る